子育て中の母親への大麻のメリットとは? & Jay-Z氏、合法大麻産業に参入へ|カナダから見るマリファナ合法化のあと

カナダ国内の大麻事情
大麻を吸うと「より良い親になれる」とトロントの母親団体が主張。子育て中の母親への大麻のメリットとは?

 嗜好用大麻が去年10月に合法化されたカナダは、世界的に見れば大麻に寛容な国だ。しかし、大麻使用者に対するスティグマは未だに存在する。大麻に関する誤った情報は使用する人々へスティグマと差別を煽るが、その烙印を押されやすいのは特に保守的な役割を求められることが多い母親達だ。

 大麻を吸うと「より良い親になれる」とCTVニュースに語ったのは、二児の母のカリーン・シール(Karine Cyr)さんだ。二人目の子どもを妊娠後、医者に処方されたオピオイドを使用し、当時は副作用でまるで“ゾンビ”のように暮らしていたという。「全く眠れず、酷い睡眠障害を抱えていた。オピオイドをやめ、CBDオイルを摂るようになってからは以前のように眠れるようになった」と同メディアに述べた。

 シールさんは、昨年10月にカナダで嗜好用大麻が解禁されて以来、同じ志を持つカナダ人女性らのグループ「Des fleurs ma chere」を率いている。グループのメンバーは起業家、心理学者、モデル、写真家など様々な背景の数百名の母親たちで、彼女らは子育てをしながら大麻を使用することに対する烙印を拒絶しようとしているとのことだ。アメリカの医療用大麻が合法化されている州では、うつ病などの精神病には、「どの抗うつ剤や睡眠薬や安定剤よりも副作用が少ない」という理由で大麻が処方されているが、シールさんも、「不安や落ち込みを治療する際に処方されるオピオイドや抗うつ剤よりも、大麻を使用する方がはるかにいい」と主張している。

 シールさんは、「子育てをする多くの女性達は、家族や周りの人達に大麻を使用していることを隠したり、大麻の効能に関して彼らに説明し、教育することに疲れている」とCTVニュースに述べた。カナダにおける大麻使用者に対するイメージについて「多くの人々は未だに、大麻を使用する人たちはティーンエイジャーのようにテレビの前でピザを食べているような人だと思っている」と述べ、「私が大麻を使用するのは家事をしたり子供と遊ぶ時。子供に対する忍耐力が強くなるし、より心地よい経験になる。子供達にとっても良い母親で居られるし、人としてもより良い人になれる」と、ストレスフルな生活を送りがちな母親たちへの大麻のポジティブな効能について語った。

 モントリオールを拠点に約5千人のメンバーを擁する、フェイスブックの別の母親グループ「Mother Mary」の創設者ジョルダナ・ザビツキーさんも「mommy shaming(母親に対する侮辱)」に対抗するために団体を創設した。「私達はフルタイムで働くよう求められ、フルタイムで子供たちの世話もするよう求められる。常に家を綺麗な状態で保ち、支払いも期限通りにしなければいけない。冬用のタイヤを準備するようにも求められる。…個人にのしかかるプレッシャーは大きく、私もそのうちの一人。大麻は日々のタスクを片付けるための大きな手助けになっている」と同メディアにザビツキーさんは語った。

 政府の統計機関によると、カナダ人口全体に対する大麻使用経験者の割合は19%であり、それに対してカナダ人女性における割合は12%と低い。しかし、複数の研究論文によると、カナダに加え大麻使用が合法化されている米国の女性たちの間では大麻の人気が急速に高まっているそうで、市場関係者ら特に女性や若い母親をターゲットにした商品の売り込みを始めている。

 スティグマに対抗する者が多数いるカナダとは違い、日本の大麻合法化への道のりはまだまだ長い。世界的に大麻合法の流れが加速する中でも、大麻が「危険薬物」扱いされ、薬物を使用する人は法を遵守する市民と同じ権利を持つに値しない、反社会的な人物だという認識がある。そんな中でも、大麻に関して科学的根拠に基づいた認識をしっかりと持ち、人に偏見に基づく判断を下さないことが重要だと言えるだろう。

アメリカの大麻事情
米ラップ歌手で実業家のJay-Z氏、合法大麻産業に参入へ

 7月9日、米ラップ歌手で実業家のJay-Z氏が、カリフォルニア州の嗜好用大麻販売会社「Caliva」と提携し、急成長する大麻産業に参入することを発表。「Caliva」はJay-Z氏と長期的な提携関係に入ったと発表し、Jay-z氏は最高戦略責任者の肩書で、アウトリーチ活動と合法大麻産業の発展における質と公平性を高めるそうだ。

 米国では、カリフォルニアなど11の州で、嗜好品としての大麻の合法化が実現しているが、大麻産業は今米国で最も成長率の高い分野であり、今最も急成長している雇用創出部門だ。世界最大の大麻宅配サービスを提供するLeaflyとコンサルタント会社Whitney Economicsが発表した調査によると、米国の合法大麻産業では2018年に6万4389人の正社員の雇用が創出され、全役職の44%を示し、全体で21万1000人に上昇している。今急成長する大麻産業に参入とは、さすがの目の付け所である。

 Jay-z氏は、昨年9月に開催されたTIDALのショーの収益を全て刑事司法制度改革のために寄付したほか、New York Times紙のインタビューにて「今の制度が若く、経済的に不利なアフリカ系アメリカ人を窮地に陥れている。この制度が貧困と犯罪の生活を彼らが送る原因だ」と語り、制度改正に対して積極的に意見を発信してきた。

 また、今年1月には「REFORM Alliance」団体設立費用として、5千万USドル(約54億円)の資金投入を約束した。仮釈放や保護観察法の規制下に置かれる人々を5年で100万人減らすことを目標としており、刑事司法制度改革への活動を行うことを目指している。今回の「Calica」との提携の目標の一つは、元囚人のための職業訓練を拡大することで、社会的公正への取り組みを進めることだという。Jay-z氏は声明で、「私たちは素晴らしいものを作り、その過程で楽しみ、良いことをし、人々を導きたい」と述べている(Rolling Stoneより)。

 大麻産業に参入したJay-Z氏の尽力によって、改革は進んで行くのか。野心家の彼の今後の動向に期待したい。


本文=菅原万有 / 企画・編集=TORJA編集部