プロバードウォッチャー「♪鳥くん」が教える、カナダのバードウォッチング事情とその楽しみ方

鳥たちとの出会いを求め、日本を越え世界中を旅する

プロバードウォッチャー「♪鳥くん」が教える、カナダのバードウォッチング事情とその楽しみ方

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♪鳥くん

プロ・バードウォッチャーとして日本を拠点にバードウォッチング(以下:BW)のツアーガイドや野鳥写真提供のほか、執筆、講演、イラスト、コンサルタントなど、野鳥にまつわるさまざまな活動をしている「♪鳥くん」。

2006、2008、2011年にはカナダに来訪。カナダの地でのBWを堪能したという。今回は♪鳥くんにカナダで見られる鳥の種類やBWのコツなどを教えてもらった。


トロント~オンタリオ湖周辺はカモメ天国
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(写真1)ヒメハジロ

僕がトロントへ行ったのは、もうずいぶん前の2006年。トロント空港でレンタカーを借りて、複雑な小道が多いトロントを抜けて、道に迷いながらもB&Bへと向かう。一通り部屋などを案内してもらうと、すぐに、長時間、しつこく周辺の地理や、野鳥がいそうな場所を教えてもらい、地図を眺めて翌日に備えた。翌朝、早速、トロントから、オンタリオ湖岸を西へ進む。通りすがりの周辺の住宅街には餌台があり、イエスズメが集まっている。

世界中どこへ出かけても、野鳥が多いのは、水辺であり、河口なので、河口域をまわっていく。シックスティーンマイル川河口にあるタナリーパークには、飛べる鳥では、世界一、体重の重い野鳥のナキハクチョウが英名「Trumpeter Swan」の通り、♪プワ~~!と大音量で鳴いて、そばに寄って来た。ブロントヘリテイジパークでは、ヒメハジロ(写真1)のペアとオウギアイサが、人気のない水辺でプカプカと泳いでいて、それらを狙い、ツンドラハヤブサの若鳥が、狩ろうとして攻撃をしかけたが、失敗に終わり、飛び去っていった。ヒメハジロはなんだかおいしいスイーツみたいな顔をしていて、日本人には、人気があり、憧れの野鳥のひとつだ。ナイアガラの滝周辺の農耕地を巡ると、小さな浄水場にボナパルトカモメを見つけた。これも見たかった種類だ。

(写真2)オビハシカモメ

(写真2)オビハシカモメ

冬のカナダで見る野鳥の多くが、日本では迷い込んできた数例の記録があるだけのド珍鳥なので、何度訪れても、毎回、興奮する。とくに、冬のトロント~ナイアガラにかけては、カモメ天国だ。カモメはカモメと思っている人も多いだろうが、たくさん種類があり、それを探すのが楽しかったりする。オビハシカモメ(写真2)やアメリカセグロカモメ、シロカモメ、ワシカモメ、オオカモメ、コカモメなど、多数、多種類のカモメ類を見ることができる。

クィーンエリザベス・ウェイでトロントへ戻る。日本では見ない、どでかいコンボイが吹雪の中を猛スピードで走っている。横から抜かれるときは、風圧と、車輪からふぶく雪で、前後が一瞬見えなくなる。命からがらで、B&Bに戻り、翌日は、オンタリオ湖沿岸を東へ向かう。フレンチマンズ湾の堤防の向こうに、アメリカホシハジロとコスズガモがはるか彼方に見えた。ペチコートクリーク、ハイパークなどあちこち、のぞきながらブライトンまで来ると、氷の上にカモメ類の群れが降りている。オビハシカモメ、アメリカセグロカモメに混ざって、目当てのアイスランドカモメがいた。ようやく見つけたが、それは、最終日の夕方。そこでトロントの街へ引き返し、翌日、ニューファンドランドへ向かった。

日本のバーダーにとっても有名なBWスポットであるバンクーバー
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(写真3)日本人バーダー憧れの野鳥・シロフクロウ

