Deloitte.&トロント日本商工会 共催 第6回 マネジメント向け セミナー〈PR〉

進化における人々の新しい働き方とカナダ進出企業より海外事業マネジメントを学ぶ

(左から)山岸康徳氏、中田宗吾氏、花澤靖弘氏、濱口淳一氏、寺田大輝氏


6月23日、トロント日本商工会とデロイトカナダの共催によるビジネス・マネジメントセミナーが開催された。第6回目の今年は、昨年5月に竣工したばかりのBay Adelaide Center、East Tower内、デロイトカナダ・トロントオフィスでの開催となった。

第一部は「業務の自動化によるコスト削減」というテーマが掲げられ、近年ますます進化を遂げてきているテクノロジーを用いたコスト削減方法について、デロイトカナダのテクノロジーコンサルティング部門よりシニアマネジャーを務めるケヴィン・クレメント氏、マネジャーのシャール・ジラーニ氏、アナリストのデヴォン・リッゾ氏の三人を講師に迎えて本セミナーが行われた。またモデレーターとして同社の寺田大輝氏により日本語での補足説明がそれぞれの重要ポイントごとに行われ、参加者にもより具体的にセミナー内容の理解を促される形となった。

当該セミナーでは、まず社内で行われる業務は「情報の取得」、「処理」、「外部コミュニケーション」、「保存」という四つの領域に当てはまるものが存在するとし、このうち「処理」の領域でRobotics Process Automation(RPA)と呼ばれる定型業務を遂行するソフトウェアの利用がカナダ、そして世界中で拡大していることが近年の傾向であると解説がなされた。このRPAの利点は多方面に及び、そのシステムの正確性や迅速性は勿論の事、人員削減によるコスト削減を実現したり、より付加価値のある業務に人員を配置することが可能となり、結果として会社全体のパフォーマンス向上に繋がる。

セミナー開催の挨拶を述べるトロント日本商工会専務理事伊東義員氏


また具体的に現在のRPAマーケットに関する傾向、そして導入に関するキーポイントなども説明され、今後RPAの導入を検討している企業、または今日のセミナーをきっかけに検討を始める企業にとっても非常に有意義な情報が多くもたらされることとなった。

最後にはRPA導入は単なる技術の問題ではなく、人員、プロセスそして組織体制に関する問題なのだと講師陣は語気を強め、テクノロジーの導入に対する課題を明示した。今後の私達の働き方、企業の在り方を大きく変えることとなる技術革新に対し、会場の参加者達は非常に関心を示し、講師陣の一つ一つの言葉に熱心に耳を傾けていた。

第二部ではカナダに進出してからの年数が異なる日系企業より三名のゲストスピーカーを迎え、「日本人マネジメントに聞く!カナダ進出ステージに応じた課題と解決のヒント」というテーマのもと、パネルディスカッションが行われた。

今回のパネルディスカッションに迎えられたのは、Honda Canada Inc.にてSenior Vice President、Assistant to Presidentを務める中田宗吾氏、Sleeman Breweries Ltd.にてPresident、C.E.O.を務める花澤靖弘氏、そしてTrans-Mit Steel Inc.にてPresidentを務める濱口淳一氏だ。モデレーターはデロイトより山岸康徳氏と寺田大輝氏の二人が務めた。

駐在員の役割と現地での権限移譲

企業進出より年数が経つにつれ変わっていくこともあると思われますが、まずは現地での駐在員の役割や権限移譲の形、また苦労された点などについてお聞かせください。

濱口氏:当社は設立から4年弱ですが最初は全てが0からのスタートでした。自身のアジア駐在での経験を踏まえ、また親会社の三井物産のサポートも得て立ち上げ準備を進めました。実際に工場が動き出すまで1年半を要しました。初代社長としての私の役割は人材採用、社内規則の整備、また組織を含めた経営基盤の確立という事でした。

中でも重要なのは採用で苦労しましたが結果的には良い人材が確保できて順調に稼働しています。稼働開始してからは現場はカナダで工場経験の豊富な現地採用の工場長に操業関連の大半について権限を持たせ責任持って運営してもらうようにしています。私の仕事は今は人事関連、資金繰り、親会社との連携がメインです。

第一部セミナー講師デヴォン・リッゾ氏


花澤氏:スリーマン社はサッポログループが買収をした時には、すでに創業から18年ほどが経っていました。そんな中での日本人駐在員の役割としては、いかにより良い会社に作り変えていくかということと、買収後の成長をどのように担保していくかということでした。サッポロが買収した十年前には主に生産が安定しない、品質が安定しないという二点が課題でしたので、まずは日本から技術者を呼び、何が問題なのかを調査するところからスタートしました。

また、もともと地域ごとの三つの企業が合併した会社であったことから、当時もそれぞれ独立性の意識を強く持っていたので、会社の一体感を出すために〝ワンスリーマン〟という標語を作り、それまで工場・地域ごとに異なっていたシステムやスリーマン社としてのマーケティングを統一していくことで、全社の一体感醸成・生産工程の安定を目指してきました。

中田氏:我々の業務は、ほぼ現地スタッフで回っており、駐在員が日常業務レベルに手を出すことはほとんどありません。強いて言うならば全社戦略を現法に落とし込む仕組みも出来上がっていますが、駐在員はその戦略にある背景などを、より深く現地の方々へ理解していただくための役割を担い、またカナダの声が日本まで届きにくいことがあるので、伝えるべき人にきちんと伝わるコミュニケーションをサポートしています。

私は現法の経営会議メンバーの一人として、会社の経営管理を行うとともに、現在六名いる駐在員のまとめ役も務めています。駐在員ということで、カナダ人従業員からレベルの高い、難しい質問を受けることが多いので、質問にきちんと答えられるよう各駐在員がいかに見識を高めるか、という点が駐在員の課題であると感じます。

カナダ人従業員とのコミュニケーション

現地のカナダ従業員とのコミュニケーションにおいて、気をつけられている点はありますか?また日本の親会社と現地会社の考えが異なった際にはどのような対応をされますか?

