在トロント日本国総領事公邸料理人・渡邉元弥シェフによる「ダシ」についての講演会がジョージ・ブラウン・カレッジで開催|メイド・イン・ジャパンでカナダを攻めろ!

 いまや世界中で人気の和食。その中でも特に注目されているのが「うまみ」であり、英語でも「umami」という言葉があるほど浸透している。そのうまみの要となるのがダシであり、今回はダシに注目した講義が渡邊シェフ本人により行われた。

「ダシ」は和食に欠かせない存在

 始めに挨拶をしたのは伊藤恭子総領事。主催者のジョージ・ブラウン・カレッジに謝辞を述べた後、改めて和食がいかに世界的に注目を浴び続けているかを強調。2013年にユネスコより無形文化遺産に登録されてからはさらに多くの人が和食に興味を持つようになったと述べた。また、トロントでも現在1000以上の日本料理店があり、その人気ぶりは街を見ても明らかだと語った。

 そんな和食にも手軽に食べられる焼き鳥から手の込んだ懐石料理まで、幅広い種類があると伊藤総領事は加えた。しかしながら、そのほとんどの根底には共通して「ダシ」があり、「ダシ」は様々な料理の旨味を引き出すと語った。「ダシ」は和食にとって欠かせない存在であり、様々な方法で使用することが出来るため、その活用性に驚かされることだろうと学生に向けてダシの魅力を語った。

科学的観点からダシの美味しさを説明

 渡邊シェフは始めに、様々なダシの種類について語った。和食には昆布ダシ、鰹ダシ、煮干しダシ、椎茸ダシなどある。講義では昆布と鰹の合わせダシの作り方を実演した。水、昆布、鰹節というシンプルな材料。しかし、旨味成分を抽出すべく昆布を入れてからは65度から68度くらい、鰹節を入れてからは98度くらいの温度を保つなど、美味しいダシを作るための注意事項を一つ一つ丁寧に説明した。学生達は鰹節を削る工程を体験するなど、ダシがどのようにして作られるのかを目の当たりにした。

 続いて渡邊シェフは合わせダシについて説明。昆布に含まれるグルタミン酸と鰹節に含まれるイノシン酸の相乗効果でダシが美味しくなると科学的観点からダシの美味しさの理由を明らかにした。また、日本のダシは調理工程こそシンプルであるものの使われる素材には手間がかかっていると説明。鰹節など、特に手間がかかる材料は準備に三ヶ月ほどかかると加え、素材へのこだわりが日本のダシの特徴であるとした。

 さらに日本におけるダシの歴史について語った渡邊シェフ。日本で採れる水はほとんどが軟水であり、ダシのように旨味を抽出するには軟水が適していると説明。その上、海に囲まれているため昆布や鰹節も手に入りやすく、結果としてダシの文化が日本で発達したのではないかと述べた。

 続いて渡邊シェフはダシを使っただし巻き卵を調理。コツは強火で焼いていくことだと話しながら手際よくだし巻き卵を作った。公邸料理人の実演には皆興味津々で、渡邊シェフの手元に釘付けだった。

 質疑応答の時間では多くの学生が渡邊シェフに質問。「良い鰹節の見分け方は?」「市販のダシと家で作るダシの違いは?」など味についての質問から、「ダシを作るのに使った昆布はまた使えるのか?」など材料の活用法についての質問も聞かれた。学生達はこの講義を受け、ダシについてよく知ることが出来たと述べ、家でもぜひ作ってみたいと意気込みを語った。さらに、ダシを工夫して様々な料理に利用したいと語る学生もいた。

講義終了後、渡邊シェフに話を伺った

ー講義はいかがでしたか?

 このようなことをやったのは初めてだったので、とても緊張しました。でも、直接学生さん達とお話をすることが出来たのでとても良い経験になりました。料理の学校で勉強されている方がほとんどだったので、僕も分かりづらいような専門的な質問もされて少し困りました。でもダシについてとても興味があるのだなと思い、嬉しかったです。

ー和食や日本食が世界中に広まっていることについてどう思いますか?また、トロントでも日本食は浸透していると感じていますか?

 僕自身、日本人なのでこのように多くの人が日本に対して興味を持ってくれているのは素直に嬉しいですね。これからさらに多くの人が和食を食べて美味しいと思っていただければなお嬉しいです。

 海外に出たのはトロントが初めてなのですが、ここでは浸透していると思います。街を歩いていても「すし」や「ラーメン」など、これほど多くの日本の言葉が見られることに驚いています。また、そこに足を運んでいるのがアジア人だけでないということもとても嬉しいです。
 僕も食べることが好きなので、日本食に限らずトロントのレストランにはよく行きます。このように食が発展しつつあるトロントで料理の仕事をしているということは楽しいですね。

ーTORJAの読者に向けてメッセージをお願いします。

 トロントに限らず、今や世界中で日本食が浸透し始めていますが、僕と同じように日本食が他の国で浸透しているということに共感出来る方がいらっしゃればぜひお会いして直接お話ししたいですね。また、公邸料理人という職業は特殊な職業なので、このように特殊な職種に対して興味を持っていらっしゃる方ともぜひお話ししたいです。