トロント大学3年生の杉浦愛來さんにインタビュー|インタビューシリーズ「カナダで夢に向かって頑張る子供達」

トロント大学3年生の杉浦さん

 TORJA5月号に続いて、今回はトロント大学3年生の杉浦愛來さんにインタビューしました。
 日本の中学校からアメリカの高校留学を経てカナダへ。ブロガーとしても活躍される杉浦さんが考えるカナダと日本の教育の違い、留学の意義についてお話頂きました。

現在はトロント大学の3年生とのことですが、これまでの学生経験を教えてください。

 小学校までは日本の公立小学校に行き、中学受験を経て玉川学園のIB(International Baccalaureate。註:国際バカロレア:世界共通の大学入試資格とそれにつながる小・中・高校生の教育プログラム)クラスに入学しました。玉川学園のIBクラスはできたばかりで、1学年にIBクラスは一クラスのみ、生徒数は約15人という小さなクラスでした。

IBのプログラムはどのような授業ですか?

 すごくクリエィティブだったと思います。私は中学校から日本の教育を受けていないので比較はできませんが、日本の教育はインプットして、テストでアウトプットする。IBの場合、インプットはするけど、アウトプット方法が色々あり、プレゼンテーションであったり、ディベートだったりクラスディスカッションもあります。印象的だったのが、外国人の先生による戦国時代についての授業で、戦国時代の年表を自分で作って、絵なども加えながらわかりやすくプレゼンテーションする、というのがありました。ただ暗記してテストをやるというよりは、何かを作りながら覚えるのが楽しかったです。

とてもクリエィティブで楽しそうですね。

 そうですね。あまり「覚えておけよ」というのはありませんでした。
 それから、中学3年間IBを受け必死に英語を勉強し、もっと英語を話したいと思い、高校生の時にアメリカに1年間留学しました。

高校は玉川学園に進学して、途中でアメリカに行ったということですか?

 はい、玉川学園に在籍したまま、1年間アメリカのオレゴン州に留学しました。でも1年間の留学を終え日本に帰って来た時点で、将来は海外の大学に行きたいと思っていたので、高校2年生の夏に、横浜インターナショナルスクールに転校しました。

高校の卒業式にて

杉浦さんは確実に自分のやりたい道を歩んでいて素晴らしいですね。
なぜ、海外の大学に行きたいと思われたのですか?

 高校留学が自分の人生を変えたからです。高校留学をした学校が、オレゴン州のセーラムという田舎で、留学先の高校には日本人が一人しかいませんでした。なので、英語を心置きなく話せる環境がすごく楽しく、アメリカでの生活を楽しんでいたのですが、ある日母親に「普通に英語が上達して、普通に文化に触れて帰ってくるのではなく、もっと成長してきなさい。留学の機会を最大限に活用するように」と喝を入れられました。

 私ができることはなんだろうと考えた時に、日本の文化を伝えることだと考え、自ら企画し、地域のミドルスクールにお寿司や折り紙を教えに行ったり、千羽鶴のプロジェクトを立ち上げ老人ホームに寄付する活動などをしました。

 企画をゼロから立ち上げ、周りを巻き込みながら目標を達成したり、その活動によって誰かが喜んでくれるという経験が、自分のターニングポイントとなりました。わたしは、何かを0ベースから作ることが好きだということに気づいたのです。

高校留学時代に自ら企画しミドルスクールに折り紙を教えに

 そこで、高校留学中にブログをやっている人があまりいないことに気づきブログを始めたところ、高校留学をしたいという人が私のブログを見に来てくれて、私を頼りにしてくれたり、私のブログをきっかけに留学を決めました、という人が出てきて面白いなと思いました。また、高校留学の情報は、まだ全然世の中に普及していないと感じ、留学後、高校留学を経験した高校生を集めて、高校留学をしたい中・高生にノウハウを伝えるイベントの企画運営を行う学生団体を立ち上げて活動もしました。

 わたしが高校時代にアメリカに留学をしていなかったら、経験できなかったことがたくさんあります。ですので、大学も海外に行けば何か新しい刺激を得られるのではないかと考え、海外大学に行きたいと思いました。

高校2年時に立ち上げた学生団体のイベントを早稲田大学で実施

海外大学の中でなぜカナダのトロント大学を選ばれたのですか?

 元々アメリカとカナダを併願していて、アメリカなら経営学部に、カナダなら社会学(Sociology)を勉強したいと思っていました。社会学を志望した理由は、学生団体を立ち上げたり、ブログを書いたりする中で、人に影響を与える機会が増え、人々の行動がどう社会に影響をもたらしているのかということについて勉強したいと考えたからです。カナダは多文化主義の国なので色んな人種の教授や生徒がいるので、いろいろな側面から勉強できると思いました。

杉浦さんが卒業後にやっていきたいことのイメージはありますか?

 幅広く理系も文系も勉強してきたので、具体的にこの職業につきたいというのはありませんが、今までもブログを立ち上げたり、学生団体を立ち上げたりと、ゼロベースで新しいことをすることが好きですし、それによって今までになかった情報や価値観を社会に発信し、周りの人に影響を与えたり、喜んでくれることにやりがいを感じていますので、これからも、新しい価値観、新しい情報を発信できるような人になりたいです。

UTJN 日本の起業家さんとトロント大学生との交流会を企画

トロント大学の学生生活は、どのようなものですか?