花澤氏:日本で部下と話をする際は、こちらから説得に入ることが多かったのですが、カナダに来てからは、まずは相手の話を聞くというところから入るようにし「なぜそれをやりたいのか?」、「その結果、どういった効果が見込めるのか?」という点をちゃんと聞くようにしています。

また日本だと部下に対して直接ネガティブなフィードバックをしてしまいがちかと思いますが、こちらでは必ず“Great.”など最初にポジティブなフィードバックから入るように心がけています。親会社との意見が食い違ってしまった時には、当社の中では海外事業経験のある人間が少ないため理解されにくい面もあるのですが、日本と海外はやはり背景や状況が全く異なるのは事実ですので、その部分を尊重してもらえるように本社に話すようにしています。

第一部セミナー講師シャール・ジラーニ氏


中田氏:唯一カナダだから意識している点としましては、国、民族、宗教についてネガティブな発言をしないことです。カナダは世界各地からの移民で成り立っている国家で、我々のオフィスにもロシア、香港、インドなど様々な国と地域から人々が集まっていますので、自分の中にある国や人種、宗教などのイメージを一度リセットし、あるがままの状態でコミュニケーションすることを心がけています。

あとは花澤さんと同じく、本社と意見が食い違ったときには、我々の考え方の背景を説明したり、意見の距離を詰められるよう事前調整するなどの工夫をしています。あとは、「人間尊重」「三つの喜び」からなる基本理念などホンダフィロソフィーを海外拠点においても掲げることで、同じ理念に基づき、納得して働ける、という点が従業員との円滑なコミュニケーションに役立っているのではないかと思います。

第一部セミナー講師ケヴィン・クレメント氏


濱口氏:以前アジア圏の経験しか無かった私にとって初の欧米での仕事を通じて両者の違いを強く感じたことがあります。カナダではオフィスで日本人社員同士で固まって話をすると後から「あの時、日本語で何を話していたの?」とカナダ人スタッフから聞かれたりします。アジアではそのような事はほとんどありませんでした。

今考えるとアジアでもそうすべきだったと思いますが、特にカナダではかなり意識的に情報共有を進めないと彼らにフラストレーションが生じ職場環境が悪くなります。当たり前の事ですが現地社員を尊重するという姿勢は必須です。また親会社等から当社社員に対して的を射ていない指摘があった時は、現場を掌握している当事者の私の方が彼らのことも理解しているはずなので、守るようにしています。

海外子会社のマネジメントと企業カルチャー

海外子会社としてのマネジメントの方法や企業カルチャーを受け継いでいく中で大切にされていることを教えてください。

中田氏:弊社のマネジメントとしては、今年4月、社長交代があり、現地人社長から現地人社長へのバトンタッチを行いました。先代社長が後継育成を自らの責任と捉え、約四年かけて、自ら学んだ事を後継者に語り継いできた事が、結果として政権交代を上手く進ませ、本部からの信任にも繋がったのだと思います。同時に現地の従業員やディーラーの方々もカナダ人に引き継がれたことを非常に喜んでいました。

また従業員の定着率をあげることを意識し、新記録達成時の会社でのお祝いなどを通して従業員間の結びつきを強める工夫をしています。企業カルチャーに関してはホンダが世界共通語として使っている「A00」があります。もともとは新製品の開発目的という意味ですが、社内では広く「そのテーマに取り組む真の目的は何か?」という意味で議論の過程で何度もでてきます。また、私は、ホンダフィロソフィの小冊子を赴任する先々に持ち込み、丁寧に文化を受け継いでいくことで、現地での企業カルチャーを育てるよう心がけています。

第二部パネルディスカッションの様子


濱口氏:お客様の現地化に応じて当然現地化を進める方向ですが親会社が日本の会社ですし会社の経営責任を負う部分はもうしばらく日本人でも良いのではと思っています。現在は私と営業部長の二人だけが日本人ですが、今のところその程度のバランスでちょうど良い気がします。

企業カルチャー醸成は創業期の現在、非常に意識して進めています。親会社のカルチャーを学びながらも商社の社風では合わない部分も出てきます。製造業としての価値を高めて行くために、現地メンバーと意見を出し合い議論しながら、将来に残せるような良い社風をつくっていければと願っています。

花澤氏:スリーマン社買収後十年間、売上や販売量が増え続けてきたのには、スリーマン社とサッポログループの良い部分の融合を通して自分たちの企業カルチャーを作り上げてきたことが良い結果に結びついたという感覚が従業員たちにもあります。このため社内にサッポロを尊重しようという雰囲気が生じ、今のところ上手く企業カルチャーを築いてこれたのではと思っています。

そして、優秀な人材も育ってきて彼らのモチベーションを失わないためにも、ゆくゆくはカナダ人の経営者に任せたいと思っているのですが、親会社が日本なのでカナダ人経営者のもと企業統治をどのようにしていくかという点は最大のポイントだと感じています。

第一部では「業務の自動化によるコスト削減」という誰もが今すぐに実践したいと思えるような先進的な働き方についての知識を深められ、第二部のディスカッションではそれぞれ異なる状況下で活躍されてきた方々の貴重なお話を通して、日系企業の在り方のヒントが与えられる機会となった。今後もこのようなセミナーを通して、在加日系企業の成長が互いにますます促進されていくよう、心より期待する。