朝鮮半島は世界の火薬庫となるのか?

金正恩氏は義理の兄を殺害し、ロケット弾を飛ばし続けている。韓国では朴大統領が罷免され、国家はその運営能力を失っている。中国はTHAADミサイルの設置に暗黙の対抗をし、日本は釜山の慰安婦像設置で韓国との外交に亀裂が入っている。尋常ではないこの半島情勢を考えてみよう。

okamoto1704
世界の火薬庫といえば一般にはギリシャなどを含む欧州のバルカン半島のことを指す。トルコやロシアによる勢力争いや民族自決の名の下での激しい争いが続き、第一次世界大戦の発端にもなった。

世の中、一般に半島は戦争になりやすい地形とされる。日露戦争での大攻防は中国の遼東半島であった。ナポレオンの時代にはズバリ「半島戦争」というイベリア半島で起きた戦争もある。最近ではロシアがウクライナ情勢に乗じてクリミア半島を実効支配している。

このように半島は歴史的に戦略的地形とされ、戦禍に見舞われることがしばしばあり、また長い歴史の中で不安定な情勢が続く場合も多い。
そんな半島情勢の中でも朝鮮半島ほど歴史の中で不安定な立ち位置を続けているところも少ないであろう。まず、第一に北朝鮮と韓国は単に休戦状態にあるだけである。終戦ではない。軍事境界線では双方のにらみ合いが続き、ソウルまでは直線距離で僅か40キロ程度しか離れていない。

かつてケンカした隣人でもお互いに仲直りしていれば安心感もあるが、韓国の隣人の新しい主は明らかに凶暴、且つ行動が読み取れない血気盛んな若大将である。おまけに自分の敵になると思えば親族でも長年仕えた腹心の部下でも消される運命にある。

若大将を支える高齢の取り巻き達は若殿のどんな傍若無人ぶりでも「お殿様、さすがでございます」と祭り上げなければ粛清される。よって本気で思っていなくても拍手の音は人より一段と大きくなくてはいけないのが長生きするための流儀でもあろう。

打ち上げ花火のように上がる弾道ミサイルは確かに精度は上がってきているかもしれないが、その指揮系統が十分であるかは別問題であろう。

オバマ元大統領は外交下手と言われたが、特に六カ国協議を通じて北朝鮮問題で何もできなかったことに最大の汚点があったと断言してよい。ではトランプ大統領が先制をするかといえばそれも難しいだろう。ただ、圧倒的準備の下にきっかけがあれば一気に叩き潰す用意はあるはずだ。

だが、問題はそう簡単ではない。朝鮮半島における戦争とは敵が誰で味方が誰か、ここが不明瞭なのである。半島の歴史では半島内部で延々と争いを続け、中国と日本が外的影響を施すという構図がしばしば起きているが、歴史の教科書を紐ほどかねば理解はたやすくない。

韓国では現在、強烈なる左派の巻き返しが起きており、国民は与党に不満をぶつけている。何故か、といえば度重なる財閥企業の不祥事、朴大統領への不信、高い若者の失業率、THAAD配備決定に伴う中国からの強烈な嫌がらせで国民の考えが麻痺しているのだろう。そんな中、アメリカの強い姿勢がまかり通るか、といえば不信感を募らせる可能性は否定できない。

更にアメリカと韓国には朝鮮戦争以降、作戦統制権という厄介な問題が内包する。これは平時の作戦統制権は韓国が持っているのだが、戦時に於いてはアメリカが司令官になり、韓国は従の立場になる。

つまり、北朝鮮と戦争になれば誰が手を下すかといえば韓国の名代であるアメリカが代理戦争の指揮をすることになる。トランプ大統領にとってこれはできれば避けたい選択肢であろう。なぜなら、一歩間違えば中国を刺激し、世界一と世界第二位の経済大国同士が争う事態となり、その背後に世界第三位の日本が控えるという構図になってしまう。

これが何を意味するかといえば地球規模の大混乱であり、サプライラインのストップであり、資源価格の急騰とインフレ、不況が間違いなくやってくるシナリオになるからである。もちろん、アメリカ本土は痛まない。だからこそ、トランプ大統領はアメリカファーストのポリシーを貫き通すことになろう。なぜなら戦争特需が生まれるからだ。

但し、多くの工業製品の部品は東アジアで生産されていることは肝に銘じなくてはいけない。局地戦争であれば影響は最小限に抑えられるが、第三国を巻き込むようなことになれば目も当てられない事態となる。

考えてみれば日中韓はこの数十年間に経済的な激しい覇権争いを行ってきた。その中で常に立場が弱いとされたのが韓国である。技術的先進国の日本と人口サイズで圧倒する中国の間に挟まれた5千万人の国が生きていくには厳しい競争に勝ち抜かねばならないからだ。

その韓国はサムスンの破竹の勢いに酔ったもののサムスンに入れる若者は一握りもおらず、その激しい社内競争に多くは撃沈される。国民が夢も希望も失うのは必然の結果としても過言ではあるまい。

朝鮮半島の歴史は古くは高句麗、百済、新羅の時代にさかのぼる。そしてその三つの国がどのように争い、中国や日本とどのように接していたか、調べると朝鮮半島の色が半島の付け根と先端で違うことに気が付くであろう。今、まさにその葛藤が再び始まろうとしている。半島の双方の国民は全く別の意思で立ち上がろうとし、それが想定を超えるリスクを持ち合わせていることも事実であろう。

今年のキーは朝鮮半島情勢だと言っても過言ではあるまい。


岡本裕明(おかもとひろあき)

okamoto021961年東京生まれ。青山学院大学卒業後、青木建設に入社。開発本部、秘書室などを経て1992年同社のバンクーバー大規模住宅開発事業に従事。その後、現地法人社長を経て同社のバンクーバーの不動産事業を買収、開発事業を完成させた。現在同地にてマリーナ事業、商業不動産事業、駐車場運営事業などの他、日本法人を通じて東京で住宅事業を展開するなど多角的な経営を行っている。「外から見る日本、見られる日本人」の人気ブロガーとしても広く知れ渡っている。