TORJA100号記念事業・英語ウェブマガジン始動「JapaninCanada.com」|特集 トロントと日本を結びあわせて第100号

Japan In Canada』(以下、JIC)は、カナダ国内の日本に関連するホットな情報やニュースを英語でお届けする、カルチャーWEBマガジンだ。2018年のWEBサイト全面リニューアルを経て、カナダ国内の日系コミュニティの活性化に役立つとともに、様々な背景を持つ読者が日本とアジアの文化に興味を持つきっかけになるようなコンテンツを、両国の時差を感じさせないスピードで多種発信している。流行りの食、アート、音楽、映画、文学、スポーツ、トラベル、そして伝統的な日本文化までカナダと日本をつなぐ掛け橋となるメディアを目指している。カナダで活躍する日本にルーツを持つ人々の紹介やカナダでの日本の文化の取り入れ方を知り、新たな日本を発見できるような記事を提供している。ユニークなJICの取り組みをいくつかご紹介しよう。

カナダで注目される日本の文化—いけばなから日本文学、ポップカルチャーまで

 近年、国境を越える人、情報とモノのフローが増加し続け、ナショナルな文化の境界が揺らぐ中、一方で欧米で〝日本の〟ブランド、〝日本の〟デザインという表現は多用され、相反する傾向が見られる。カナダでも日本発と日本風 (雑貨屋メイソウなど)の商品が普及し、〝数少なきは心深し〟という引き算の美学や日本の侘び寂びの文化はコマーシャリズムから芸術までと幅広い領域において大きな影響を与えている。しかし、カナダを含む欧米での〝日本らしさ〟の表彰の根底には、時にオリエンタリズムの眼差しがあり、アジアという括りで他アジア圏の文化と融合した不可思議な〝日本〟が欧米に存在するのもまた事実である。

 JICはこのミスリードされ易い欧米視点の〝日本らしさ〟にコンシャスでありながら、より多くの英語読者へ日本文化への理解を深めてもらうことを目指し、その取り組みとして、日本の伝統文化の紹介や、英語で読む安部公房、谷崎潤一郎、村上春樹などの日本人作家作品の考察、そしてポップカルチャー(アリアナ・グランデの「七輪」タトゥー騒動からキム・カーダシアンの下着ブランド『Kimono』まで)と、幅広い領域で日本に関連するテーマを取り上げている。

カナダの国民性にも通じる、草月流いけばなの根底にある精神性

 日本の伝統文化の紹介の一例として、JICは1956年に日本文化の紹介を通じた相互理解を世界に広げる趣旨で設立された「いけばなインターナショナル」の会長、大河原美穂氏へ取材を行った。華道の三大谷流派の1つである草月流は、個性を尊重し「型」にとらわれることなく、「いつでも、どこでも」自由に表現できることが特徴的なアバンギャルドな流派である。いけばなインターナショナルは、「花を通じての友好」を大切にしながら国籍や人種を超えて活動しており、現在160を越える支部が世界50ケ国以上に創設され、会員数は7千5百人を超える。世界各地で様々なイベントを行っており、一昨年は創流90周年を迎えてトロントの日系文化会館で草月流いけばな展が開催された。

 いけばなの長いキャリアを持ち、欧米での海外生活を経験された大河原会長は、草月流いけばなをカナダの家庭でも取り入れるコツ、そして一本一本の花と語らう、瞑想に近いいけばなへの姿勢についてJICに伝授してくださった(是非WEBでご確認を)。また、欧米の日本伝統文化のトレンドの背景について、「資本主義的な発展を良しとしていた西洋社会が、今〝果たしてこれで良かったのだろうか〟と自省し、アジア的な価値観に人間本来のあり方を問うヒントを見出そうとしている」と語った。

 現在、地球環境問題が深刻化し、地球の未来への不安が募り早急な取り組みが必要とされるなか、いけばなの「自然は征服するものではなく、人と共存するもの」という精神性は、自然の素晴らしさや自然の畏怖を知るカナダの人々とも共有できるものであると信じていると大河原会長は語っている。ぜひ、日本語読者の方もいけばなを含む日本文化の魅力をJICにて再発見してみてほしい。

カナダで活躍する日本人の表現者たち

 JICは異なるジャンルで活躍する日本にルーツを持つ表現者達をフィーチャーし、彼らのカナダでの生き方や体験を掘り下げている。その中の一人である、JICが密着取材を行った日本人アーティストの森本啓太氏をご紹介しよう。

