ファンタジー作家 姫川明月さん インタビュー

人気ゲームタイトル「ゼルダの伝説シリーズ」のコミカライズでも名が知られる、今年で活動歴30周年を迎えるファンタジー作家 姫川明月さん インタビュー
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TCAFにゲストとして登場した姫川明月先生 (左:長野Sさん/右:本田Aさん)


任天堂の人気ゲームタイトル「ゼルダの伝説シリーズ(以下:「ゼルダ」)」のコミカライズを手掛けたことで日本、そして世界でも大きく人気を集めている姫川明月。姫川は本田A(以下:本田)と長野S(以下:長野)の二人組の漫画家ユニットで、1991年のデビュー以来、それぞれの持ち味を融合させて二人で組み仕事を続けており、「ゼルダの伝説シリーズ」のほか、ドバイ発アラビア語漫画「GoldRing」、「シートン動物記」、「日本の歴史」、また動物と人の融合や人外をテーマとして独特な世界観を得意とする漫画を描いている。TCAF期間中に行ったサイン会には子供を中心に多くの人が集まり、またジャパンファウンデーションで行われた講演会では、プロジェクターを用いながら聴講者の前で実際に絵を描くなど、ファンたちの心を鷲掴みにしていた。彼女たちにイベント開催前日の金曜日にお話を伺った。

お二人は今回がはじめてのトロントですか?

長野:カナダ自体がはじめてです。街の印象というと、思ったよりも歴史的な古い町並みが多いように思いました。
本田:趣のある建物と近代的なビルが混ざっていて、ロケーションに欲しい風景じゃないかなと思っていて、ぜひ写真を撮って帰りたいなと思っています。道の左右にどんと高いビルが並んでいて、絵的にいいショットが撮れるなと思いながら眺めていました。カナダは私たち世代にとって「自然豊かな国」だという印象が強く、若い頃に最初に憧れた国でした。
長野:一度行ってみたいと思っていた国でしたので、今回訪れることができて嬉しく思います。

このようなイベントを通し海外のファンたちと触れ合うことは、作品に影響を与えますか?
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イベントでプリジェクターを用いて「ゼルダの伝説」の 主人公・リンクを聴衆の前で描いた姫川先生


本田:元々私たちは日本では変わった立ち位置の作家でして、日本で仕事をしながらも、どこかに違和感を感じながら、デビューから27年間、創作活動をしてきました。ですが、2010年のドイツのイベントで初めて海外に来たとき、「良いものは良い。ダメなものはダメ」という、非常にストレートではっきりとした海外の価値観を知りました。そしてその時、自分たちが今まで日本で抱き続けてきた違和感は、逆に海外の人たちにはノーボーダー感を与えることができる、非常に受け入れられやすい作風だということに気づくことができたのです。
後から知ったことですが、海外ではマンガよりもアニメの方がなじみがあり、アニメのような画風である私たちの作品は海外で非常に有効なようで、さらに「ゼルダ」という人気のゲームタイトルを手掛けたということで、非常にすんなりと受け入れられたようなのです。
はじめてのドイツでの海外イベントで、海外のみなさんが喜んで読んでくれているということを目の当たりにし、私たちの居場所が世界にあるのだなということを知った瞬間でした。海外のイベントに参加してたくさんの方と触れ合ったことで、ものすごく勇気と未来をもらえましたね。表現の可能性が外の世界へと延びていく、これからがおもしろいのだろうなと思います。「ここまでやめなくてよかったね」という感想ですね。

長野:「ゼルダ」が翻訳出版されたときに、海外からのメールもたくさんきたのですが、文章と実際にその人の顔を見るのとでは違いますから、どれくらいその国で盛り上がっているかというのは、その国に行ってみて初めて実感できるものだと思いましたね。私たちはデビュー前からコミケ(コミックマーケット)に出ていて、アマチュア時代から読んでくれている人の顔を見ながらずっと創作してきたので、その人たちの反応などを自分たちで確かめるというのは徹底してこれまでやってきたように思います。まだ途上ですけど、ようやく光が見えてきたかなという感じで、もう少し創作活動を続けていきたいなと思っています。

二人組の姫川先生ですが、どのように創作をされているのですか?

