カナダでゲーム屋三昧#014

ゲーム会社の営業

年に一度の祭典、GameDeveloperConference

年に一度の祭典、GameDeveloperConference

数百名の雑踏をかき分けるビズデブ達

数百名の雑踏をかき分けるビズデブ達

今月はゲーム会社の営業=Business Developmentについて。ゲーム会社も営業があるって知ってました?ビズデブと略称されるこの職業、仕事内容は多岐にわたります。そもそもゲーム開発はこの40年の歴史の中で、非常に広い範囲で職業が分化してきました。Designer(企画)がゲームのルールや内容などを決めるところから始まり、いわば家を建てる時の建築士のような役割をします。そこにArtistとして絵を被せる人たちがゲームに表示される素材を描き、木材やコンクリートなどを切り出すような仕事、最終的にEngineerがプログラムコードでそれを動かす、いわば現場の職人たちですね。彼らがいないと最終的には何も動きません。その3職種を管理してきちんと品質を管理するのがDirectorでDesigner出身者が多いです。そのまた上に、Producerとしてお金をとってきて、全体のスケジュールを管理する人間が、いわばゲームづくりの顔のような立場になります。ここが基本の開発職ですが、家庭用など歴史あるところではComposer(作曲家)やLocalizer(翻訳)、DesignerにもLevelDesign(レベルデザイン)、NarrativeDesign(ストーリーデザイン)、EngineerにもPlatformEngineerやITEngineerなど、挙げだすときりがありません。開発職の他にも色々あります。QA(Quality Assurance)として出来上がったものを実際にプレイして修正すべきバグを見つけます。ここがいわゆるテスターと呼ばれ、ゲーム会社に初めて新卒などが配置されるところ。CS(CustomerSupport)というゲームのリリース後にユーザー窓口となり電話・メールでの受付ポジションもあります。あとは普通の会社のようにAccountant(経理)だったりCEO・CFO・COOなど会社運営の人間だったり。。。その一つとしてビズデブが営業として存在しています。

この仕事、外で受託開発案件をとってきたり、パックマンとかIPキャラクターの版権をとってきたり、外向きの仕事をするのですが、実は…日本にはほとんど存在しない職業です。欧米の企業をみると10名以上のスタジオには1名くらいいるもので、いわば開発部隊が中でしこしこ作っているスキルそのものを外向けにQualifyして「もっとうちの開発スキル使ってください」というものなんですが、なぜか開発力重視の日本は、「作ったものが良いなら自動的に売れるんだ」とばかりにビズデブを育成してきませんでした。日本の建築業界・IT業界もまさに同じ構造ですが、ゼネコンのように大手ゲーム会社がパブリッシャーとして存在し、系列の開発会社と継続的に受託をするビジネスモデルができあがっていたため、特に外向きの動きをしなくても食ってこれた、というのが正直なところでしょうか。

私自身この1年、欧米でビズデブまがいのことを続けてきました。ひとまず、世界中で行われるゲームカンファレンスを抽出してみました。国際ゲームショーは世界中から多くの開発会社が集まり、一堂に会して関係性を構築するにはとても便利です。E3、GDC、ChinaJoy、東京ゲームショーなどが有名なものでしょうか。そしてその数…1年間になんと85回、月に7回はサンフランシスコだの韓国だの台湾だのそこら中でカンファレンスが行われます。1回ごとに数十から1000社近い会社が集まり、参加を表明すると、システムで1日10件以上のアポ依頼があります。この3月初旬、GDC(GameDeveloperConference)という2.5万人以上が集まる有名なカンファレンスに参加してきましたが、3日間でのアポイント47件、朝の9時から夜6時まで30分単位で会議が埋まります。相手先は北米、西欧、北欧、東欧、中国、インド、タイ、ベトナムなどなど。昼飯の時間もありません。夜は夜で4件ほどPartyのお誘いがブッキングしています。それらを1日中こなして、30枚以上膨れ上がってミチミチになった名刺入れを抱えて、夜中2時ごろボロボロになってホテルに帰るわけです。そして翌日9時からまた10件くらいの会議が続いているわけです。リクルート式のどぶ板営業で鍛えられた私も、弱音しか出ないわけです。

そして今回確信したこと。「日本人にビズデブは出来るのか?」。営業は非常にInstantな会話スキルを求められ、相手の空気を読んだり、機微をわきまえた発言が必要です。さらに北米では肩書きではなく、その場で面白い情報を持っているかどうか、相手の興味をキャッチできるかの「実質」が問われます。日本でも10名新人がいて、営業として光る子は1名いれば良い方。性格的な部分に大きく依存し、「営業力」とは鍛えようのない人間力なのだというのが自分の3年の営業経験の学びでした。そして同じことを北米で確信しました。英語力がどんなに向上し、30分の形式ばった会議の話は運べても、ビール片手にじゃんじゃん音楽が鳴って踊りながら話している欧米人の雰囲気を壊さずに、さらっとビジネスチャンスを握るなんてことは、正直、到底無理なのです。。。

なぜ外資は日本・中国で勝てないのか。この2ヵ国は世界でも極めて関係性重視の営業体質でビジネスがまわります。地域性も重要で東京の優秀な営業マンを仙台に送っても、うまくいきません。営業とは非常に地域・文化固有のものであり、言語以外のコンテクストで会話することが多く、外国人が絶対に入りえない参入障壁のある仕事だ、、、という、至極当然な結論に1年かけて至りました。


nakamura-atsuo中山 淳雄
Bandai Namco Studiosのバンクーバー法人にて、欧米向けモバイルゲームの開発スタジオ責任者。2004年東京大学西洋史学士、2006年東京大学社会学修士、2014年Mcgill大学MBA修了。(株)リクルートスタッフィング、(株)ディー・エヌ・エー、デロイトトーマツコンサルティング(株)を経て現在 に至る。著書に“The Third Wave of Japanese Games”(PHP, 2015)、『ヒットの法則が変わった いいモノを作っても、なぜ売れない? 』(PHP、2013)、『ソーシャルゲームだけがなぜ儲かるのか』(PHP、2012)、他寄稿論文・講演なども行っている。