 1990年、大阪府堺市生まれの森本氏は16歳の時にカナダへ留学し、OCADで絵画を専攻。トロントとロサンゼルスでグループ展等で作家活動を行い、現在ニコラス・メティヴィエ・ギャラリーに所属する、熱狂的な支持者を持つ作家である。2014年にMuseum of Contemporary Canadian Artにて『Nightwatchers』開催、2016年のRBC Painting competitionではファイナリストとなった。次回の個展は来年2月に開催予定である。

森本啓太氏

森本啓太氏

 森本氏の絵画作品は、17世紀のオランダ絵画黄金期に活躍した最大の巨匠レンブラントやカラヴァッジオの作品に見られる強い光による明瞭な明暗対比や、輝くような色彩、精緻な質感描写と真に迫るリアリズムを彷彿する。その徹底的なリアリズムに宮崎駿作品などの日本のアニメへの言及や、若者らしいストリートファッションと反抗的なサブカルチャーが融合し、独自の唯一無二な森本ワールドを作り上げる。トロントの見慣れた風景を神秘的で何処かノスタルジックな作品へと昇華してきた森本氏は、次の個展に向けた作品ではこれまでとは異なるアプローチを取るとJICに語った。森本氏のスタジオに密着し、作品制作のプロセスや将来の展望に関して話を聞いた特集記事を是非ともJICでチェック。

Green Hour, 2018, oil on linen, 72 x 96 inchesCourtesy of Nicholas Metivier Gallery, Toronto

Green Hour, 2018, oil on linen, 72 x 96 inchesCourtesy of Nicholas Metivier Gallery, Toronto

魅力的なアジア系男性を描く重要性とは?毎週金曜日にアジア系イケメン男子を紹介するコラム「Hot Asian Guy Friday」

 過去二年間は、映画界の日本人俳優を含むアジア系俳優にとって大きな進展があった時期だと言えるだろう。ハリウッドや欧米の映画界では長年、日系を含むアジア系俳優に様々なステレオタイプが付きまとい、例として映画『ティファニーで朝食を』でのミッキー・ルーニー演じる日本人像や、日本人が演じる悪役中国人キャラ「チャーリー・チャン」、大ヒットテレビドラマシリーズ『HEROES』で日本人俳優マシ・オカが演じたヒロ・ナカムラなどが挙げられる。日本人のみに関わらず、アジア系男性全般は性的魅力の低い人物として差別的に描かれてきたことが多く、このメディア上の描写は欧米圏のアジア系男性の自尊心の欠如に繋がるだけではなく、現実世界の恋愛にも反映されているとも言えるだろう(2014年の「OkCupid(出会い系サイト)」の調査によると、アジア系男性は同サイト上のどの人種の男性よりも人気が低かったそうだ)。

 このような背景を踏まえると、過去25年のハリウッド映画で初めて主要キャストにアジア系の俳優のみを起用した2018年の大ヒット映画、『Crazy Rich Asians』が成し遂げたものは大きい。主役を演じるアジア系俳優、ヘンリー・ゴールディングがシャツを脱ぐシーンが頻繁に登場するが、この映画の共同脚本家の一人であるアデル・リムによれば意図的に入れられたシーンだそうで、「アジア系男性がこういった形で描かれるのは重要」と現地メディアに語っている。上半身裸のハンサムな男性が登場する映画自体は目新しくはないが、歴史的に白人俳優ばかりを恋愛映画の主役に据えてきたハリウッドにおいては革命的である。

 同作品やNetflixドラマ『Always Be My Maybe』など、アジア系男性の描写の改革を行う作品は増えてきているが、現状には改善の余地があるだろうというのがJIC編集部の意見である。そして、日本人を含むアジア系男性をめぐるステレオタイプに積極的に立ち向かうという(大真面目な)使命のもと、立ち上げたコラムが『Hot Asian Guy Friday』である。その名の通り、毎週金曜日にアジア系イケメン男性について魅力を語るというコラムで、EXILEの小林直己氏や、『LOST』のスティーヴン・ヤン、ダニエル・デイ・キム、モデルで活動家のトランス男性のチェラ・マンを含む、魅力的なアジア系男性を紹介している。日本語読者の方にも是非、JICでタイプのアジア系男性を発掘してほしい。

訪日観光・日本のグルメ体験やカナダ人フードブロガーが綴るグルメ情報、TORJAからの翻訳記事も満載

 そのほか、編集部やカナダ人ライターによる日本の旅行記や絶品グルメガイドなども掲載している。

 また、カナダ人フードブロガーの食べ歩きグルメガイドやTORJAで取材した記事なども積極的に翻訳して情報発信しているので、是非とも注目してもらいたい。