【第5回】カナダの協議離婚「コラボレィティブ・ファミリーロー」|カナダの国際結婚・エキスパート弁護士に聞く弁護士の選び方

 離婚のため、弁護士事務所のドアをたたく人々が例外なく口にすることに「円満解決したい」があります。話し合いで解決する協議離婚は、離婚のストレスを軽減するために理想的です。一口に協議離婚といっても、その方法は多彩ですが、今回は、近年注目を浴びている「コラボレィティブ・ファミリーロー」についてエキスパート弁護士、ケン・ネイソンズに聞いてみました。

コラボレィティブ・アプローチとは?

 コラボレィティブとは、「協力的な」という意味ですね。つまり、当事者が協力して離婚協議を進めるプロセスを確立したのが、コラボレィティブ・アプローチなのです。

 一般的な協議離婚では、当初円満解決を望んでいても、話し合いが暗礁に乗り上げ裁判所の判断を仰ぐ方向に向かうこともめずらしくありません。しかし、コラボレィティブ・アプローチを採用した場合は、当事者は、あらかじめ「話し合いだけで解決すること」を約束します。それには、以下のような手順があります。

協力体制の確立

 
 まず、当事者それぞれが、弁護士に代理人を依頼します。代理人を選ぶときには、その弁護士が過去にコラボレィティブ案件を扱ったことがあるかどうかを確かめてください。

 次に当事者とそれぞれの代理人が、「離婚条件を協議によって合意に導く同意書」に署名します。「解決を法廷に委ねないことを約束することで、協議にコミットする」というのが、その狙いです。

注意点

 コラボレィティブ・アプローチの最大のメリットは、必ずしも法が定めたとおりの取り決めでなくてもかまわないことです。両者が納得できれば、かなりフレキシブルな取り決めを導入することも可能です。これで円満に協議離婚したカップルがたくさんいる一方、そのリスクも理解してほしいものです。
 

①分別ある合意ができるか?

 
 もし、当事者の一方あるいは双方が感情的であったり判断力に欠けていたりする場合、当事者間の話し合いは困難です。互いが協力して公平な解決が目指せないのであれば、コラボレィティブ・アプローチは、不向きです。

②話し合いが可能か?

 したがって、もし離婚の原因が浮気やDVであった場合、直接交渉は避けるべきです。当事者が面と向かって話し合いの席に着くことで、怒りや恐れを誘発し問題をこじらせてしまう可能性が高いからです。

③子の最善の利益を追求できるか?

 
 たいていの親は、子どものことを第一に考えています。けれども、親が子にとって最適であると考えることが、かならずしも子どもが望むことでない場合もあります。さらに、両親が合意しようとする面会交流などの取り決めが、社会的、心理的、教育的見地から子どもの利益にならない可能性もあるのです。

④弁護士の能力を最大限に利用できるか?

 「離婚条件を協議によって合意に導く同意書」に署名した弁護士は、法手続きを始めるオプションを放棄したことになります。したがって、相手が理不尽な提案をしたり、こちらのリーズナブルな提案を拒否された場合でも、次のステップに進むことができません。

 このように、コラボレィティブ案件は、弁護士が、その能力を最大限に発揮することができなくなるという欠点を抱えているのです。

⑤代理人の費用の重複が覚悟できるか?

 
 コラボレィティブ同意書に署名して協議離婚にコミットした場合、話し合いで解決できず、法手続に頼ることになった場合は、別の弁護士を探さなければなりません。また資料に関しても、当事者双方の同意が得られない限り、再利用することができません。

 つまり、話し合いが物別れに終わった場合、同じステップを最初から繰り返すことになり、費用が二重にかかってしまう可能性があるのです。

エスパート弁護士のスキル

 
 「弁護士を雇う=裁判をする」という方程式が思い浮かびますが、エキスパート弁護士は、依頼人の代わりに相手と交渉し、妥協点を模索し、様々な選択肢を検討します。そしての最後の手段としての法手続においても、その持てる能力をフルに発揮します。
 このように、さまざまな選択肢についてていねいにアドバイスしてくれるのも、経験豊かなエスパート弁護士のスキルのひとつなのです。

【参考】 コラボレィティブ・ファミリーローについての詳細は左記をご覧ください。
Ontario Collaborative Law Federation:https://oclf.ca/collaborative-divorce/

ケン・ネイソンズ: B.C.L, LL.B, LL.M(Family Law)

 日本人の国際離婚を多く手掛ける。ていねいに話を聞く姿勢は 移住者女性に好評。ネイソンズ・シーガルLLP設立パートナー。趣味はモデルカー収集。

野口洋美: B.A. M.A.

 ヨーク大学で国際離婚とハーグ条約に関する研究に携わる。国際結婚に関する執筆多数。ネイソンズ・シーガルLLP所属。趣味は日本語ドラマ鑑賞。