世界の向かう方向

私の年頭の10大予想で2016年はゲームチェンジャーの年になる、と申し上げた。ゲームチェンジャーもいろいろあるが、それまでの常識が非常識になったり、続くと思っていたものがなくなったりすることを想定していた。どうもその傾向は正しそうだ。では超長期の世界の方向はどうなのか、これを考えてみたい。

okamoto1610

世は新しいものにいつも両手を広げて「ウェルカム!」とばかりはいかない。受け入れられないことには目と心を閉じ、NOを突きつける。これがナショナリズムという発想につながりやすくなる。

世界は様々な問題を抱えてきた。今年に入ってもシリアやISの問題は解決していないし、そこから派生した難民問題もある。更に欧州ではテロや難民が国民意識をナローマインドにし、英国に於いてはEU離脱を国民投票で決めてしまった。

アメリカに目を向けよう。大統領選挙は終盤戦でクリントン氏有利という調査もあるが個人的には予断を許さないかなり接戦になる気がしている。それも11月の選挙までに世界で何も起きないという前提があればの話で何かが勃発すれば全く違う結果を引き起こすともいえる。

例えば北朝鮮が何か過激な行動に打って出ればどうなるだろうか?中国が南シナ海で強硬な行為を取ったらどうなるだろうか?フィリピンのドゥテルテ大統領は何をしでかすか読めたものではない。東アジアだけでもこれだけの材料があるのに地球儀ベースとなるとトラブルのネタはいくらでも転がっており、朝起きたらびっくりする事態に遭遇しやすいといえる。

では経済はどうだろうか?

世界経済は不確実で2016年度成長率はIMFの目標とする2%には及びそうにもない。ブラジルの景気後退は深刻であり、インドや中国の経済成長率も目標に達していない。ところが金融緩和のせいでマネーが一部に偏り、持てる者が如何にそのマネーを運用し、安全地帯に保管するか知恵を絞っている。

パナマ文書で分かったことはより多くの人が如何に税金を払わないよう画策しているかであった。アップル社がEUから145億ドルという巨額の法人税支払いを命じられたのも同社が税金を払わないようアイルランドと結託していたと解釈されたからである。

トロントやバンクーバーの不動産は今年前半も快調に値上がりを続けてきた。理由は世界をうろつくマネーはカナダなら安全で政治的なリスクが少なく、為替が相対的に安くお得と判断したからである。決してマネーを持つ人が選んだのではなく、マネーがそこを選好したのだ。購入者の意思はマネーの安全が一義で、居住用の不動産としての位置づけは付随的である。だからこそ、バンクーバーで8月から導入された外国人購入者への15%の特別課税により当地の不動産市場は7〜8割減という壊滅的取引件数を引き起こしてしまったのである。

アメリカでは利上げについて様々なうわさが飛び交っている。この原稿が皆様の目に触れる時には金利が上がっているかもしれないし、何も起きていないかもしれない。が、私がほぼ断言できることは長期スパンで考えれば上がっても1%程度が精いっぱいで理論的には下がるバイアスの方が強いということだ。理由は二つ。アメリカの経済は十分成熟したので景気のブームが再び到来し、踊り狂うことはまず予見できないこと、もう一つは金融政策として下げた金利は技術的に上げるのが非常に困難であることに気が付いていない点である。

これは基軸通貨の宿命なのだが、これを書くと今日のトピから外れるのでまたの機会とするが個人的には米ドル覇権時代が我々の目の黒いうちに終焉し、新しい通貨が世界を支配する気がしている。

理由はドル基軸の弊害とフィンテックの加速度的発達である。ビットコインの普及など政府保証の通貨体制が崩壊しつつある中、通貨の基本的発想が抜本的に覆される時代はさほど遠くないはずだ。私が個人的に金(ゴールド)の投資を長年しているのも通貨への信頼感が揺らぎ、為替変動リスクを世界経済最大の脅威だと論じる時も遠い未来ではないと考えているからである。

考えてみればドル基軸も第二次世界大戦までのイギリスポンドからのバトンタッチ、そのバトンが渡った理由の一つはアメリカの金の保有量が多かったからだった。これを考えれば基軸通貨が変わることはさして驚くことではない。事実、これをお読みの人はそんな事実、ほとんどご存じなかったであろうから小さな話だとも言える。

世界の向かう方向でもう一つ、着目しなくてはいけないのは宗教であろう。イスラム教徒は世界で最も早いスピードで増えており、いずれキリスト教信者を抜く。その際、イスラムの発想が世界を席巻しやすくなるバイアスを考えておくべきだろう。

特に経済的行為に関してはキリスト教、特にプロテスタント系とイスラムは二律背反に近い思想である。アメリカ大統領選で善戦したサンダース候補を社会主義的思想と報じたがイスラム的助け合いの精神にも通じるものがある。

世の中がより高度化し人間が持てる能力を必要としなくなると人間は退化をする。その際、イスラム的思想が世の中にぐっと魅力的に映るかもしれないことは誰も着目していないだろう。

世界を俯瞰するには幅広い見地と先読みのネタをどれだけ持ち、どう解釈するかで変わってくる。勿論、今日ここにお届けした内容は今すぐの話ではない。が、バイアスという観点で物事を見ていくともっと興味深いことも見えてくるのではないだろうか?


岡本裕明(おかもとひろあき)

okamoto021961年東京生まれ。青山学院大学卒業後、青木建設に入社。開発本部、秘書室などを経て1992年同社のバンクーバー大規模住宅開発事業に従事。その後、現地法人社長を経て同社のバンクーバーの不動産事業を買収、開発事業を完成させた。現在同地にてマリーナ事業、商業不動産事業、駐車場運営事業などの他、日本法人を通じて東京で住宅事業を展開するなど多角的な経営を行っている。「外から見る日本、見られる日本人」の人気ブロガーとしても広く知れ渡っている。

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