トロント日本映画祭ワールドプレミア『ダンスウィズミー』インタビュー 主演女優・三吉彩花さん 矢口史靖監督がカナダで感涙の舞台挨拶|トロントを訪れた著名人

 6月10日に世界初公開となるミュージカル・コメディ映画『ダンスウィズミー』の上映に伴い、矢口史靖監督と主演の三吉彩花さんがレッドカーペットに登場、観客と共に鑑賞後に舞台登壇を行った。当日はワールドプレミアを待ち望んでいた数百人もの現地ファンが会場に押し寄せ、過去最高レベルの盛り上がりを見せた。

 上映前舞台挨拶では、この日NBAのラプターズが史上初となる決勝シリーズに挑んでいたこともあり矢口監督は「ラプターズの試合ではなく『ダンスウィズミー』を選んでくださってありがとうございます」というジョークで会場の爆笑を誘い、ユーモア溢れる挨拶で観客の心を一瞬で掴んだ。さらに三吉さんも「観てくださる方全員にハッピーになってほしいという願いを込めて作りました。ジェットコースターに乗っているかのような、次々に始まる歌、ダンス、新しいストーリー展開といったワクワク感が楽しめるミュージカル作品です。」と本作への自信を述べ、会場からは熱い拍手が沸き起こり、三吉さんが映画上映後に感激のあまり涙を流すなど一体感に包まれた会場は感動と絶賛の声でいっぱいとなった。

「自分の生きる道を再発見する旅」を描く

ー世界に先駆けてトロントで初公開を迎えた本作。ワールドプレミアに対しての思いは?

矢口監督: ドキドキしています。日本での公開は8月16日(金)からで、日本のお客さんの反応は未知です。ここトロントで初めて、日本人だけでなく世界にお披露目することになるので、どんな反応が返ってくるのか楽しみですね。今日の上映でお客さんに楽しんでもらって自信をつけて帰国したいです。今日はお客さんと一緒に映画を観たいと思っています。

三吉さん: 出演している映画が日本より先に海外で公開を迎えるのは、私自身今回が初めてになります。こうして海外に招待していただくのも初めてで緊張していますが、それと同時に楽しみでもありますね。

矢口監督: 本作は始まりから終わりまで面白おかしいものにしたいと思って撮影に取り組みました。自分の生きる道を再発見する旅というメッセージが込められています。ぜひ多くの方に楽しんでもらいたいです。

ートロントに来てみた印象は?

矢口監督: 過去に2度トロント国際映画祭(TIFF)で訪れたことがあり、カナダへ来るのは今回で3度目になります。気候が良いですよね。冬に来たことがないからそういう印象を持つのかもしれません。極寒だと聞きますが、どんな景色になるのかいつか冬に来てみたいです。

三吉さん: 私は今回初めてカナダに来ました。買い物に行ったり、カナダ人が愛していると聞いていた「ティム・ホートンズ」に行ったりと現地での時間を楽しんでいます。日本には「ティム・ホートンズ」がないですし、コーヒーが好きなので一度行ってみたかったんです。

矢口監督: そうだ、ドーナツが美味しいよね。僕は映画祭でしか来たことがないんだけど、カナダを代表するモンゴメリの名作「赤毛のアン」は有名だし、トロント国際映画祭にトロント日本映画祭、メープルシロップ…カナダには好きなものがいっぱいありますね。

ー本作の撮影にあたり大いに悩み苦しみ抜いたという三吉さん。難しさや達成感を感じたシーンは?

三吉さん: どのシーンというのは特にないのですが、全体的にでしょうか。主演するというプレッシャーもそうですが、それに加えて歌とダンスの高いスキルと、催眠術にかかっているせいで踊りたくないのに踊っているように見せるという演技力が求められました。

 クランクインして撮影が始まってからも歌やダンスに対してきちんとできるか悩んでいました。映画が完成した後でようやく達成感を覚えました。今は公開にあたってお客さんがどんな反応をするのか少し不安もあります。意外と心配性なんです。

ー普段の三吉さんと、主人公である鈴木静香と似ている点は?

