日系コネクション


カナダで日系の人たちの様々なNPO活動をみていると頼もしくなる。だが、これらの活動を通じてカナダの日系社会をどう持続させるべきか、大所高所から改めて考えることは案外少ないかもしれない。今回はそんな我々に身近な日系社会を取り上げてみたい。

外務省で「海外在留邦人調査統計」というものを取りまとめている。いわゆる在留届や公館から企業への調査を通じての統計をまとめ、毎年発表しているものだ。手元の28年度版(15年10月現在)のトロントとバンクーバーの数字を拾ってみると大枠の様子がうかがえる。

カナダは在留邦人数としては世界で6番目の水準で4位の英国、5位のタイと肉薄しており、日本人に大変ポピュラーな国と言える。特に永住者数で見ると世界4位であり、5位の英国には2倍以上の差をつけていることから米、オーストラリア、ブラジルに並び日本人が住みたい国だと言えよう。

都市で見るとトロントの在留邦人は1万8千人強、バンクーバーは3万3千人強と2倍近い人数を抱えており両都市とも毎年数%ずつの伸びを示している。ただ、バンクーバーは1877年に永野万蔵氏が移民して以来、多くの日本人がやってきた地でもあり、在留邦人とは別に日系人が多いことでも知られる。2011年の調査でカナダ全体の日系人は10万人強となっている。

さて、在留邦人だけに絞ってみると年齢別では50代以上がトロントは16%、バンクーバーは18%、30〜40代がトロントは39%、バンクーバーが37%、20代以下はトロント、バンクーバー共45%となっており、極めて似たデモグラフィックスになっている。

唯一の違いはバンクーバーにおける女性の多さであろう。全年齢の男女比はトロントが38対62に対し、バンクーバーが36対64と女性がもともと多いのだが、バンクーバーでは30代と40代の女性の数が突出している。その男女比は30代で26対74、40代が24対76で4人に3人が女性なのである。トロントもその傾向はあるが(69%が女性)この年代の女性が突出しているのは海外旅行ブーム、国際結婚ブーム、民主党政権時代の就職難が原因と考えられる(あの当時はワーホリが異様に多く、人数枠いっぱいだったこともある)。

日系のボランティア活動を長く見ているとこの女性陣の活躍ぶり無くして成り立たないのではないだろうか?特に男女比が悪いせいか、独身女性も多く、多くのNPOへの献身的な方々に感心している。一方、子育て層は一時的に対外的活動からやや遠ざかる傾向もあるが、子育てが終わると再びNPO活動に精を出す方は多い。

先日も80歳近い女性の方の家に呼ばれたのだが、集まった十数名はほとんどが30代の日本人男性で皆、その方に何らかの世話になっている人が多かったのには驚きである。その方曰く、「毎日のように人を呼んでお世話していると忙しくて自分の時間が取れない」ほどのようである。つまり日本との圧倒的な相違はソーシャルな方が多いということだろう。

この前向きな姿勢がカナダの日系コミュニティを支えていると言ってよいのだろう。私もビジネス系NPOの理事を長年やっているが、この団体を通じて新たに来た起業家や移民が当地でスムーズにビジネス活動ができるように様々なサポートを行ってきた。この草の根的活動は今後も続くはずだが、個人的にはある危機感を感じている。

それは日系社会の新陳代謝が進まないのである。日本からカナダへの新規移民が減っていることもあるのだろうが、NPOへの参加に消極的なことが最大の原因だろうと考えている。理由は情報化とSNS化である。

かつて海外に移民してきた人は日系コミュニティに所属し、生活のノウハウを習い、悩みを相談し、情報を仲間内から取ろうと努力した。今や、その必要はない。多くの必要な情報はネットやSNSの知り合いから直接、そして瞬時に知ることができる。便利になったものだ。だが、その分、コミュニティの結びつきは希薄になっている。これは間違いない。

私はバンクーバーで日系大学校友会連絡会の幹事もしているが、こんな会を細々とながらも続けているのは一校友会ではもはやゴルフ1組すらできないため、各校友会が横の関係を密にしないと活動できないからだ。

また私の出身大学とは最近、大学本部と連携し、当地に交換留学に来る学生を校友会で支援する体制にした。これにより校友会の活動に現役学生が加わり、年齢層に幅ができると同時に「学校の今」を如実に知ることができるのだ。この試みは大成功で最近は校友会活動への出席者がぐんと増えた。

中国や韓国などのコミュニティは人口も多いことからかなり幅広く展開され、ポリティカルパワーすら持ちつつある。一方、日本のコミュニティは高齢化が進み、活動の不活発化が顕著になり、維持するのが精一杯という状況にあるのはあまりにも不甲斐ない気がする。

若い方からみればそんなコミュニティ活動は「いかしていない」のかもしれないが、外向きに胸を張って活動している誇りも大事だろう。私はバンクーバーで団体の連携を推し進めている。イベントでは他団体と積極的に提携し、多くの人に参加機会を提供している。団体同士が合併することは難しい。それぞれのDNAがあるからだ。しかし、提携や協力関係はできるだろう。バンクーバーで二十数団体が協力して毎年、新年会を盛大にやる試みは世界の日系団体に発信したいほど意味あることだ。

日系コネクションがより強固にそして広がるよう汗をかこうではないか。


岡本裕明(おかもとひろあき)

okamoto021961年東京生まれ。青山学院大学卒業後、青木建設に入社。開発本部、秘書室などを経て1992年同社のバンクーバー大規模住宅開発事業に従事。その後、現地法人社長を経て同社のバンクーバーの不動産事業を買収、開発事業を完成させた。現在同地にてマリーナ事業、商業不動産事業、駐車場運営事業などの他、日本法人を通じて東京で住宅事業を展開するなど多角的な経営を行っている。「外から見る日本、見られる日本人」の人気ブロガーとしても広く知れ渡っている。