マッサージ・セラピストが教える身体と健康 #02
青嶋 正
RMT:カナダ公認マッサージセラピスト / 日本オリンピック委員会 日本スケート連盟の強化スタッフ
第2回 2013 世界選手権
今回は2013年3月にロンドン オンタリオで行われたフィギアスケート世界選手権に羽生結弦選手のトレーナーとして同行した際のエピソードをお話し致します。
普段はクリニックの患者さんがいるので試合同行はしないのですが、北米開催という事 とソチオリンピック出場枠がかかった大変重要な試合である事等から同行する事になりました。
浅田真央 、 高橋大輔 選手をはじめ世界王者パトリック チャン、カロリーナ コストナー選手らそうそうたるメンバーが世界中から集結し街全体が華やかな緊張に包まれていました。
その雰囲気とは裏腹に「チームゆづ」には厳しい現実を突きつけられていました。この試合で2選手の合計順位が 14 位以内でないとソチオリンピックでの日本人選手出場枠3つが確保できないのです。
私達チームが現地入りしてからは、
- 選手本人を含むチーム専属のドクターやトレーナーとの試合期間中のコンディショニングの方向性の確認。
- プライマリーコーチであるブライアン オーサー氏との意志確認
- テレビをはじめメディアの方々との対応等など想像を絶する超過密スケジュール
そんな中で開幕した世界選手権ショートプログラム。ユヅ選手4回転ジャンプ大転倒で、まさかの6位発進。頼みの エース 高橋大輔選手も8位と計14位であるため、いきなりのチームJAPAN後がない危機的状況。
さてさて、どうしたものでしょう?
試合の際、チームスタッフは基本的に1回目のジャンプの対角線上に席を確保します。選手が安心すると共に、私達も選手のコンディションや心の動きを見極め安いのです。
今回この試合から感じた事は、ジャンプに行くライン取りに集中力がなかった。
ラインがぶれている訳では無いのですが、ユヅ選手のいう所の<シュー>っと入って来ないのです。試合後の数時間の間にこの問題を解決しなくてはいけません。
要因としては、
- 自信が無い?
- 本番前の練習で失敗したイメージが残った?
- 氷のコンディション?
- セットポジションに入るタイミング?
- 気合いが入らない?
- 痛いとこがある?
- 体の筋肉の位置バランスがずれていた?
などなど、、、、
また、明日のフリープログラムまでに仕切り治し、体制を整えなくてはいけません。チームドクターやスケート連盟幹部が焦り気味の中、治療法を組立て全員に状況説明を終えいよいよ施術。最終的には羽生選手が3位に入り総合で4位、高橋選手が6位と健闘して日本人3枠確保する事が出来ました。
この時私がメインに位置づけた施術はというと、、
〈シューっ〉と滑るには筋肉だけでなく柔軟な関節が必要。その中でも、とても重要な足首の動きを確保するということでした。
具体的には、アキレス腱を柔らかく保つ事。これは、スケーターに限らず、これからのシーズンゴルファーやテニスプレーヤー、ウォーキング等あらゆるスポーツをなさってる方々にも重要なポイントにもなります。
具体的にどうするかというとアキレス腱をつまんで左右にグニュグニュ動かすだけでいいのですが、これを継続的に行うことにより、関節可動域が向上し怪我の予防に役立ちます。そこで、
必殺!! アキレス腱グニュグニュ法を簡単にご説明すると。
- アキレス腱を掴む
- 右に押せるとこまで押して30秒ホールド
- 左に押せるとこまで押して30秒ホールド
- 2と3の動作を3-5回繰り返す
と言った簡単なものです。活動範囲が広がるこの夏、羽生選手同様に皆様も是非お試しください。
次回は、ナショナルバレエカナダのプリンシパルダンサーのエピソードをお話しします。