 わたしの場合、1年生は授業に付いていくのがすごく大変でした。まず、環境に慣れないといけない。その上で、すごく印象的だったのは1年生の最初の数学の授業で、教授が「ここにいるだいたいの人が(高校では)トップの5%、10%に入る人だったかもしれないが、トロント大学では違うよ」と言われました。でもそれくらい勉強が大変。みんな優等生と言われていた人たちがどんどん挫折していきます。

 2年生になると、慣れてくるのと、必修科目の単位を取り終え、自分が取りたい授業をとれるようになるので勉強が楽しくなります。3年生になると就活が始まるので、就活をしつつ大学の勉強もこなしていくのが大変でした。4年生は単位も取り終え、後は卒業するだけなので、一番精神的には楽という話は聞きます。

カナダの教育と日本の教育を比べてどのような印象をお持ちですか?

 あくまでも私の意見ですが、日本の教育の悪いところはインプットしかないところだと思います。良いところは、1つ1つ教科書通り教えてくれて丁寧。丁寧さが良いところでもありますが、丁寧すぎるところが悪いこともあります。例えばクリエィティブさがないところや、個々の意見や個性より統一試験の成績を尊重する、というところが日本の教育の課題かなと思います。

カナダで実際に教育を受けて、どう感じていますか?

 一概には言えないとは思いますが、日本の教育と一番違うところは、学びたいことを1つに絞らなくて良いところだと感じています。日本だと大学に入る前に自分が勉強したいことを選ばなければならない。カナダだと専攻を決めるのが、だいたい2年生からです。2年生になって、もっと深く勉強したいと思えたものを専攻として選ぶので、選ぶ時間を与えてくれています。私のように3年生の途中で変える人も沢山います。

他に、カナダの教育の魅力はありますか?

 アメリカの大学もそうかもしれませんが、いろんな人種の教授がいることが面白いです。英語圏だけではなく、アジア圏やヨーロッパからの教授も多いです。教え方や物事の観点にも違いがあり、とても刺激を受けます。また、授業スタイルも、教授のお国柄が反映されたスタイルがあって面白いです。私のイチオシはイタリア人の教授で、とてもノリが良い感じです。このイタリア人の教授はメディア学を教えており、いきなりビンゴ大会を始めたりするのですが、このビンゴにもカリキュラムがしっかり含まれています。

最後に海外留学に興味がある後輩や親御さんへのアドバイスを頂けますか?

 言語や文化を学びたいのなら高校、中学留学が一番良いと思います。大学は勉強が忙しいので、英語力がゼロで来てしまうと、授業に対応できません。その上、大学では勉強で忙しいため文化に触れる時間もなかなかありません。言語を習得したり文化に触れたいのであれば大学留学よりも中学生や高校生の時に留学する方が、オススメです。

高校留学時にプログラムの一環で世界中の留学生たちとニューヨークにて

 また、留学に興味はあるけど断念する中高生の多くに、部活動を休めない、留年したくないと考える人が日本には多くいることに、私は少し疑問に感じます。もちろん部活動で学ぶことは多いと思いますが、将来プロを目指しているわけではないのなら、一定期間休むことになにも支障はないと思います。留学をして周りより1年遅く高校を卒業した知り合いも沢山知っていますが、留年したことを後悔している人は1人もいません。でも、留学をしなかったことを後悔している人は沢山いると思います。若いうちに世界を見るということは絶対にポジティブにお子さんが変われる。英語を取得できるのはもちろん、私のように人生のターニングポイントになるかもしれません。大学の進路も高校留学を経て大きく変わると思います。留学ができるチャンスがあるなら、ぜひ挑戦してみてほしいと思います。

インタビューを終えて

 今回のインタビューは杉浦さんの多忙なスケジュールの合間に、トロント大学内の図書館でお話を伺いました。落ち着いた大人な雰囲気の中に、聡明で、自分が思ったことを着実にやり遂げていく意志の強さが感じられる知的な学生さんです。中学時代に日本でIBプログラムを通して英語や海外の文化に触れ、そして高校時代の海外留学で、自分に何ができるのか、自分が社会に貢献できることは何かを見つけられた杉浦さん。杉浦さんと同じように、少しでも多くの人が、大学進学前の早い段階で英語環境に自分の身を置き鍛え、そして多文化や多人種に触れあう中で、自分のやりたいことや性格を見極めていくことができたら、自信をもって未来に向かって行きていける幸せな子供が増えていくことと思います。なお、杉浦さんがブログでトロント大学の生活を発信されていますので、ご興味ある方はぜひ、ご覧ください。
https://www.ailiontoronto.com/

久保恵一

 ​日系広告会社カナダ支社への赴任後、カナダの主体性と考える力を育む教育環境に感銘を受けて移住。より多くの日本人の子供に、カナダでグローバルな経験を積んで欲しいと思い、ジュニア留学・親子留学専門のコンシェルジュ・サービス「ライフ・デザイン・カナダ(lifedesigncanada.com)」を設立。プライベートではトロント日本商工会理事を務めた他、日系文化会館の理事、トロント三田会代表を務める。