訪日外国人にみるクールなジャパン

業務の関係で東京には年6〜7回行くが、行く場所によっては外国人の氾濫ぶりに自分がカナダにいるのでは、と錯覚するほどである。そんな訪日外国人の目線が我々海外でビジネスをする者にとって大きなヒントを与えてくれそうだ。


先日、カナダ生活にピリオドを打った日本人友人と新宿に飲み行くことになった。その友人が私を無理やり連れて行ったのは「新宿ションベン横丁」。線路わきの古びた木造の建物には飲食店が軒を連ね、日本的な小路に入ればもはや迷路に迷ったようなものだ。その中でも特に有名とされる焼鳥屋に向かったのだが、並ぶこと1時間。カウンターしかないこの店の客の半分は外国人。座席は無理やり席を詰め込んでいるので横に椅子が並ばず、ジグザグになり、客は満員電車ほど肩身の狭い思いをしながら焼き鳥を食べている。

一方、横丁の細い小路を通る人々も外国人だらけ。これではまるで海外の万博で日本パビリオン、「横丁」があるようなものだ。何故、こんな古臭いカウンターしかないような店が集まる場所に外国人は興味を示すのだろうか?

その後、私は店を変えようと提案、彼と連れ立ったのはゴールデン街のスナック。ここはさすが日本人がほとんどだったが、店の人に聞けば外国人客も多いと。もちろん、ゴールデン街をさまよう群衆に外国人が目立つのは言うまでもない。

私は東京に行く際には必ず明治神宮へ参拝に行くのだが、ここも完全なる外国人の観光地と化している。私から見れば何が珍しいのか、と思うのだが、考えてみれば私が欧州旅行に行ったときは教徒でもないのに教会にずかずか入り込んでいたのと同じなのかもしれない。

外国人の旅行客は金をかけない旅をするのに長けている。考えてみれば家族数名で旅行すれば食事代など馬鹿にならない。ならば浅草雷門は外国人にとって屋台で食べ歩きをしながら日本的雰囲気を楽しめるもっともスリリングなアドベンチャーの一つなのかもしれない。

もちろん、香港や台湾の夜店もあるが、私は何度行ってもあれを食べる勇気はない。駐在員がそれを食べてトラブった話をよく聞いていたからかもしれないが同じソウルフードでも衛生面や品質が日本のそれは圧倒しているといってよいだろう。

トリップアドバイザーが発表する訪日外国人の東京人気スポットは新宿御苑、サムライミュージアム、浅草がトップ3。日本人に人気のランキングトップ10と外国人ランキングトップ10で共にランク入りしたのは新宿御苑と明治神宮だけでいかに日本人と訪日外国人の目線の違いがあるか一目瞭然である。

では海外でビジネスをする我々が今後注目すべき時代の流れは何だろうか?

まず、飲食関係では日本も海外もラーメンはもう飽和だと思っている。日本では2万軒あり、年に3500軒ずつ入れ替わるとされている。個人的には日本のラーメンのクオリティは十分に高く、個人的好みに合っていればさほど失敗はない完成されたレベルにある。

一方、海外のラーメンも数は増えたが寿司ほどポピュラーにはならない。何故なら手でつかめないこととテイクアウトが難しいからだろう。寿司がポピュラーになったのはピザ、バーガーと共にフィンガーフード的発想があったからだ。

ならば、私が考えるはやりそうな飲食は焼き鳥とおにぎり屋かもしれない。共に手で食べられるし、食べる場所を選ばない。日本では今、おにぎり屋が静かなブームになりつつあるがおにぎりほど海外向けにリアレンジしやすい食材もないだろう。

また、飲み物としてホッピーがあったら面白いと思う。ホッピーは昔、流行ったものが今、日本の大衆居酒屋で復活、定番となっている。ナカ(焼酎)とソト(ホッピー)を注文し、自分で濃さを調整する点と糖質がビールの半分、カロリーがビールの4分の1というヘルシーさが海外受けする可能性を秘めているかもしれない。

消費財では個人的にはユニクロでも無印でもない。ずばり、ニトリが本命だとみている。無印はおしゃれなのだが、製品数、商品数に限りがあり、店舗に行っても商品構成の奥行きが足りないのが難点である。ユニクロはファッションセンスが欧米のそれと違うのでアジアではOKだが、欧米では成長しないだろう。

ではなぜ、ニトリなのか?それはカナダに住む人ならだれでも経験しているIKEA現象に太刀打ちできる最有力候補だからである。IKEAが何故流行るのか、と言えば安価なうえにショッピングの楽しみを提供しているからであろう。その点、ニトリは店舗展開を急速に進め、ビジネスモデルが大きく変わってきている。渋谷や新宿の大型店なら数時間いても飽きないほど商品が増えている。

実は日本にはもう一つ、IKEAと勝負できる店がある。それは東急ハンズである。個々の商品構成はオタク系、こだわり系が強いが、この専門的で妥協を許さない姿勢こそが日本的で世界に紹介したいビジネスである。かゆいところに手が届く商品が案外見つかるのが東急ハンズなのだ。

バンクーバーにあるダイソーはいつ行っても客でごった返している。何故か、といえば安いのにユニークで欲しくなる商品が満載だからである。

北米の消費者はショッピングモールに一定評価を下した。「どのモールも同じ店だらけ」。そんな中、日本から初登場のあの店が出てくれば「さすが、ニッポン」と再評価されるかもしれない。日本はそろそろ商品と共に文化を輸出することを考える時代になったのだろう。


岡本裕明(おかもとひろあき)

okamoto021961年東京生まれ。青山学院大学卒業後、青木建設に入社。開発本部、秘書室などを経て1992年同社のバンクーバー大規模住宅開発事業に従事。その後、現地法人社長を経て同社のバンクーバーの不動産事業を買収、開発事業を完成させた。現在同地にてマリーナ事業、商業不動産事業、駐車場運営事業などの他、日本法人を通じて東京で住宅事業を展開するなど多角的な経営を行っている。「外から見る日本、見られる日本人」の人気ブロガーとしても広く知れ渡っている。