三吉さん: ない!(笑)だからこそ演じていて楽しかったです。自分と似ているキャラクターだと共感できたり、「私ならこうするかな」とイメージできたりするので演じやすい部分があります。でも今回に関してはそういった共通点がほとんどなく、だからこそ「こんな演技もできるんだ」という自分自身の新しい発見につながって面白かったです。

「本人は違うと言ってますが、私は普段の二人のキャラクターがそっくりだと思っています」

矢口監督: 私は実は似ている部分がたくさんあると思っているんです。三吉さんはつまらないときは本当につまらなさそうにしてるんですよ(笑)。そういうクールで素直なところと、華やかな表情を見せるときのギャップがありますね。この静香という役には特に、普段見せる表情と急に歌ったり踊ったりしたときに見せる晴れやかな表情、にこやかな表情とのギャップが必要なんです。そのギャップを生き生きと演じられるのは三吉さんだけ。本人は違うと言ってますが、僕は普段の二人のキャラクターがそっくりだと思っています。

「音楽も主人公と同じぐらい大きな存在」

ー矢口監督の代表作『ウォーターボーイズ』でも音楽の使われ方が印象的でした。世界的に昨年から今年にかけてだけでも例えば『ララランド』、『グレイテスト・ショーマン』、『ボヘミアン・ラプソディ』など、映画と音楽との融合が多く見られます。映画の中で果たす音楽の役割、位置づけとは?

矢口監督: 音楽も主人公と同じぐらい大きな存在。選曲にしろ、映画の中で仕上げていく音楽のクオリティにしろ、気を抜いたり、手を抜いたりすると絶対にうまくいきません。音楽のおかげで映画がより際立っていく。その分、扱いが非常にシビアです。うまく扱わないと、むしろマイナスの結果を招いてしまいますから。僕は音楽は主人公のひとりだと考えています。

ー映画の中で一番思い入れのある曲は?

三吉さん: 「ハッピーバレー」という曲です。宣伝用ポスターでも使用されているオフィスでのシーンで歌った曲です。実は私、普段は高音の歌を歌うことがあまりないのですが、この映画で使われている曲は高音のものばかりなんです。それが、「ハッピーバレー」をレコーディングする当日に半音上げたいと言われてしまって大苦戦して。今となってはそれも良い思い出であり、苦戦したという意味でも一番印象に残っている曲です。盛り上がるとても楽しい曲なので、映画でもぜひ注意して聴いてみてください。

ー音楽は主人公のひとりとおっしゃっていましたが、実際に三吉さんの歌声を聴いて撮影前にイメージしていた音楽はどう変化しましたか?

矢口監督: 撮影前は贅沢な花束になればいいなと思っていました。それが花畑になりましたね。びっくりするほど華やかで。昔は日本でもたくさんミュージカルがあったけど、今はそれをメインにした作りのものはあまり見られません。そのため、音楽担当スタッフと共同作業で、手探りで仕上げていきました。結果として、贅沢で華やかな映画が完成しました。三吉さんがいないとできなかったことです。

ーこの映画を観て、矢口監督と三吉さんのファンになる方も多くいらっしゃると思います。お二人の作品の中でそれぞれ新しくファンになられた方に観てもらいたい作品を挙げるとすればどれになるでしょうか?

三吉さん: 2013年に初めて私が主演した『旅立ちの島唄 ~十五の春~』という映画でしょうか。撮影時、私もちょうど15歳でした。沖縄の南大東島を舞台にした実話をもとに作られた作品で、この島の子ども達は中学を卒業すると高校進学のために親元を離れて沖縄本島へ旅立っていくのです。私が演じたのは少女民謡グループ「ボロジノ娘」のリーダーで、三線を弾きながら「アバヨーイ(さようなら)」という沖縄の民謡を歌いました。今思うと、作品を通して映画と音楽に触れる機会が多いですね。今回公開される映画の内容とは全く異なりますが、初めての主演、初めて映画の中で音楽に触れた作品なので、これを観て成長を感じてもらいたいです。この映画があって、今回のミュージカルでの演技へとつながっていると今は思っています。

矢口監督: 僕は2001年に公開となった『ウォーターボーイズ』ですね。実際に映画を作ってみて、音楽がこんなに映画に影響を及ぼすのかということを実感した作品です。音楽が主役のひとりになりえると思いましたし、だからこそ音楽が担う主役としての責任の重さみたいなものを感じました。音楽映画を作るときには音楽を使うシーン、選曲、演奏、歌を大胆に、繊細に、注意深く作っていくことが大切ですね。