もっと日本にCanLit! 第7回

第7回 リサ・ド・ニコリッツ

Lilisadenikolitssa de Nikolits

南アフリカ出身。2003年よりカナダ市民としてトロントで作家活動を続けるほか、雑誌のアートディレクターとしても活躍中。


先月に引き続き、今月も南アフリカ出身の作家を紹介したい。
2003年よりカナダ市民としてトロントに暮らすリサ・ド・ニコリッツは、南アフリカの出身。また、半分ハンガリーの血も引く。カナダにやって来る前は、アメリカ、イギリス、オーストラリアでも暮らしたが、やはりトロントの多様性と寛容さに惹かれてこの地に永住することを決めたという。現在は作家活動のほか、有名雑誌のアートディレクターとしても活躍している、多才な女性だ。
1978年よりカナディアン・ウーマン・スタディーズに特化した作品を出版し続けているトロントのイナンナ出版より、文学賞受賞作のWest of Wawa『ウェスト・オブ・ワワ』やThe Hungry Mirror『ザ・ハングリー・ミラー』などの小説を発表している。
そしてつい先月、初のノワール小説(犯罪小説)となるA Glittering Chaos『ザ・グリッタリング・ケイオス』が出版された。
夫のラスベガス出張に無理矢理くっついて来た中年のドイツ人女性メルージネ。ところが、出張というのは実は口実で、14歳のときに消息を絶った姉と交流するために霊能力者を訪れるのが夫の真の目的だった。そして次々に起こるミステリーの数々……。だが、本作は単なるノワールではなく、情熱的でクリエイティブな四十代女性が困難を切り抜け人生の局面を打開していく痛快な冒険ものでもある。妻であり母でありながら、あるときは司書、またあるときはヌードモデル、パティシェ、同性愛小説作家と変幻自在のメルージネに加え、個性豊かなキャラクターたちがプロットを盛り上げる。
glitteringchaosまた、先月『ア・グリッタリング・ケイオス』が発表されたばかりにもかかわらず、ド・ニコリッツはもうすでに新作に取りかかっているらしい。四年前から取り組んでいるというThe Cracks She Fell『ザ・クラックス・シー・フェル』は、30代で失業しホームレスとなった女性が局面を乗り越えていく、これまた女性の人生挽回ものだ。ワーカホリックであるという私のコメントには
「だって、現実逃避には書くのがいちばんでしょ?」と応えるド・ニコリッツ。
快活で饒舌な本人と同様、彼女の筆もとどまることなく快進撃を続けてゆく。

さて、私事ながらこの場をお借りしてぜひご報告させていただきたいことがある。このたび、私の小説Double Exile『ダブル・イグザイル』が、カナダのモザイク・プレスより出版されることとなった。日本人少女がドイツを舞台に政治と文学の謎を探る歴史小説で、本年秋から来年春にかけての出版になりそうだが、詳細が決まり次第またお知らせできればと思う。

A Glittering Chaos / Inanna Publications
フェミニズム文学の第一人者、トロントのイナンナ出版より発売中。


yokoモーゲンスタン陽子
作家、翻訳家、ジャーナリスト。グローブ・アンド・メール紙、モントリオール・レビュー誌、短編集カナディアン・ボイスなどに作品が掲載されたほか、アメリカのグレート・レイクス・レビュー誌には2012年秋冬号と2013年春夏号に新作が掲載。今年6月にはアメリカのRed Giant Books出版から小説『ダブル・イグザイル/ Double Exile』刊行。翻訳ではカナダ人作家キャサリン・ゴヴィエ氏の小説『ゴースト・ブラッシュ』の邦訳を担当。2014年6月彩流社より刊行。また同月、幻冬舎より英語学習本も刊行される。筑波大学、シェリダン・カレッジ卒。現在はドイツのバンベルク大学院修士課程在籍中。最新情報はwww.yokomorgenstern.comまたはフェイスブック参照のこと。