カナダが生んだスーパースター「ドレイク」ラッパーという枠だけでは語れないトロントが生んだマルチタレントミュージシャン|特集「残りわずかな夏に押さえておきたいトロント8トピック」

ファッション、レストラン業にも進出
今のうちにおさらいしておきたいトロント出身のドレイク

アーティストとしての活動を行うドレイク ©The Come Up SHow


 トロント出身のスター、ドレイクはドラマーの父と編集者の母との間に生まれた。そして今では若者からの支持を集め現在の音楽シーン最前線で活躍するラッパーとなっている。その才能は音楽業界だけに留まらず、いまやレストラン事業やアパレル事業など様々なシーンにおいて起業家・ビジネスマンとしても活動に力を入れている。もはやその音楽に興味がある・ないにかかわらず、2018中には押さえておきたいドレイクの軌跡と周辺事業についてまとめてみた。

現代の音楽シーンを牽引するラッパーとしてのドレイク

デグラッシに出演していた当時のDrake(車いすに乗っている男性)


 ドレイクは元々、俳優としてカナダの学園ドラマシリーズ“Degrassi: The Next Generation”の第1シーズンから第7シーズンまでレギュラー出演していた。このドラマはデグラッシ高校を舞台に高校生の友情や恋、悩みや葛藤、そしてマイノリティーなどの社会的テーマをリアルに描いた学園ドラマとなっている。そのドラマの中でドレイクはジミー・ブルックスという裕福な家庭に生まれ、運動神経抜群にも関わらず謙虚な学生を演じている。

 デグラッシ出演中と重なる時期である2006年2月、自身初となるミックステープ“Room for Improvement”を自主制作で発表し、ラッパーとしての活動を開始。このとき6千枚の売り上げを記録し、翌年には2枚目となるミックステープ“Comeback Season”を発表した。順調な滑り出しを飾ったドレイクは2009年に“So Far Gone”というミックステープを自身のブログ上で無料ダウンロード形式でリリースし、発表から2時間で2千ダウンロードを記録し話題となった。

 同年には同じく“So Far Gone”というタイトルでブログにアップロードした5曲に加え、新たに2曲を追加したEPをリリース。このEPは初秋に7万3千枚を売り上げ、全米ビルボード200にて初登場7位を記録。その後も売り上げ枚位数は伸び続け、最終的には全米で50万枚以上を売り上げたゴールド・ディスクとして認定され、事実上ラッパー・ドレイクの名を世に知らしめた作品となった。

 2009年にはYoung Money Entertainmentレコード会社と契約。2010年に公式デビューアルバム“Thank Me Later”をリリースした。リリース一週目にして45万枚を売り上げ全米ビルボード200にて初登場1位を記録し、カナダとアメリカにおいてプラチナ認定された。

CNタワーに腰掛けるドレイクが印象的なアルバム”Views”のカバー


 その後も大ヒットを連発したドレイクは2012年には自身のレーベル「OVO Sound」を設立した。現在の地位を確立させたのは2016年にリリースしたアルバム“Views”。このアルバムのカバーには地元であるトロントのCNタワーにドレイクが座っているというものであるため、トロントニアンであれば一度は目にしたことがある方も多いのではないだろうか。そしてこのアルバム自体も全米6週1位に輝く大ヒット作となったのだが、収録曲である“One Dance”は世界15ヵ国のチャートで1位を記録するメガヒットを獲得し、事実上世界でもっとも売れた曲となった。

アーティストだけでなく起業家としての側面を持ち合わせる

2018年はトロントにレストランもオープンした


 ドレイクはアーティスト活動で成功を収めて満足するのではなく、他業界でも積極的に挑戦を続けている。自身のウイスキーブランド「Virginia Black」を立ち上げ、ラッパー初となるレストラン「Pick 6ix」をオープン、さらには自身のファッションブランド「October’s Very Own(OVO)」の立ち上げにも成功している。

