市場を歩く 野菜・フルーツ特集

実りの秋 収穫の秋
おいしいものいっぱいのカナダの秋
野菜・フルーツ特集

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(左)エトビコに位置する卸売市場 (右)OFTBの Nicholas理事長と農場オーナー

10月に入るとトロントもすっかり秋模様。オンタリオ州全体が紅葉で覆われてカナダの大自然を感じさせてくれるシーズンが到来しました。
秋といえば、なんといっても食欲の秋。実りの秋・収穫の秋とも言われ、野菜やフルーツがとても美味しい季節です。今回の特集では、カナダの野菜やフルーツにスポットを当てて、読者のみなさんにTORJAの秋を味わって頂きたいと思います。

普段私たちの食卓に並ぶ野菜や果物は生産者から直接購入できるファーマーズマーケットや宅配サービスを除くほとんどのものが卸売市場であるオンタリオフードターミナルを経て小売店に届く。カナダ最大、北米で3番目の規模を誇るオンタリオフードターミナルにて市場を管理するOntario Food Terminal Board(OFTB)のジェネラルマネージャーBruce Nicholasさんにお話をうかがった。

OFTBの概要

1954年創業。州農業省の元、独立した運営組織として、40エーカーの卸売市場の管理維持を行う。現在の流通範囲は北はフォートアルバニー、南はウィンザー、西はサンダーベイ、東はニューファンドランドにまで及ぶ。1日当たりの流通量は5.5百万トンで、5000以上の登録仕入業者、21の倉庫、400の販売農家、50の事務所を取りまとめる。職員数は36名だが、卸売市場に関係する仕事をする少なくとも10万人以上の雇用に貢献していると言われている。市場は一般公開されていない。

このステッカーがある車両のみ入場可能

このステッカーがある車両のみ入場可能

入場ゲート

入場ゲート

(左)今年はりんごが豊作!! (右)日曜も 営業している卸売市場

(左)今年はりんごが豊作!! (右)日曜も営業している卸売市場

— OFTBの役割について教えてください。

私どもは言わば大家のようなものです。市場を利用するテナントである倉庫や配送会社、仕入に来る小売業者、野菜・果物・植物を売りに来る農家からの会費で運営され、輸送や売り買いがより効率よく安全に行われるように施設の管理やメンテナンスを行っています。

— 市場が最も賑わうのは何時ごろですか?

火曜と木曜の朝4〜8時です。正式な営業時間は平日の4〜14時、日曜の6〜14時ですが、ゲートは24時間自動で操作されますので、早い販売農家は夜中の0時から来て準備をします。

— 価格はどのように決められるのでしょうか?

証券取引所のように需要と供給で決まります。売り手、買い手と生産量に左右されます。売り買いは競りではなく、仕入者が個別に農家とやりとりします。当然のことですが、日ごろから取引のある相手、取引量の多い相手だと値段が安くなります。気候による影響も大きく、例えば今年は春先に気温が急に下がった時期がありましたが、その後は特にじゃがいもや夏野菜の値段が上がりました。その時に手に入るものを安く多く仕入れたい場合は遅い時間帯に訪れ、鮮度や品質にこだわる小売店やレストランオーナーは朝早く市場を訪れるという傾向があるようです。

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(1)ハロウィーンが近づいている (2)この日の卸売価格は1ダースで12ドルという安さ! (3)カラフルなトマト

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(1)自慢のじゃがいもを背にする農場オーナー。倉庫で保存すると1週間に2%ずついもが縮んでしまうそう (2)カナダNo.1 グレードのシールが張られたパプリカ。No.1と売り出すために専門機関の品質検査を毎月受けている (3)人気のHeirloom(古来種)トマトはユニークな色と味が特徴 (4)陽気な荷運びの人たち

— 同じ野菜・果物でも大手スーパーと個人経営の八百屋では値段が全くことなることがありますが、これはなぜでしょうか?

市場では値段交渉ができますし、同じ商品でも複数の農家を比較して買うことができます。メトロ、ソビーズ、ロブローズ等の大手チェーンは社内で物流センターを所有し、倉庫代わりに使っているためその維持費や輸送費用が上乗せされています。大手チェーンは自社の物流センターで在庫が切れたときに卸売り市場に買いに来ます。ハイランドファームやラバ等規模の大きいスーパーでも自社倉庫を持たずに毎日市場へ来ています。小規模小売店は多くの場合、オーナー自らが車を運転して買いに来ますので、輸送にかかる費用も最低限に抑えられます。毎日買いに来ることで新鮮なものが買えますし、在庫を保存しておくスペースやコストがかかりません。ちなみに登録のある仕入業者の9割は小規模小売店です。

— 取り扱われる商品の鮮度についてお聞かせください。

前日に農場で収穫され、夜中に市場へ届き、翌日の午前中に小売店へ輸送され、午後には店頭に並びます。売れ残った商品は市場内の倉庫へ預けて翌日に販売する農家もあります。どうしても売れ残った商品は月、水、金曜日にフードバンクが取りに来ます。フードバンクで活用される分も含めて、年間の廃棄率は5%以下となっています。

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(左)包装された状態で売られている花 (右)小売店の オーナー自ら買い付けにくることが多い

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(左)販売農家のブース前に並ぶ人たち (右)販売者の後ろで配送手配をする買受人

— 取引される地元産の食材はどれぐらいの割合を占めていますか?

正確なデータは把握しておりませんが、年間の全体平均では30〜35%だと思います。5月〜10月半ばに農家が直接販売しているコーナーは95%以上が地元産ですが、年中営業している倉庫では、アメリカや南米からの輸入品が多く占めています。

— 市場の過去を振り返ってどのような変化がありましたか?

仕入業者については、以前はイタリア系移民が中心でしたが、今では経営者の顔ぶれは中国、韓国、インド、アラブ、ロシア系と様々です。マンゴー、キウイは希少価値のある南国フルーツでしたが、今では年中手に入るようになりました。トラック輸送の効率化がめざましく、アメリカや南米からの輸入品でも船や飛行機で流通の大きな拠点であるフィラデルフィアを経て、半日でオンタリオに配達可能になりました。今では毎日大量のトラックがアメリカとの国境を越えています。また、共働きの家庭が増えるにつれ、洗ったり切ったりする手間の省けるプリカット野菜のパッケージが多く売られるようになりました。メディアの影響も年々強くなっています。例えばケールが栄養価の高いスーパーフードとして紹介された後はケールの需要が一気に増えたため、値段は10年前より安くなっています。また、炭水化物をカットしたダイエットの流行後にジャガイモの値段が下がったこともありました。

— お仕事を行う上で難しい点、やりがいのある点についてお聞かせください。

市場の利用者のニーズに応じて設備をアップグレードさせていくことが最も難しく、またやりがいでもあります。例えば購入した商品をトラックに積む場所は外気にさらされていたため、雨の日や冬の間は作業がしづらいという苦情が仕入業者から届いていました。市場を通常営業させながらリノベーションを行ったため、期間中は不便でしたし、安全確保の面で大変気を使いました。改装後は作業効率がアップしていると報告を聞きます。今後も利用者とのコミュニケーションを大切にしながら、快適な市場づくりに努力を重ねてまいります。

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(左)冷暗倉庫の中は3度前後に保たれている (右)保存ができる玉ねぎだが、加ドルの安さを背景にアメリカからも 買われている

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(左)倉庫と市場をつなぐ通路は歩行者の安全のために作られた (右)飼料用と違い、カナダのスイートコーンは遺伝子組み換えではないそう