グルメの王様のおしゃれ美食道 第31回

「お粥は心のよりどころ」

gourmet-king-31-01

粥店太皇

gourmet-king-31-02

明るい店内

gourmet-king-31-04

牡蠣の甘辛炒め

gourmet-king-31-03

お粥と甘い油條

gourmet-king-31-05

フランス式ステーキ

gourmet-king-31-06

香港あんみつ


トロントの中国料理の世界で必ず登場するのが「粥(ツォッ)」です。極端な表現を使うと中国食文化に無くてはならない存在が「粥」ですね。少し日本びいきの香港の人達は、自分達が生まれた時から食事として親しんでいるお粥は、日本では一般的に病人食であることを知っていて文化の違いを面白おかしく話し合うことがよくあります。

今お粥と言いましたが、勿論人によっては、発音は違うものの「粥」と称することもあるでしょう。粥は中国料理の専売特許かと言うとそうでもなく、我が国でも京都を始めとする超一流料亭でのお粥などは、長い伝統の下独特の高級日本料理文化でもあります。京都400年の歴史を誇る瓢亭の朝粥は永遠の憧れですね。

トロントの中国料理店を見渡すと、いわゆる北京・上海・広東・四川の一般的な四大料理の他に、今回ご紹介するお店のような「粥」を屋号に入れているお店が数多くあります。

私がよく接待に使う中国料理店というと、残念ながら近年閉店してしまいましたが、Bayview Villageの燕京でした。どういう訳か大昔から同じものをオーダーする性格で大学時代、夏休みと冬休みを除く登校日のお昼は毎日、三年生の時はうなぎ屋の「鰻重」。四年生の時は、洋食店の「オムライス」でした。ご案内のように長年いわゆるムニュ・デグスタシォン・スタイルで既にメニューが決まっている美食会を主催してきたので、あまりメニューをみながらあれこれと選び悩むことをしません。黙って座ればピタリと当たるよろしく次から次と好きな物が目の前に並べられる幸せを味わったのは、東京の従兄弟の寿司店でした。これぞ王様気分ですね。

粥のお店「太皇・Congee Town」は、Scarborough の中堅モールWoodside Square(Finch北 / McCowan 東)にあります。ここは中々良い味の料理が揃っている上、我々日本人にとってあまり違和感の無いメニューが多いこと、それが接待の理由となっています。

お粥屋さんという看板を見ただけでお粥しかないのでは、と勘違いする日本人は、今では多くないと思いますが、粥が名物であることには違いないものの、お店の形態として他の料理も多く揃っているのが現状です。

始めにお粥をとりました。当然種類が物凄く多いのですが、これも定番の牛挽肉入りの小さめの物です。お供はこれまたお馴染みの「甘い油條(ユーティァオ)」。メインの料理はピリッと辛い蜂蜜入り牡蠣の炒め物。そして名前がユニークな「フランス式牛ヒレ肉のステーキ」。ステーキと言っても大判ではなく、ここでは細かく切って出されます。人数によっては、好物の伊麺が入ったロブスターの炒め物を注文することもあります。どちらもご飯が、いやお粥がすすみます。

楽しみなデザートは、このお店のオリジナルで中国語のメニューには秘密の「秘」の字があり、ちょっとワクワクしてしまいますが、オリジナルの名に恥じないバランスの良い味でした。初めてこのデザートを目の前にした時、思わず「あっ香港あんみつ」と言ってしまいました。楽しい食事にもってこいの人気店です。


gourmet-king-profile辻下忠雄
エッセイスト・生活礼儀情趣導師(生活開発プロデューサー)
1947年東京大田区に生まれる。成城学園出身。フランス料理界、ナイトクラブ界、中国料理界の大御所として多くの逸材を育てた父と、料亭経営の傍ら歌舞伎の舞台にも立った祖父の下で育つ。美食歴59年究極の美食家。紳士の中の紳士。ベストドレッサー。生活信条は「明るく・楽しく・仲良く」超楽天主義者。トロント在住。