日本とカナダの会社の問題解決能力


ビジネスを日本とカナダの両方で携わっていると気づきは多いものだ。最近、その中で強く感じるのが混迷に陥った場合の対処の違いである。発想の相違という点を含めてこのあたりをフォーカスしてみよう。

ホームキャピタルグループの問題

最近のカナダのビジネスネタでこの会社の話題を外すわけにはいくまい。住宅ブームに沸くカナダでこの住宅ローン会社の不正融資問題が表面化したのは今年4月。それまで30ドル近い株価だった同社の株式は一日にして6割以上下げるなどしてついに一時6ドルを割ってしまった。

銀行で住宅ローンが確保できない新移民や小事業者にとって同社の住宅ローンは高騰するカナダの住宅を取得するのに不可欠なサービスであり、この分野でトップグループを走っていた。それ故に会社規模としてはさほど大きくないもののカナダビジネス界で上を下への大騒ぎとなる。

不正融資そのものは2015年の話であり、すでにCEOは辞任し問題の全容がある程度見えていた。が、オンタリオの当局が調査に乗り出すことが市場に伝わったことで同社の子会社が運営する高利回り定期預金が一気に95%も引き出され、資金枯渇が懸念されたことが問題に拍車をかけた。

ここからが同社の対応の素早さであった。緊急融資をファンドから受けるなど当座の資金調達を行い、資金流動性を日々発表するディスクロージャーを行う。更にオンタリオ当局とは取引で解決を目指す中、会社の身売りをも辞さない姿勢を取った。これは同社が仮に最悪の事態を迎えれば同社の顧客のみならずカナダ金融市場に打撃を与えることが目に見えており、カナダ版リーマンショックを引き起こさないとも限らないからであった。

この対応は株価に現れる。一時期はローラーコースターのような株価も沈静化し、前向きの解決方策が次々打ち出されると株価は回復基調を取り戻し、これを書いている時点で12ドルを超えるなど最悪期から2倍の株価まで戻している。これは経営側に問題解決の意識が強く出ている良い例であろう。

バリアント製薬の問題

もう一つ、不正問題で株価が奈落の底に落ちたのがバリアント製薬。ボシュロムなど数々のブランドを持つカナダ製薬界の魔術師は企業買収で巨大企業となり、株価は短期間で10倍に上昇、15年8月には350ドルを付ける。が、その後、不正会計問題が明るみに出ると株価は溶解し、一時12ドルを割り込む。つまり30分の1である。同社に投資していた多くのファンドは天文学的数字の損失を計上する。同社はコケにされ、あらゆるバッシングの対象となった。

だが、同社の株価も底打ちし、回復を辿り始めた。それは経営メンバーの入れ替えによる過去の否定とリストラのためのあらゆる手段がまるで漢方薬の如くじわじわと効果を見せているからであろう。この会社のリストラにはまだ相当時間がかかる。しかし、復活は可能だ。

日本企業の問題

最近、日本企業からはろくな話が聞こえてこない。東芝、電通、富士フイルム…。どれも日本を代表する企業である。私が思う日本企業の功罪とは伝統と歴史を社員が引き継ぐ一方、その社風が強すぎるあまり、時代の流れに乗り切れない意固地さではないかと感じる。

それは体育会系の学生が序列絶対主義で1年から順に奴隷、平民、天皇、神様と上がっていくその仕組みそのものであり、その制度を変わらせないところに罪がある。多くの企業では若い社員に仕事をやらせる。社員への嫌がらせも同様で嫌な奴に面倒な仕事を押し付けるのはいつの時代でも変わらない。これは熟練度が低い若い社員に無理をさせるのだから日本企業の労働生産性が上がらないわけだ。

日本は明治以降、「国民、皆平等」としたのだが実態は一定の優越感意識を持とうとする国民性が覚醒したようだ。経験者が高位につく仕組みが改善されず、結果として会社の天皇なり、神様の地位となった瞬間、横暴経営が行われる温床を作った。

これは年長者を敬う儒教思想の悪影響と言ってしまえばそれまでだが、問題は若い世代が年長者の考え方を踏襲できず、やらされ感を持つに至って強ストレス社会を生み出したことだろう。

こうなると問題を起こした企業がそれを根絶させ、新たなる道を歩めるには極めて困難な道筋となる。例えばかつて倒産の危機にあった日産がカルロス・ゴーン氏によって復活したのはなぜか、といえば企業文化が根本的に変わったからであろう。同様に日航も稲盛和夫氏という外部のブラッドを入れたことで体質改善が行われた。

ところが東芝や富士フイルムといった名経営者を輩出した企業ほど伝統が邪魔をし、体質が変われないというジレンマが起きている。

日本企業は時としてプロの経営者を外部から招聘する。マクドナルド、リクシル、サントリー、資生堂など数多い。その場合、どれだけプロでも一人では経営改善はできない。組織という壁があるからである。これを打ち破る為、参謀らをセットで連れて完全なる体質改善を図ることが今後の日本の企業経営に必要なクスリであろう。

カナダの2つの企業のトラブルの事例は、まだその回復過渡期にある。が、新経営陣によるオープンで着実なる改革を一歩一歩実行していくのに対して、問題が隠蔽され、同じ過ちを何度も繰り返す日本企業と大いなる違いを感じないわけにはいかない。


岡本裕明(おかもとひろあき)

okamoto021961年東京生まれ。青山学院大学卒業後、青木建設に入社。開発本部、秘書室などを経て1992年同社のバンクーバー大規模住宅開発事業に従事。その後、現地法人社長を経て同社のバンクーバーの不動産事業を買収、開発事業を完成させた。現在同地にてマリーナ事業、商業不動産事業、駐車場運営事業などの他、日本法人を通じて東京で住宅事業を展開するなど多角的な経営を行っている。「外から見る日本、見られる日本人」の人気ブロガーとしても広く知れ渡っている。