オンタリオ州の相続手続き「プロベイト」って何?|カナダで暮らす-エステート・プラニング入門【第9話】

 カナダやアメリカ、イギリスなど英語圏の国には、「プロベイト(Probate)」と呼ばれる相続手続きが存在します。この聞きなれない未知の言葉、プロベイトとは、一体何なのでしょうか。

プロベイトは裁判所での相続手続き

 プロベイトとは、オンタリオ州を含むカナダなどの英米法体系の国や地域に共通する、裁判所での主要な相続手続きです。オンタリオ州では、「Certificate of Appointment of Estate Trustee (遺産管財人任命証書)」を取得する手続きとして知られています。

 プロベイトには大きく分けて二種類あり、遺言書がある場合と、無遺言の場合に分かれます。遺言書がある場合は、遺言書の有効性を裁判所で確認・登録し、無遺言の場合は、遺産管財人を任命することになります。今回は、遺言書がある場合のプロベイト手続きについてご紹介します。

遺言書のプロベイトが必要になる場合

 プロベイトとは、遺言書の原本を裁判所に提出し、遺言書の有効性を確認・登録する法的手続きのことを指します。なお、すべての遺言書にプロベイトが必要であるわけではありません。通常、故人の預金や投資を保有する銀行や、不動産の登記を管理するオンタリオ州土地登録局(Land Registry Office)など、第三者機関の要請により、プロベイトの手続きが必要かどうか決められます。

 なお、不動産については弁護士に相談し、登記情報を確認すると、プロベイトが必要な不動産かどうかがわかります。また、預金や投資などの金融資産については、各銀行で、残高の大きさによりプロベイトを要するかどうかの基準額が設けられており、直接問い合わせる必要があります。ちなみに、投資や不動産などの、比較的大きな額の遺産を扱う場合には、プロベイトが必要になります。

遺言書のプロベイトが果たす役割

 プロベイトにより、裁判所は、①残された遺言書が、故人の生前に作った最後の遺言書として有効であること、そして、②遺言執行人が法律を遵守し、遺言内容に基づき遺産を管理する法的権限を持つことを認証します。

 遺言執行人は、プロベイト申請の際に、遺言書の原本、死亡証明書、遺言者、相続人、遺産価値、及び、遺言執行人の情報などを記載した必要書類を添えて、管轄の裁判所に提出します。プロベイトの待ち時間は、管轄の裁判所の込み具合によって異なり、平均的に3ヶ月から6ヶ月かかります。

プロベイト手続きの完了

 裁判所からプロベイト完了を確認する証書が発行されると、遺言書は裁判所に登録され、公的知識となります。そして、裁判所により遺言執行人の法的権限に認証が加わることで、銀行をはじめ、第三者機関は遺言執行人を正当な遺言執行人として、安心して取引することができます。ちなみに、よくハリウッド・スターの遺言書の内容が公開されて話題になるのは、このプロベイトの手続きを踏むことにより、遺言書が公的知識となるためです。 

 プロベイトが完了すると、遺言執行人による不動産の名義変更や売却、投資の現金化や預金解除などが可能になり、遺言執行業務が本格的に開始します。

プロベイト税(遺産管理税)

 なお、このプロベイトの手続きには、通称「プロベイト税」(Estate Administration Tax-遺産管理税)と呼ばれる、遺産価値の約1.5%の州税の支払いが、プロベイト申請時に義務付けられています。また、プロベイトには時間と、手続き準備のための弁護士費用がかかるため、不人気な手続きではありますが、多くの遺言執行人には避けては通れない手続きでもあります。

プロベイト税の対象となる財産

 基本的に、故人の単独の名義になっている、金融資産、オンタリオ州所在の不動産、及び、私財品(車・宝飾品等)は、遺産(Estate)を構成し、プロベイト税の対象になります。ちなみに、銀行口座や投資については、日本などカナダ国外にある財産もプロベイト税の課税対象になります。

 一方、受取人(Beneficiary)が指定された生命保険や、RRSPやRRIF、TFSAなどのレジスタードアカウントや、生き残った共同名義人に所有権が移譲するタイプの共有名義の銀行口座や不動産(Joint Tenancy with Right of Survivorship)は、財産の受け取りに遺言書が必要ないため、プロベイトの対象外です。

遺言内容を実現するために

 このように、プロベイトは少々厄介な手続きであることは否めません。しかし、プロベイトによって、遺言書の有効性を確認し、遺言執行人の保護を図るとともに、遺言執行人が遺言内容を忠実に実現することを促す、重要な法的手続きといえます。

【おことわり】このコラムは、オンタリオ州法に関する一般情報の提供のみを目的とし、著者による法的助言を意図したものではありません。


スミス希美(のぞみ)

福岡県出身。ミシサガ市パレット・ヴァロ法律事務所、オンタリオ州弁護士。中央大学法学部卒業後、トロント大学ロースクールに留学しカナダ法を学ぶ。相続・信託法専門。主に、遺言書や委任状の作成、信託設立などのエステートプラニングや、プロベイト等の相続手続を中心とした法律業務に従事。日本とカナダ間で生じる相続問題に詳しい。