身体と心のメカニズム

ソチオリンピック・フィギュアスケート金メダリスト羽生結弦選手専属であり、数々のアスリート達の施術を担当するマッサージセラピスト・青嶋正さんに訊く

身体と心は一体。
肉体的リリースと精神的リリースの相関関係を知ろう。 本誌連載でもおなじみ青嶋さんは、スパダイナ駅近くとノースヨークに独自スタイルの施術を行うクリニックを持ち、一般患者の他に、ソチ五輪金メダリスト羽生選手の他、織田信成さんや村主章枝さん、小塚崇彦さん、太田由希奈さんなど世界で活躍してきた数々のフィギュアスケート選手などの施術を行う、20年以上の経験を誇るマッサージ・セラピストで多くの患者から絶大な支持を集めている。今回TORJA編集部では、 リラックス・リフレッシュやストレス発散というテーマのもと、マッサージ・セラピストの視点から青嶋さんに身体と心の相関関係を解説してもらうとともに、実用的なアドバイスを語ってもらった。

■ 問題点と解決策はIndividualである

まず今回のテーマを聞いた時に思ったのが、一般的にストレスがあるからこういうエクササイズをしなさいとか、ストレス解消のためにこういうことをしなさいということに対して、全ての人に適する答えは無いということが、答えになると思いました。それは、解決策は全てIndividual=つまり個々によって違うからです。まず個人に合った解決策を見つけるということ、その方法はできるだけ簡単で、すぐに効果がでるというコンセプトで、役に立つ情報を提供できればと考えています。

■ 抜け道を作ってあげるというコンセプト

私は患者さんとお話する時に、よくストレスというものをCapacity=容量として捉えましょうと話します。サンプルとしてコップや風船を思い浮かべてもらいます。ストレスは精神的なものや肉体的なものなど色々ありますが、それが蓄積されるなかで問題になるというのは、爆発寸前や爆発している状態です。それを防ぎたいと考えた時に解決する方法としては、

  1. 受け皿を大きくしてあげる
  2. 抜け道を作ってあげる(風船に例えると穴をあけてあげる)

という2つのアプローチが挙げられます。 ただし、1番は精神を鍛えるとか、体を鍛えるなど時間をかけて成し遂げていくものに対して、2番は割と簡単で、例えば好きなことに集中するとか、ストレッチをして筋肉を緩めるとか、効果的にエクササイズをするとか、マッサージに行ってリラックスするなどということが結果的に抜け道を作ることにつながっていきます。身体と心は一体という東洋医学的な考え方もありますが、肉体的リリースと精神的リリースは相関関係にあると考えると、自分に合ったもので、なおかつセルフケアができるという意識を持つことがポイントになってきます。

マッサージセラピスト青嶋さんがアドバイスする身体と心をつなぐセルフケア

■ 自分にあったセルフケアのプロセスを理解する

例えば多くのヨガやエクササイズがありますが、それらは万人向けにデザインされたものであり、ただ受身として受けると、自分自身の体に合っているか…それは時々は合っているかもしれないが、ほぼ合っていないほうが多いのです。しかしながら逆を言えば、自分に合ったやり方をすることによって効果がうまれるということが言えます。セルフケアのポイントというのは、素晴らしいヨガインストラクターを見つけるとか、新しいエクササイズを見つけるということではなく、自分でセルフケアができるそのプロセスを少しでも理解するということにあります。

■ 簡単に効果がすぐ分かるアプローチでセルフケアの大切さを体感しよう

ストレッチとは何かというと、メインアクションの反対アクションを言います。根本的に考えると、血行をよくしてあげるということです。ここで必要なことは、ストレッチをする際は、30秒くらいゆっくり時間をかけてあげることが大切になります。 もしあなたが、慢性的な痛みがある場合、それは筋肉繊維レベルで疲れがたまっているということになります。

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ここでギリギリのレベルで身体を使うスポーツ選手などのアスリートの皆さんが施術を受けた際に、目に見える効果が生まれているポイントを紹介しましょう。 筋肉繊維を骨とつなげているのは、腱です。腱の仕事とはつなげることだけが仕事で、構造的には伸縮性を持っていない組織です。したがって、本当はこの部分に負担をかけてはいけないのですが、筋肉が動いてくれない場合、腱にストレスがかからざるを得ません。これが問題であり、この部分に疲れがたまってくるのが慢性症状となります。

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では、どのように防波堤を作っていくかというと、まず大事なことは、“理解する”ということです。 腱に疲れがたまってしまったらどうしたら良いのか、筋肉と腱は同じ構造物だけど部位が違うので、ストレッチをすればよいかというと、ストレッチはほぼ筋肉繊維にしか効かないので、このアプローチはとてもスローな効果にしかなりません。なぜ治らないかというと、腱の緩め方を知らないからということです。 では、どうしてあげればよいか。答えは、“直接刺激”です。 腱には血行がないので、マッサージ的なアプローチはほとんど意味がありません。“直接刺激”とは、腱に1分間くらい負担の圧をかけてあげることで、神経反射としてリリースしてくれる反応を活用することで効果を生みます。 筋肉繊維と腱の組織的構造を少しでも理解して、両方へのアプローチをすることによって、簡単にすぐ分かる効果を体感してもらうことが可能です。セルフケアは単調な作業で決しておもしろいものではないので、このような目に見える効果というのは、 セルフケアを継続してもらう大きな推進力になっていくのです。