お洒落なボトルのウイスキー「Virginia Black」


 「OVO」は元々ドレイクとそのツアーマネージャーであるオリバー・エルカティブ氏が思いついたことで始まった。2012年10月24日、ドレイクの26歳の誕生日に公式オンラインショップをオープンし、2015年にロサンゼルスにてフラグシップストアを開店した。フクロウがモチーフとなっており、メンズのみの展開となっているものの女性でも取り入れやすいアイテムがたくさんある。「OVO」はドレイクのアパレルブランド、というだけに留まらず、様々なブランドや企業とのコラボレーションを行っていて、カナダグースやナイキとコラボを行い大人気ブランドへと成長を遂げている。

数字だけでは計り知れない社会に対するドレイクの影響力

 ドレイクの人気は、CDの売り上げやダウンロード数を見ても明らかだが、その人気や影響力は数値化できない部分でも表れている。

 2016年に発表されたアルバム“Views”の中でドレイクがトロントのことを“the 6”と呼ぶと、若者たちもそれを真似して同じようにトロントを呼ぶようになった。また、2011年に発表したアルバム“Take Care”に収録された“The Motto”という曲の中で彼は“You Only Live Once”という広く知られていたフレーズを“YOLO”と略して歌詞に盛り込んだ。これをきっかけに世界中の若者がこぞってこの略称を使いトレンドとなった。

 このようにドレイクは流行語や話題を発信することで若者の支持を集め、それが彼自身の影響力に繋がっている。そしてその影響力を駆使して自身のビジネスを立ち上げ、次々と成功を収めているのだ。

出身地トロントへの感謝と恩返しを忘れることのない姿勢が地元でも高く評価

 これまでに曲中でトロント愛を直接的にも間接的にも表現したり、トロント関連の流行語を生みだしたりしてきたことや、自身のアパレル・飲食店の本拠地がトロントであることからもわかるようにドレイクはトロントと密接な関りを持っている。それは決してマーケティングの一環だからという理由ではなく、実は彼本人が心からトロントに対して愛や誇りを持っているからこその行動なのだ。

金色でプリントされたフクロウが印象的なOVO


 今年1月には「OVO」ブランドは、トロントに本拠地を置くNBAのラプターズとコラボし、黒と金色のチームユニフォームを発表。このユニフォームは既にいくつかの試合において実際に着用され、そのデザインはファンの間でも好評だ。
 さらに、ドレイクとラプターズは「Welcome Toronto」というプログラムを通じて連携を強めていくと発表している。

 ドレイク率いるファッションブランドOVOのデザインの背景について共設立者兼ドレイクのマネージャーを務めるオリバー・エル・カティブ氏によるとドレイクはどんなビジネスにおいてもまず〝真正性〟を大切にしてきたという。

 ドレイクのありのままの姿のトロントに対する愛や誇りは非常に強いというGlobe and Mailのミア・ピアソン氏は、この関係がとてもユニークであると述べている。トロントという街のブランディングへのドレイクの影響力はとても大きく、トロントは特別に都市のためにプロモーションして観光などに貢献してくれるドレイクという代表者を持っている一方、そのブランディングはドレイクの自身のペルソナに貢献することができ、お互いに強い関係で結ばれているからである。ドレイクのビジネス背景にトロントとの深い関係が常に存在しトロントらしさやその真正性を重要視することで、ドレイクにとってもトロントにとってもプラスな影響を与えていることは確かだ。

 このようにトロントを代表するラッパーとして現代の音楽を作り上げてきたドレイクは、その才能や人気は音楽シーンにとどまらずレコード会社やアパレル、レストラン業、ラプターズアンバサダーなど様々なビジネスを展開し活躍してきている。ドレイクから起業家として学ぶことはたくさんあるが、その成功の裏には彼自身の才能から生まれた影響力だけでなく、トロントへの純粋な誇りや愛情、トロントとの強い関係から派生したトロントニアンを始めとした特に若者との繋がり、スタイル、そして各分野のプロやドレイクを理解したパートナーやチームとの連携が特に垣間見ることができる。