銀杏・木村オーナーシェフのカナダストーリー Vol.10 1984年老舗レストランのオープン

ginko01
トロントに30年以上の歴史を刻む銀杏レストラン。それは木村オーナーシェフの代名詞とも言える名高いレストランだが、実はそれと同時期に立ち上げた日本食レストランをご存知だろうか?トロントのベッドタウンであったミシサガに着目し、日本食文化を根付かせたいという木村さんの願いから建てられた姉妹レストランがあった。今月号はそのレストランをご紹介しよう。

Vol.10 ミシサガの日本食レストラン『楓』

ミシサガでは初の日本食レストランとなった『楓』の開店時には、当時のミシサガ市長Hazel McCallion氏が直接祝辞に訪れるほど注目を集めていた。そのオープンのきっかけは、日系企業と多くの関わりを持っていた木村さんならではの発想とも言えた。

「銀杏レストランをオープンしてしばらく経ってから、笹屋をパートナーに譲ったのです。その頃ぐらいに、それならもう一軒やっても良いかなと考えました。(トロントの)ダウンタウンでも良かったのですが、当時日本から来ていた多くの出向者から“ミシサガにも日本食レストランが欲しいですね”という声を聞いていたので、だったらミシサガにはまだ一件もないし、当時のミシサガ市長が日系企業に力を注いでいたこともあり、ちゃんとした日本食レストランがあっても良いのかと思い、計画しました」と、木村さんは語った。


そんな木村さんの思いを乗せ、1989年ミシサガに『楓』がオープンした。元々あったレストラン跡地を改造し、木村さんのこだわりを随所に取り入れた約80席のレストランは、木村さんの願い通り、開店当初から日系企業の出向者たちで連日賑わっていたそうだ。

「どちらかといえば、楓はファミリー向けにオープンしましたが、日本食に飢えていた企業者や駐在員で昼も夜も溢れかえっていましたね。平日はそうでもなかったのですが、週末は予約なしでは入れないほどでした。当時はダウンタウンに行かないと日本食は食べられなかったので、地元で日本食が食べられる、飢えている人が多かったのだと感じましたね」と、木村さんは当時を振り返った。

他にも木村さんは、日本の食文化をミシサガの地元の人たちに知ってもらうために、しっかりとした日本食レストランを作りたかったのだと語ってくれた。ミシサガにこんなに良い日本食レストランがあるのだ、と知ってもらいたかったのだそうだ。

「ただ、本当は地元のカナダ人のお客さんにも来てほしかったのですが、当時はまだそこまで日本食は一般的ではなかったので、なかなか難しかったですね」と、木村さんは当時を懐かしんでいた。