さあ始めよう!エステートプラニングの第一歩|カナダで暮らす-エステート・プラニング入門【第3話】

エステートプラニングを始めるきっかけは、人それぞれ。結婚、出産、別居、病気、旅行など様々です。そんなきっかけも特にないけれど、いつかやらなきゃ、という方は、春先のこの時期に取り掛かることをお勧めします。なぜなら、3月から4月はカナダに住む誰もが思い腰を上げて取り掛かるあの季節…。

そうです、インカムタックスシーズンの到来です。お金関係の書類を集めていっぺんに見直すタックスシーズンは、エステートプラニングを始める、または見直すには最適の時期だからです。そこで、今回は、エステートプランニングを始めたい方を応援すべく、その具体的な準備についてお話します。

どこから手をつければいいの?

①元気なうちになるべく早く

当たり前のように聞こえますが、ご本人にエステートプラニングを始める意志と気力があることが一番大切です。なぜなら、遺言書や、「もしも」のための委任状を作るには、ご本人に一定の法的能力がなければなりません。そして、「もしも」の場面に直面したときではすでに手遅れなのです。ですので、ご自身が元気なうちに、なるべく早く準備をしましょう。 

②財産の現況を把握する

まず、ご自身の財産の現況を把握しましょう。不動産、預金、投資、レジスタードプラン(RRSP、 TFSA、 RESP等)、生命保険、雇用先のベネフィットや年金などの、現在の資産状況、そして、モーゲージ、ラインオブクレジット、クレジットカード、家族間のお金の貸し借りなどの債務の種類も書き出してみましょう。

③財産情報・個人的な情報をまとめる

次に、これらの財産情報を一度まとめて目録を作り、それぞれの財産の種類について、詳細を加えていきましょう。マイホームを例に取ると、不動産の所在地、名義人、モーゲージの有無、モーゲージを組んでいる金融機関名、などです。

また銀行口座であれば、銀行名、支店名、口座の名義人、口座の番号や種類を、生命保険であれば、保険会社名、保険番号、受取人(beneficiary)の名前などを書き出していくといいでしょう。債務についても同じ要領で、誰に何をどのくらい借りているのか書き出します。 

そして、ご自身の個人的な情報もまとめてみましょう。まず、生年月日、出生地、勤務先、婚姻関係、家族構成などです。特に、家族構成については、家族の名前、住所(少なくとも都市名)や生年月日を記録します。また、家族関係に心配ごとはないかを考え、現状を把握することが大切です。

④生前の「もしも」の場合と、死後の財産の行方について考える

このように財産情報と個人的な情報をまとめることは、自分にとって大切な人や、自分で築き上げた財産の内容について再確認するよい機会になります。そして、もしも自分で自分のことが出来なくなってしまった場合に、誰に財産の管理や医療行為の判断をお願いするか、また、亡くなった後に、誰に遺産の管理処分をお願いし、誰に遺産を残したいかのための判断などの希望をおおまかに考えてみましょう。

それでも面倒だと思われる方は…

弁護士の下でエステートプラニングを行う場合、上記のような一連の作業は、コンサルテーション前の「宿題」として、やっておくように言われることが一般的です。また、ファイナンシャルアドバイザーや会計士と一緒に行うこともありますし、「Estate Organizer」と呼ばれる市販や無料のワークブックを利用すると便利かもしれません。

エステートプラニングのための書類は定期的な見直しを

遺言書や委任状は一度作ると一生安心とは限りません。確かにこれらの文書は、新たに内容を変更しない限りずっと有効です。しかしながら、ご本人の財産の状況や、別居や再婚など、夫婦・家族関係の変化、委任状代理人や遺言執行人の健康状態などによって、内容を変更する必要が出てくることがあります。ですので、ご自分の希望が現実に照らし合わせて反映されているかを確認するため、2~3年ごとに遺言書と委任状の内容をチェックしてみましょう。さらに、遺言書や委任状だけではなく、生命保険やレジスタードプランの受取人の見直しも忘れないようにしましょう。 

いかがでしたか?是非、春のタックスシーズンの時期を有効に活用し、エステートプラニングを始めてみてください。

【おことわり】このコラムは、オンタリオ州法に関する一般情報の提供のみを目的とし、著者による法的助言を意図したものではありません。


スミス希美(のぞみ)

福岡県出身。ミシサガ市パレット・ヴァロ法律事務所、オンタリオ州弁護士。中央大学法学部卒業後、トロント大学ロースクールに留学しカナダ法を学ぶ。相続・信託法専門。主に、遺言書や委任状の作成、信託設立などのエステートプラニングや、プロベイト等の相続手続を中心とした法律業務に従事。日本とカナダ間で生じる相続問題に詳しい。