■ 理解することによって、自分がやるべきことが見えてくる

効果的なセルフケアのポイントは、構造について理解するということです。それは、筋肉繊維なのか腱なのか…幅広く理解してもらうためには、関節の動きを知ってもらうことをおすすめしたいです。各関節によって構造が違い、動かせる角度や、向きが決まっています。ひとつひとつの関節の動きと可動域を理解していくことによって、自分がやるべきことがクリアになっていくのです。 この考え方に従えば、ストレッチをなんとなくやっているのではなく、これとこれをやっているんだということを理解できます。ストレッチではなくヨガやピラテスなど、どのようなエクササイズでも結構ですが、その時の身体の状態によって、やり方が全く違ってくるということを理解することです。 ヨガでも難しいポーズを何分間するということを競うのではなく、このポジション、このポーズの意味合いはこういうことなんだ、とか自分にとってはこのエクササイズを使って、これが狙えるのだということになってくるのです。

■ 継続することが大切

時間がないという方も多いと思いますが、ポイントは短時間でやる、そして問題点を絞っていくことです。例えばサッカーをしている方であれば、第一優先は、足首からいきます。理由は、足首・膝・お尻と身体とのジョイント部分を考えた時、当然大きな箇所よりも小さな箇所の方がシンプルな構造になっています。このように場所を限定し、その部分の構造はどうなっているかを少しでも理解しておくことで、かなりやるべきことが絞られ、なおかつ最大限の効果を生み出すことができます。これが本人の意欲と継続性につながります。 今の時代は、ネットでも関節の可動域などは簡単に調べられます。一般の人でも鏡を使ってその変化・効果を確認し、やる前とやった後での変化の違いを自覚することが大切です。

■ 効果的なストレッチが心身のリフレッシュを生み出す

効果があるストレッチを行うことで、結果的に関節周りの慢性的な疲れを取り、長い目において問題が発生しないということになります。また、筋肉の動きは、身体の各機能に影響している部分が多々あります。 例えば呼吸器。空気を肺に吸い込むということは、胸郭を広げてあげなければいけない、それは筋肉が引き上げるということです。筋肉が凝り固まっていて、物理的に胸郭が大きく取れないということは、呼吸をしても実質的には酸素が入っていないということで、結果的に脳の働きが悪くなり、身体に影響がでます。 筋肉の動きが良くなったから、身体の動きが良くなるのではなくて、酸素をたくさん取り入れることができ、頭がしゃきっとすることによって、身体全体の働きが良くなるという効果につながるという観点で、身体と心がつながっているといえるのでしょう。

– 簡単豆知識 – これを知っていればアナタも予防できる!

こんな人は要注意!

肩が上まであがらない。
床で膝をたてて座るときに、かかとが浮いてしまう。
 靴下を履くのがつらい。
猫背である。
長く座っていると、ヨッコイショと言ってしまう。
運転中などのときに、後ろを振り向くことができない。首が回らない。

★ 猫背をなおそう

猫背は肩こりや腰痛、頭痛のほか、内蔵にも負担をかけ、消化不良や呼吸器疾患などの症状も引き起こします。猫背を矯正することにより、身体も心も健康になります。

★ 朝日を浴びながら20分間深呼吸

深呼吸をするだけでも通常の呼吸よりおよそ6倍もの酸素を得ると言われています。酸素を取り入れると、筋肉に血流が回り、固い筋肉も柔らかくなります。これをするだけでも心のケアにつながります。ほとんどの人は毎日がとても忙しいと思います。食事にも身体のケアにも時間をかけたいけど、なかなか難しい。そんな方にはまず基本である栄養補給と睡眠を心がけてもらいたいです。まず自分の身体の状態を知った上で、栄養は必要なサプリメントを選び、早起きして早寝をすることをおすすめします。長湯なども効果的でしょう。

★ 頭をほぐそう

頭のこりをほぐすと、心のこりもほぐれるといわれるくらい、頭のつぼは全身健康につながっています。

★ 自分の好きなことに100%集中する

自分のストレスの容量が好きなことによって全部使われているということは、他のストレスが入れないという究極の考え方です。

★ 前頸骨筋をマッサージ

前頸骨筋はスネ部分にある筋肉を指し、この部分のマッサージの効用は内蔵に影響します。内蔵は脳と密な連携をしているので、体だけでなく、心の健康にも関係していると言われます。

★ ビタミンBを摂取しよう

ビタミンBは摂取しにくく、身体に不足していても分かりにくく、数年かけて発見されることがあり、不足すると心が弱くなるといわれます。不安障害とされる、鬱や多動、神経質・疲労、心配などといった症状は、ビタミンB群のひとつであるナイアシンやナイアシンアミドの不足によって起こるので、食生活で気をつける他、忙しい人にはサプリメントなどの摂取も有効です。


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RMT: カナダ公認マッサージセラピスト
日本オリンピック委員会 日本スケート連盟の強化スタッフ

FLOW SHIATSU CLINIC 720 Spadina Ave. Suite 507 スパダイナ駅徒歩2分
Tel: 416-323-3700
Text: 647-828-0700
mail: tadshiatsu@gmail.com
※ノース方面の方は、ノースエリアにある診療所でも施術可能。また仕事終わりなど、夜間も対応可能なので、気軽に問合せを。テキスト・Eメールでの予約歓迎。