ネイソンズ・シーガルLLPにて「家族法セミナー」が開催。カナダにおける国際結婚・離婚の法律問題とアドバイスを学ぶ|メルモが行く!

トロント日系コミュニティを突撃取材

 オンタリオ州からスペシャリスト弁護士として認定を受けているケン・ネイソンズ氏と、所属弁護士のアナスタシア氏がスピーカーを務めた家族法セミナーに参加した。参加者は皆、特に法律のバックグラウンドのない一般の方々のため、難解な法律用語を使用されず、分かりやすい説明とともに、日本・アメリカでの離婚ケースにも詳しい同事務所でパラリーガルを務め日本人の国際結婚・離婚に詳しい野口洋美氏による日本語での補足も入り、理解を助けた。

 まず、大前提として、日本では法律に関する相談であれば、広く「弁護士事務所」に持ち込むイメージがあるが、カナダでは、法律の専門分化が非常に進んでおり、最初からその法律を専門に扱っているファームのドアを叩くのが一般的。ケン氏は家族法を専門とする弁護士で、さらにオンタリオ州に約4万人登録のある弁護士の中から、この家族法の「スペシャリスト弁護士」の認定も受けている。

■「Child Support(子供への経済的サポート)」と「Spousal Support(配偶者への経済的サポート)」

 今回のセミナーでは、特に離婚の分野で長い経験を持つ同氏より、Divorce Act(離婚法)に基づく「Child Support(子供への経済的サポート)」と「Spousal Support(配偶者への経済的サポート)について、ケーススタディなども挙げながら説明を受けた。参加者には、概要(ガイドライン)や判例をまとめた2冊のブックレットが用意され、計2時間、様々なケースの検討を行った。

 「Child Support」は子供にかかる資金を分担する双方が継続して親としての義務を果たす目的のもの、そして「Spousal Support」は、夫婦ないしパートナーが、その関係を解消したとしても、ひとまずは同程度の生活水準が保たれるよう、所得の高い方から低い相手へと支払われるもの、というように、この2つの経済サポートが目指す目線はあくまで家族の構成員の今後の生活にかかる資金の負担という部分に焦点が当たっている。

 「Child Support」に関しては、親の所得、居住の有無、子供の年齢などを踏まえたマトリックス(表)になっており、条件を入れると計算してくれるアプリケーションがあるため、どちらがどの状況下で、どれだけ負担するのか、ということが大変分かりやすく公平性も高い。支払いが行われない場合、給与や銀行の差し押さえができるなど、システム化がされており子供の養育を受ける権利がきちんと守られるようになっているという。Spousal Supportに関しては、双方の同意が基準とはなるが目安となるガイドラインが存在しているため、ある程度の予想を持つことができる。

“離婚法はとてもstraightforwardだから”

 印象に残ったのは、ケン氏が繰り返していた、「離婚法はとてもstraightforwardだから」という言葉。これら2つの経済的サポートについて、日本の調停裁判などとは異なり、離婚に際しての原因・経緯、そういったものを加味して総合的に判断されるのではなく、上記の通り、マトリックスやガイドラインに沿って粛々と進められるイメージを持った。「慰謝料?そういう考え方はカナダのDivorce Actにはないよ」というケン氏のコメントもあり、日本人でありながらカナダで結婚した身としては改めて、日本との違いは非常に大きいと感じた。

 とは言え、全てが法律に基づいて杓子定規にうまく割り切られるものではなく、セミナー内では、「どこを持ってフェアとするか」の判断が難しいケース(例:レストラン経営をしており片方の配偶者は所得は少ないがこのビジネスの成長に大きく貢献していた場合の分配、片親が裕福な実家のサポートを受けて子供を育てられる状況で配偶者が満額のChild Supportを支払う場合の生活水準の不平等)なども踏まえ、一刀両断にできない法律の適用の難しさについても学んだ。

■「Separation Agreement(別離契約)」

 基本的に離婚の場合、婚姻中の財産は半分になるが、離婚にあたっては、「Separation Agreement(別離契約)」という書面にて、財産の分け方、上記Supportの内容について記載して同意する。若い時の結婚であれば、お互いに財産も少ないため勢いで、ということも多いが、もし家などお互いに財産がある状態で結婚する場合、結婚前にプレナップ(婚前契約)を取っておくと後で揉めることが少ない。こういった「契約」という考え方について、日本人はなんとなく「冷たい」「離婚を前提で話すなんて失礼」と感じることが多いのではと思う。

 ただ、契約書は、婚姻関係から生じた主観情報をできるだけ排除して、自立した2人の大人として約束をする、そしてそれに責任を持つことであり、弁護士はそのサポートをする立場にあると考えると少し前向きに捉えることができそうだ。

 セミナー終了後の質疑応答&感想では、30代~50代の参加者が、「結婚する前に知るべきだね」「今から結婚する若い方にぜひ!」と口を揃えていた点も印象に残り、私を含めてみなさんにとってとても有意義な機会だったと思う。

※上記は、セミナー参加者の感想であり、家族法に関するアドバイスではありません。家族法に関するのお問い合わせは、ネイソンズ・シーガルLLPまで、直接お願いします。

海野 芽瑠萌

 グローバル人材の育成、コミュニティ貢献を理念とした留学エージェントBRAND NEW WAYのカナダ統括ディレクターとして、留学生・ワーキンホリデー・進学生の現地サポートを行う。コミュニケーションツールとしての英語の定着と、その活用を目的とした語学留学の提供を目指す。