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飛ぶ鳥で世界一体重が重いナキハクチョウ

バンクーバーは、日本のバーダー(バードウォッチャー)には有名なバードウォッチングスポットで、訪れる人が多い。種類、数ともに多くの野鳥を見ることができ、自然保護区や、公園も、バードウォッチング向けによい意味で整備されている。中でも、ライフェル保護区、スタンレイパーク、ホワイトロックが、人気のスポット。

日本人バーダー憧れの野鳥が多数生息していて、非常に見やすい。4年に一度オリンピック開催のように、バウンダリー湾に出現するシロフクロウ(写真3)がダントツで一番人気。日本人バーダーがシロフクロウと聞いて、誰もが口にするのが治安がよく、アクセスがよく、空港から近い場所でシロフクロウを見ることができるバンクーバーだ。日本人のバードウォッチングガイドも在住している。

ライフェル保護区は、個人オーナーの経営する保護区にもかかわらず、もしくは、だからこそ、野鳥保護区のお手本のようなすばらしい場所だ。入口では、図鑑や、鳥関連グッズが購入できる店があり、そこでは野鳥の餌が売っている。それを購入して、園内に入ると、餌目当ての小鳥やカモたちが、足元に近寄ってくる。餌をあげながら、間近でバードウォッチングができる。園内の奥にはフクロウ類のねぐらがあったり、餌には寄って来ない野鳥たちも多数生息している。ここを一日かけて、ゆっくり2周ほどすると、30~40種類もの野鳥に出会うことができる。そして、出口には、残った餌を回収するポストがある。日曜日には、オーナーが、園内を案内するミニツアーもあり、バーダーではなくても、一般客が多いのも特徴だ。日本人なら、野鳥が足もとまでくれば、追いかけまわして飛ばすのを好みいささか下品だが、カナダ人の親子は、子供が野鳥を驚かそうとすると、「静かにね!おどろかしてはだめよ!」と優しく注意する。教育と国民性の違いが顕著にわかる。また、日本の野鳥保護区ではまず見ることがない、カップルがベンチでよりそいながら、のんびりと、野鳥と景色を楽しむ姿も見れら、日本も、一般の人が、もっと気軽に野鳥と親しめる、ライフェル保護区のような場所があればよいなと、来る度に思う。建造物が入口にしかないのもすばらしい。日本は、すぐに、もっとも自然が豊かで残すべき場所に大きなセンターを建てて、広い駐車場、道路を作ってしまい、本来の自然をだめにしてしまっているものばかりだ。野鳥が多く、見やすいだけでなく、保護区の在り方の違いに感心させられるのがライフェル保護区だ。

スタンレイパークは、周囲を海(内湾)に囲まれ、巨木の森林がそのまま残されている、すばらしい公園。カナダの一般的な野鳥と、水辺の野鳥を同時に多数見ることができる。かなり広いので、車でまわり、点在する駐車場を使い、少しずつ歩くのもよいが、個人的には、じっくりと徒歩でまわるのがおすすめ。ホワイトロックは、海に突き出た桟橋がある観光名所。アラナミキンクロやハシグロアビなど、日本では、かなりレアな野鳥をいとも簡単に見ることができる。

バードウォッチングを楽しむコツ
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野鳥が間近なラフェル保護区でのカナダヅル

バードウォッチングを楽しむコツはなんといっても、まずはBWに出かける。そして、「見ようとする、聞こうとする気持ち」で出かけることがとても大切。カナダは非常に野鳥が多いので、見ようとしなくても、野鳥を見ることができるが、見ようとしたら、よりたくさんの種類やさまざまな野鳥の生態を垣間見ることができる。

鳴き声を聞いて、どこにいるんだろう?なんていう鳥だろう?と探すのも楽しい。
驚かさないように、赤ちゃんや動物をあやす気持ちで、できるだけ、姿勢を低くして待っていれば、鳥たちは、警戒を解いて、ありのままの姿を見せてくれるはずだ。何を食べて、どうやって求愛し、水浴びしたり、羽繕いをしたり、飛んだり、歩いたり、さえずったりと、さまざまな野生の姿に、感動すること間違いなし!

