カナダ・日本・世界を見つめる8人組 #42

カナダの難民支援:草の根レベルの取り組み

by 空野優子

カナダの建国記念日にあたる7月1日のカナダデー、トップニュースの一つに、カナダにやってきて初めてこの日を迎えるシリア難民の家族が取り上げられていた。内戦から逃れ、再び平和な暮らしをもたらしてくれたカナダにどんなに感謝しているか、というお祭りモードのカナダデーに花を添える内容であった。

毎年約2万6000人の難民を世界各国から受け入れているカナダでは、難民はそれほど珍しい存在ではない。特にトロントでは、自国を追われてカナダにやってきた人、または両親がそうであった、と話す人に私自身、何人も出会った。またカナダ人にとっても、人道支援に積極的なカナダを誇りに思う人も多いようで、難民にやさしい国、というのがカナダ人のアイデンティティの一部になっているようにも思う。

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昨年からのシリア難民問題に対しても、カナダ政府は積極的に取り組み、政府の発表によると、7月1日現在までに受け入れたシリア人は2万8640人に上るという。

カナダでの難民受け入れ制度にはいくつかの種類があるが、中でもユニークなのが民間人によるスポンサーシップ制度(Private Sponsorship of Refugees)である。

この制度は、国外の難民キャンプなどで政府が主導で受け入れを決める場合(Government Assisted Refugees)とは別に、カナダの一般市民が受け入れをスポンサーすることを約束することで、政府の許可を経て難民をカナダに迎えることができるというものである。

例えば、5人以上の大人がチームを組み、難民としてやってくる個人・家族への生活面でのサポートと経済的な支援を約束する、などの条件を満たすことでスポンサーとなったり、または支援を行っている団体を通じてスポンサーシップに参加したりすることができる。

先日、このスポンサーシップを支援する民間団体、Lifeline Syriaの代表者の一人の話を聞く機会があったが、彼によると、この民間スポンサーシップ制度は、1970年代のインドシナ難民危機の際に、民間レベルでの支援の声の高まりに押されて生まれ、昨年からのシリア難民受け入れに関しては、今まで到着した難民の約半数がこの民間スポンサーシップを通じたものだという。

もちろん、カナダ国内でも、これ以上の難民・移民の受け入れに否定的な声はあるし、テロなどへの懸念からシリア難民の受け入れには反対な人もいる。それでも、基本的にはカナダが難民支援に関わるのは当然との考えが一般的なように思う。

実際、シリア難民が国際問題となった昨秋、国政選挙真っ只中だったカナダの主要政党は、世論に押され、競ってシリア難民支援を公約に加えた。これは、同時期にオバマ大統領が支援を打ち出したにもかかわらず、議会が受け入れに反対したアメリカ、そして難民支援に対して常に消極的な日本と比べても、対照的であった。

このように、カナダの難民受け入れの取り組みは、一般市民の支持によって支えられている。また民間スポンサーシップ制度にみられるように、多くの人が支援に直接関わることで、毎年多くの難民を受け入れるだけでなく、やってきた彼らの大半が、地域に溶け込みカナダで再出発することを可能にしているように思う。

今月の著書 空野 優子(Yuko Sorano)
2002 年に大学留学のため日本を離れて以来、アメリカ、フランスでの学生生活を経て、2006 年よりトロント在住。現在トロント市北部に位置するヨーク大学で職員として勤める傍ら、コミュニティーワーク、英語教育にも携わる。

The Group of 8
2011年夏、カナダ在住の翻訳家や通訳、活動家、物書き、研究家、学生などの有志が集まり、それぞれの分野で築き上げてきた仕事や研究、日常について語り合ったのがG8の会の発足のきっかけとなり、月に2回ほどカナダ・日本・世界についてのコラムを発信している。
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