グルメの王様のおしゃれ美食道 第48回

「天皇の料理番」

清楚な店内

清楚な店内

名物メンチカツ

名物メンチカツ

最高級ハンバーグ

最高級ハンバーグ

綺麗なサラダ畑

綺麗なサラダ畑

おつな味ブラックカレー

おつな味ブラックカレー

大判クレームブリュレ

大判クレームブリュレ

プリンアラモード

プリンアラモード

昨年「天皇の料理番」というテレビドラマが話題になりました。前にも同じ題名のドラマを何度か目にしたことがありましたが、今回のそれは大変優れたドラマに仕上がっていたと思います。

天皇の料理番とは、秋山徳蔵翁を指します。長年に渡り昭和天皇に仕えたことからそう呼ばれるようになりました。申し上げたとおり何度もドラマに取り上げられる料理人は秋山翁をおいて他にいません。明治42年その時代には容易ではなかった本場パリでの修行と活躍ぶりは広く知られるところですが、私としては子供の頃より父が再三「東洋軒のキャプテンは秋山さん。」と話していたことから、東洋軒の秋山翁という印象を強く持っていました。

私の日本に於けるフランス料理の贔屓はサリーワイル氏のニューグランドと秋山翁の東洋軒であると公言するように、東洋軒には特別な親しみをもっています。1985年、我が美食会で当時東京は神宮前の日本青年館にあった東洋軒でお世話になったことがありました。今思うと少々図々しいお願いでしたが、父と懇意だった富田総料理長に宮中の晩餐会のような素晴らしい料理を作って頂きました。勿論それは秋山翁のメニューの再現でもありました。流石に人気があり多くの友人が参加してくれました。

長年美食会をもようしてきましたが、料理を前に女性の皆さんから悲鳴が上がったのは後にも先にもこの時だけです。それは…メインである鶉の上に鶏のとさかが乗っていたからです。私もこのような高価な食材を使って下さるとは思っても見なかったので、そういう意味ではそれこそ心の中で嬉しい悲鳴を上げました。富田さんの厚意に大感激でした。

東洋軒にはまだ古いビルだった当時からよく通いましたが、ウサギのグラタンや焼きアイスクリームなど、本格的なフランス料理が、信じられない安価で味わえた貴重なお店でしたね。

さて現在の東京の東洋軒は赤坂にあります。元赤坂のビル、赤坂Kタワーの一階にあるお店に昔を懐かしみ出かけて見ました。

コース料理をお願いしたのですが、まずオードブル的に登場したサラダは、産地を厳選した見事な料理で、日本人ならではの本当に繊細で色彩感覚豊かな一品に感心しました。こういう料理を始めに供されるととても爽やかな気分になります。

次に当店の名物でもある、古き良き時代が蘇るメンチカツ。お惣菜と間違われそうですが、一流のレストランのメンチカツは、流石に奥深い味がします。そしてコースの途中に出されるこれも名物のブラックカレーは、量も少なく多くの料理を味わってみたい人への配慮が感じられますね。これまた昔懐かしい味でした。そして圧巻は松坂牛100%のハンバーグステーキ。まず最高級ハンバーグでしょう。

この料理に注目したのは、松坂牛だからではなく、昔々父に六本木の最高級店キャラバンサライに連れて行って貰った時、総料理長だった秋山翁の息子さんである四郎さんに父が注文したのが、ハンバーグステーキだったからです。超高級な食材で知られるお店で、しかも幻の天才料理人と謳われた四郎さん直々に何故父がハンバーグを注文したか結局尋ねませんでした。

デザートはお馴染みクレームブリュレ。大きな器で大好きなニューヨークのル・サークを思い出しました。それとこれも昔懐かしいプリンアラモード、正に洋食の味。古き良き時代を心から感じさせてくれた名店の素晴らしい料理に感謝です。


gourmet-king-profile辻下忠雄 エッセイスト・生活礼儀情趣導師(生活開発プロデューサー) 1947年東京大田区に生まれる。成城学園出身。フランス料理界、ナイトクラブ界、中国料理界の大御所として多くの逸材を育てた父と、料亭経営の傍ら歌舞伎の舞台にも立った祖父の下で育つ。美食歴59年究極の美食家。紳士の中の紳士。ベストドレッサー。生活信条は「明るく・楽しく・仲良く」超楽天主義者。トロント在住。