初心者であれば、葉にさえぎられて野鳥がみづらい森林よりも、見晴らしがよい水辺、とくに淡水と海水の混ざる河口がおすすめだ。生き物にとって水は不可欠。魚や、虫などさまざまな生き物が生息する水辺は、バードウォッチングに最適な場所。

もちろん、家の近所の公園などでも、「見ようとする、聞こうとする気持」さえあれば、どこでもOK。できれば視野が手ごろで、明るく、手ぶれしづらい8~10倍の双眼鏡があれば、あったにこしたことはないが、はじめの一歩は肉眼でもいい。

大自然と素晴らしい景色のカナダ。もう一歩踏み込んで、バードウォッチングをしない手はありません。

カナダの国鳥=アビ!?
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(写真4)オンタリオ州の鳥・アビ

多数のサイトで「カナダの国鳥」はアビ(写真4)との記述があり、WEBでも多くの人が書いているが、「アビでなくてカナダガンかと思っていた」とまで書いてあったので、カナダの国鳥はてっきりアビだと思っていた。それではと、アビに決まった由来を調べてみたが、わからなかったので、カナダ大使館に問い合わせると、カナダは国鳥を定めていないとのこと。NATIONAL BIRDS OF CANADAでも、カナダは国鳥が決まっていないので、みなで投票して、決めてみよう!みたいなことをやっている。どこでそうなったか、WEB上には、カナダの国鳥は「アビ」という記述がいくつも見られる。

偶然か、この噂の現況か、オンタリオ州の鳥は「アビ」 制定された由来は、観光局の人もわからないとのこと。

アビは広く北半球に分布する野鳥。カナダでは、主に海辺で見ることができますが、沖合には多数生息しているので、アビを探してみたい、観察してみたいのであれば、海につきでた港や堤防の先端で探すのがよいでしょう。

警戒心がつよい個体が多いので、気軽に見ることはできませんが、慣れれば、そういった場所をいくつか回ればたいていは見ることができますが、見た目も、細長いカモのような姿をしていて、地味なので、高倍率の望遠鏡と識別のための知識が必要。

春先の換羽時期にはうまく飛ぶことができなくなり、港や河口域などに避難してくることがあるので、そういうときは近距離で観察するチャンス。しかし、コマメに港をチェックしなければならず、行けば簡単に見られるという感じではないので、アビを見るのはなかなか難しいのです。


birdwatcher-nagai-masato-02♪鳥くん [本名:永井真人](ながい まさと)
プロ・バードウォッチャー。バードウォッチングのツアーガイドや野鳥写真提供のほか、執筆、講演、イラスト、コンサルタントなど、野鳥にまつわるさまざまな活動をしている。ライフワークは、バードウォッチャー・ウォッチング、自然保護の歴史研究、タイの野鳥観察。日本鳥類保護連盟専門委員、あびこ鳥の大使、鳥取県八頭町八東ふるさとの森大使。著書に『♪鳥くんの比べて識別!野鳥図鑑670』(文一総合出版)、『バードウォッチングの楽しみ方』(枻出版社)、『東京近郊野鳥撮影地ガイド』(山と渓谷社)などがあり、最新の著書『♪鳥くんの比べて識別!野鳥図鑑670』ではホシムクドリやナキハクチョウ、オビハシカモメをはじめ多くのカナダで撮影された種類が掲載されている。また、元作詞・作曲家・歌手でもあり、合言葉はROCK & BIRD。カナダの音楽で好きなのは「SAGA」。

永井真人(♪鳥くん)オフィシャルWEBサイト:www.nagaimasato.com