大麻合法化は成功したのか?カナダの合法大麻産業|カナダから見るマリファナ合法化のあと

 カナダで嗜好用大麻が合法化されてから一年弱が経つ。カナダの非医療大麻市場は他の営利産業と同様に扱われており、例えば「CannTrust Holdings」の無許可の大麻生産スキャンダルに関するGlobe and Mailのレポートは、経営者の不正行為、市場シェア、および業界内操作に関してのもので、大麻のタブー視は薄れてきていると言えるだろう。大麻合法化には、カナダで長年問題とされてきた人種間の不平等や階級格差の改善の効果が見込まれていたが、この一年で大麻は急速にメインストリームなものと化し、資本主義社会の規範のように富裕層の白人の投資家によって搾取される商業的なものへと変貌した。

長年有色人種を対象にしてきた大麻禁止法

 カナダの大麻合法化が「成功」したのかというと、そうとは言えないとThe Globe and Mailの記者、Chuka Ejeckamは述べている。非医療用大麻は犯罪から合法的な商業製品へと化したが、急速に成長しているカナダの大麻産業は表面レベルの分析でさえ、厄介な傾向を見せているとEjeckamは述べている。

 合法化前、カナダでは長年に渡って、大麻禁止法は黒人および先住民を対象にしていた。大麻関連の犯罪歴を持つ有色人種の市民の数は50万人を超え、カナダ市民の大きな割合を占めてきた。黒人と先住民の市民は警察からの注意から投獄までと、あらゆるレベルにおいて標的にされてきた。
 トロント大学の犯罪学者、Akwasi Owusu-Bempah教授の調査によると、白人の方が薬物を使用および販売する割合が高いにも関わらず、彼らはそれらの犯罪に対して逮捕、起訴、または投獄される可能性が有色人種に比べて圧倒的に低いことがわかっている。
 このような背景から、合法的な大麻からの収入は人種差別的な薬物法と執行によって過去数十年被害を受けてきたコミュニティへの賠償に充てられるべきであるが、大麻が生み出す利益と富の殆どが、白人のカナダ人の財布に入っているというのが現状である。

カナダの大麻産業、有色人種はわずか3%

 現在、カナダの合法大麻業界では人種間の不平等が問題となっている。これらの不平等は米国では頻繁に議論されてきたが、カナダではその議論の展開が遅いとEjeckamは述べている。モントリオール・ガゼットが2018年に実施した調査ニョルと、カナダの大麻の生産者および流通業者の上位5社の管理スタッフのわずか3%が有色人種であり、それは米国の格差を模倣しているような結果となった。2017年のデータによると、米国の大麻会社の81%が白人であり、大麻は圧倒的に白人に所有されていた。カンナビジオール(CBD)を含む製品で業界で成功を納めている女性も多いが、これは主に白人女性に当てはまり、有色人種は圧倒的に少ないという調査結果だった。

大衆文化と黒人コミュニティ、大麻の密接な関係-搾取する白人富裕層

 アメリカとカナダの大衆文化に大麻を導入したのは、有色人種のコミュニティである。少なくともジャズ時代以来、芸術的および文化的表現に大麻を取り入れてきたのは著名な黒人、そして褐色のアーティスト達であり、ルイ・アームストロングのようなジャズミュージシャンは大麻をテーマとした楽曲を数多く歌ってきた。アメリカでは20年代頃から有色人種に対する明確な差別が法律で禁止され、財務省麻薬取締局長官のハリー・アンスリンガーを含む人種差別的な者たちは、黒人コミュニティに愛された大麻を取り締まることによって、有色人種を抑圧しようと考えた。メディアは「大麻を吸ったメキシコ人男性が家族を殺害した」など、大麻による凶暴性を訴えるデマを報道し、徐々に大麻が危険なドラッグという認識が全米に広がった。法執行機関はこの事実を悪用し、人種グループ間での薬物使用数は基本的に同等であるにもかかわらず、警察は数十年間に渡り薬物法で有色人種を弾圧してきた。現在、日本では大麻が覚せい剤などのハードドラッグと同様に「危険ドラッグ」として扱われ、世界的な大麻合法化の波からも取り残されているが現状があるが、似通った過去がアメリカにあったという訳である。

「黒人が価値ある産業を生み出し、白人が所有権を変えるためにルールを変える」

 Philadelphia Inquirerのコラムニストであるソロモン・ジョーンズは、「黒人は法的手段であれ違法手段であれ、価値のある産業を生み出すが、白人はその所有権を変えるためにルールを変え、言語を変え、認識を変える」と書いている。ジョーンズ氏は、米国で合法的なライセンスを所有して大麻を販売している人のわずか1%が黒人だと推定しており、「それは偶然ではなく、業界がそのように構成されている」と主張している。

 薬物禁止法がどのように過去に強化されてきたかを考えると、現在急成長を遂げている大麻産業における人種格差は、非常に重要な問題だと言えるだろう。カナダ社会は大麻合法化後、主に白人カナダ人と裕福な「起業家」が大麻に関与していることを称賛しているが、今まだ不釣り合いに逮捕され、起訴され、投獄され、犯罪歴のある有色人種の存在は無視されたままだ。

 カナダは多様性に寛容な「アメリカの優しい親戚」のような存在だと思っている者も多いが、それを実現するには社会に蔓延している人種的不平等を合法大麻市場で再現させないことを選択し、公平さと賠償を厳密に追求することが大事であり、また特権階級における富の継続的な不均衡な蓄積を無視しないことが必要となる。


本文=菅原万有 / 企画・編集=TORJA編集部