長野:私たちはキャラクターはそれぞれ分担して描いているのですけど、最初のイメージ出しなどでは二人で話し合って、編集者に説明するためのアイデアの書き出し作業などは主に私がやって、実際に紙に絵を描くときには二人で描いています。作品によってそれぞれ担当する比重なども変わりますが、「ゼルダ」の主人公・リンクなどは彼女(本田)が描いています。
本田:彼女(長野)は子供の絵が、私はティーンが得意だったりするので、感覚的なものですが、どちらかがトータルイメージをプロデュースするという流れで、作品によって主導する人間が変わってきます。

お二人での創作はどのようにしてはじまったのですか?

長野:二人とも石ノ森章太郎先生の「サイボーグ009」のファンクラブに入っていて、ファンクラブの会員投稿のイラストカットで作られる会報上で、お互いの絵を見ていました。私が中学生で、彼女(本田)が高校生だった時、一年に一回行われているファンクラブの集会で彼女とはじめて対面。それぞれお互いの絵が好きでしたし、ある友人の「二人の合作が見てみたい」との提案に、「楽しそうだからやってみよう」ノリで合作を始めたのがきっかけです。それが1987年、今年で二人で活動をはじめて30年を迎えました。
本田:実年齢ではかなり年齢を重ねましたが、気持ちは永遠の27歳(笑)気持ちが老けるとやはりマンガは描けなくなってしまうので、肉体年齢ではなく精神年齢でやっています(笑)

日常的に若い世代の趣味・嗜好をキャッチする工夫はされていますか?

本田:今ではツイッターなどで若い読者たちともつながっているので、そういう意味では昔のように彼らとの距離は遠くありません。ですが、私たちは勉強はさせてもらっても、ファンに媚びて自分たちの作品を変えるということはしません。描く人間は流行りを作っていく、引っ張っていく人間ですから、ファンの嗜好に合わせてというのももちろん必要ですが、あまりやりすぎてはいけないことだと思いますね。

これからの創作にあたっての目標はなんですか?

本田:「ゼルダの姫川」ではなくて姫川的ゼルダと言えるオリジナル作品を描いていきたいですね。そして、世界へとダイレクトに自分たちの作品を配信していくという形にシフトしてきています。日本に限らず、世界中で日本のマンガを描いていきたいです。日本で日常ものを描いてしまうと世界基準ではなくなってしまいますが、自分たちがそういった日常生活に左右されないファンタジーを得意とする作家だったということはこれからの強みだと感じています。

 

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『ゼルダの伝説〜時のオカリナ』©姫川明

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『ドギーマギー動物学校 ④動物園のぼうけん』©姫川明月


姫川 明月(ひめかわ あきら)

本田Aと長野Sの2人組の漫画家。1991年少年サンデー「コミックグランプリ」で準グランプリ受賞にてデビュー。その後それぞれの持ち味を融合させ二人で仕事ごとにローテーションを組み仕事を続ける。空気感を伴う世界観とそこに生きる人や動物や自然、「生命力」を描き出す事を得意とする。一見古風な作風だが、描く漫画は年代や時代を問わない普遍的なテーマや王道ものが多い。2011年より今までの流れの仕事を姫川明、より個性的なオリジナル作品を姫川明月とPNを使い分ける。姫川明として「ゼルダの伝説シリーズ」ドバイ発アラビア語漫画『GoldRing』「シートン動物記」「日本の歴史」など、姫川明月として動物と人の融合や人外をテーマとして独特な世界観を得意とする漫画を描く。
Akira Himekawa Official Site:www.himekawaakira.com