海外でビジネスを成功させる術

海外ででかいビジネスをやりたい、一山当てたい、と夢を見たくてカナダに来たとすればその成果はいかがだろうか?大成功なら結構なことだが、開花せず、帰国しようかと思っている人もいらっしゃるだろう。私の25年のカナダでの経験話を少しご紹介しよう。少しでもお役に立てれば何よりだが。


バンクーバーで私も所属する企友会というNPOで今年から私塾を始めた。先日、塾生に顧客の何%がローカルか、と聞いたところ、ほぼ100%と答えたのは私だけで他の人はゼロからせいぜい20%というところであった。

正直、驚くべき内向き具合である。確かにトロントもバンクーバーも一定数の日本人マーケットがあり、日本からの旅行者やビジター、学生も多い。だが、ローカルマーケットに比べたら1%にも満たない市場規模のはずだ。ニッチマーケットという言葉があるが、そんなシャローな舞台で勝負を挑むところに根本的なバリアがある。まずはターゲットマーケットを広げてみるべきだろう。

次いで外国でビジネスをする最大の基本は「トークする力」だと断言してよいだろう。下手でもいい、とにかく、相手が必要と思う情報を提供し、相手を説得することだ。そのキーはNOという言葉は絶対に言わないことだ。「できない」という言葉は最も忌み嫌われるビジネス用語だ。「お望みにぴったり合わないですが、こちらならどうでしょうか?」と返すのが正しい。

例えば弊社のレンタカー部門では夏の時期は電話での問い合わせがひっきりなしとなるが、満車で貸せる車がないときは「〇日なら空いていますが、いかがでしょう?」と返している。夏のピーク時は街からレンタカーは払底するので利用者はスケジュールを変えてでもそれを受け入れるケースも多い。

更にアップセールでもっとお金を使ってもらう。アップセールは日本ではあまり聞かないがこちらではごく普通にある。「これも買うならこちらは少し負けておくよ」というのは常套手段だ。モールに行けば「2つ目を買ったら5割引」なんていうアップセールを見かけるだろう。

弊社のマリーナ部門の場合、クルーザーが短期間、入船した場合、街での移動手段がないことは明白なので「レンタカーはいかが?」と必ずアップセールをしている。

我々がレストランに行くと時としてどれを選んでよいかわからないことがある。特にグループで中華料理に行った時のことを想像してみよう。そのメニュー選びで時間を費やして店の人から白い目で見られたことはないだろうか?

これは店側が不親切で商売が上手ではないのかもしれない。外国人が他の国の食べ物を熟知しているわけがないのだから店が手伝ってあげるべきだ。但し、メニューに〇名様コースとしてはいけない。必ずサーバーがトークする。「〇〇は当店のおすすめですよ」「今日の〇〇は特に新鮮です」といった具合だ。グループの場合、それを聞いてNOということはまずない。逆に言うとこれは売り手が顧客を支配しているのだ。こうなればビジネスは勝ったも同然だろう。

カナダはいろいろな出身国の人がいる。それだけモノの常識観や価値観が違うとも言える。私がバンクーバーでコンドミニアムを開発、販売していた頃、私は販売総責任者を兼ねていた。次々とくる売買契約は三分の一が条件付き契約、つまり買い手が何か望んでいるのだ。当時は多少、売買交渉に乗る余地があったのだが、その際、販売マネージャーに必ず聞くことがある。

この客はどんな方で購入目的は何?と。どんな方というと差別的と思われるかもしれないが、顧客の価値観を理解しないとまとまる話もまとまらないのも事実だ。例えば英国人はペントハウスにプレミアムを払ってでも購入する傾向があるし、イスラム系の方は購入する物件に対して異様な固執と細かい要求が出る。アジア系は様々だが台湾系は値引き要求が極めて強いがそれにある程度応じると友人を次々と連れてきて「この人たちにも同じ条件で売って頂戴!」となる。

これをうまく使い分けてこそ、商売はうまくいくようになっている。ちなみに私は日本人の客は苦手だった。値引き要求と質問の嵐、挙句に仕上がり品質が「日本仕様ではない」とクレームされる。「日本人の会社だから期待した」と言われれば私も努力が足りなかったのだろうが、それをカナダで要求するのも無理があろう。

私が駐在員の頃、カナダのあるホテル会社の役員をしていた。その際、某日系大手旅行社の年間宿泊契約を継続しないと決まったことがある。年間で4桁数の部屋契約である。なぜ、マネージメントは契約を切ったか、といえば日本の旅行社は手間がかかり、何かにつけて値引き、即対応、返事が遅い、とクレームばかり。その契約部屋数をもっと単価の良いアメリカ向け市場に振り向けられたのだ。

逆に言えば海外における日本のビジネスの姿勢は細かすぎる。まるでクオーツ時計のような正確性を求める傾向がある。一方、私がそれなりにバンクーバーでビジネスができているのは緩いルールと厳しいルールを使い分けているからだろう。緩急織り交ぜ、ここまではいいよ、という懐の大きさを知ることでローカル向けビジネスを成功に導くはずだ。機械式時計のマニュアル感とでもいおう。

ビジネスは奥深い。海外でそれをこなすのは至難の業だが、皆様の努力と発想の転換を通して海外での事業の成功をお祈りする。ミッション ポッシブルだ!


岡本裕明(おかもとひろあき)

okamoto021961年東京生まれ。青山学院大学卒業後、青木建設に入社。開発本部、秘書室などを経て1992年同社のバンクーバー大規模住宅開発事業に従事。その後、現地法人社長を経て同社のバンクーバーの不動産事業を買収、開発事業を完成させた。現在同地にてマリーナ事業、商業不動産事業、駐車場運営事業などの他、日本法人を通じて東京で住宅事業を展開するなど多角的な経営を行っている。「外から見る日本、見られる日本人」の人気ブロガーとしても広く知れ渡っている。

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