中国の行方

中国という文字をメディアで見ない日はほとんどない。爆買いにAIIB、南沙諸島の人工島から中国国内での事故や事件、PM2.5もある。最近では「サーキットブレーカー」もキーワードだ。その影響は世界のあらゆる分野により強く及ぼすようになった。今回はその中国に焦点を当て、現状を考えてみたい。

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今や、政治経済に於いて中国を抜きにして語ることは難しい。世界の工場として大躍進を果たした中国はリーマンショック直後、巨額の政府資金を投入し、経済の下支えを行った。その結果、中国経済は一定速度を保ち、2010年の上海万博で世界の中国をアピールした。

その快進撃はそこに留まらなかった。高い経済成長をバックに2013年に国家主席の座に就いた習近平氏は腐敗撲滅を訴えながら自身の政敵を抑えこみ、反勢力には厳しい処罰で対応し、そのポジション固めを進めてきた。

国内の支配と共に外交面ではAIIB(アジアインフラ投資銀行)を立ち上げ、ロシアのみならず、欧州との結びつきを強化し、アライアンスづくりを行なった。その中には韓国との関係も含まれ、朝鮮半島に対しては韓国と北朝鮮を天秤に乗せ、巧みな駆け引き外交を展開してきた。対米政策では訪米の際、オバマ大統領に一歩も引かぬ姿勢で臨み、両国間に一種の緊張関係を作り上げた。その結果が南沙諸島をめぐる米中の動きである。

こう書けばいかにも強い中国というイメージがあるが、日本では実は多くの面においてこの逆が指摘されている。リーマンショック直後の巨額の内需振興策はハコモノへ投資を押し進め、地方の不動産バブルを生み、理財商品などに群がる中国人とその破たん、挙句の果てに昨年夏や今年の初めに株価が崩落したチャイナショックに繋がるとしている。

権力を集中させたため、最強権者として君臨するが、多くの敵で囲まれてしまった今、長期安定政権はおろか、いつ何が起きてもおかしくないと書き立てる書籍もある。

アメリカとの南沙諸島をめぐる話し合いの決裂はあのホトケのオバマ大統領にして「切れた」とされ、同エリアへのアメリカ海軍の派遣、そして安全航行の監視という理由のもと、中国艦隊と対峙する関係を作り出した。その力関係はアメリカが中国を圧倒しているとされる。

つまり中国とはその見方で裏腹となり、中国の真の実力と今後について予想するのはたやすくない。例えば一党独裁制である共産党は崩壊するとか、共産主義なのに世界で最も格差の大きな国家の一つとなったその矛盾は説明できないなど様々だが、世界を揺るがすような何かがすぐさま起こるのか、といえば微妙な気もする。

例えば、一党独裁を批判するならアメリカのような二大政党制がよいのかという切り口もある。経済の世界では独占より複占、それより寡占で本当は完全自由競争が一番良いというようなものだ。ならば政治の世界でも国民がもう少し選択肢を持った方がよいのだろうがアメリカでも中国でもそうはならない。格差問題をも含め、アメリカも中国もその点は実はそっくりなのである。

では中国で共産党体制が崩れる引き金は何だろう?成長が長期低迷した時、人口の半分を占める農民層が力を増した時、新中流層が没落する時、そして共産党員の一枚岩が崩れた時だろうか?先進国に於いて政権交代が起きる時とは往々にしてそれまで謳歌した生活が乱されその先行きに不安感が生じた時である。日本でもアメリカでもそうなっている。

書物などで中国の崩壊と大々的に煽るものも多いが万が一、そうなっても一時的な問題はあるにせよ、長期的にはプラスの影響だろうと考えている。ソ連崩壊の時は計画経済から資本主義を導入したことで資源国家ロシアが誕生、大いに潤いが増しただけではなく、多くの国民にチャンスが巡ってきた。

現在の中国に於いて個人的に最大の弱点だと感じるのが都市層と農民層の断絶であろう。これにより人口13億の国家ながら実質的には6〜7億人の国家程度の能力しか発揮していない。13億の民が内需に目覚めればこれほど早く経済成長が公表値の6%台に落ちることはない。ちなみにエコノミスト達はこの成長率は実際には5%からマイナス成長水準だと指摘するほどの惨状だ。中国はもはや成長の浮力を失いつつある。

中国の長い歴史をみても統一国家を長期に渡り維持するのは難しい上に現代の情報化社会で思想的支配はより困難になり、民主化は当然の成り行きとなっている。これが中国のもう一つの課題であろう。中華思想に基づく「天動説」でその中心に留まるのは漢民族だが、民族問題を排除しにくい宿命を背負っているとも言える。

昨年、習近平氏が台湾の馬英九総統との会談を1949年の分断後初めて開いたのは経済的に重要なパートナーで政治的にも重要なメッセージとなる統一問題に一歩踏み込むことで習体制の地ならしを目論んだともいえそうだ。

個人的にはボトムラインとして中国が崩壊しようが行き詰ろうが既に数億人の中流層が生み出されたという事実に注目している。日本の総人口の2〜3倍の富裕層が世界に向けてその投資マネーの照準を合わせている。つまり、中国国家と中国人は別々にして考えたほうがよさそうだ、ということではないだろうか?彼らの「たくましさ」は世界でも一目置かれるだろう。国家体制がどうであれ、少なくとも中国人の影響からは我々は逃れることはできそうにもない。


岡本裕明(おかもとひろあき)

okamoto021961年東京生まれ。青山学院大学卒業後、青木建設に入社。開発本部、秘書室などを経て1992年同社のバンクーバー大規模住宅開発事業に従事。その後、現地法人社長を経て同社のバンクーバーの不動産事業を買収、開発事業を完成させた。現在同地にてマリーナ事業、商業不動産事業、駐車場運営事業などの他、日本法人を通じて東京で住宅事業を展開するなど多角的な経営を行っている。「外から見る日本、見られる日本人」の人気ブロガーとしても広く知れ渡っている。