「通訳者の仕事は秘書のような役割」メジャーリーグ青木宣親選手の通訳 稲治さん|トロントのカリスマ美容師 Hiroさん×稲治コウスケさん | 対談【中編】


様々な縁があり、大学で専攻した内容とは全く違う分野であるメジャーリーグの日本人選手の通訳者となった稲治さん。青木宣親選手や斎藤隆選手の通訳として8年間メジャーリーグの世界で仕事をしていた彼に、前編ではメジャーの世界に入るきっかけやヒロさんとの出会いについて振り返ってもらった。中編となる今回は通訳という仕事かつメジャーリーグという特殊な世界での実際の業務内容や仕事の心得などをプロフェッショナル同士での中で気を付けていること等を語り合ってもらった。

メジャーリーガーの通訳者の仕事は、秘書のような役割がとても重要

Hiro:今まであまり聞いたことがなかったのですが、メジャーリーグでの通訳の仕事とはどのようなことをするのでしょうか?

稲治:チーム内でのコミュニケーションや取材のための通訳はもちろんですが、担当選手のプライベートのサポートもとても大事になってくる仕事ですね。メジャーの選手の通訳の仕事は3~4割が野球に関するものですが、残りの6~7割は毎日の食事や日々の生活の中での秘書のようなサポートになってきます。ですので、ヒロさんのようなトロントに詳しくて顔の広い方と知り合えたというのは、おすすめのレストランや街のトレンドなどもしっかり把握しておくことに越したことはないので、僕としてはとても助かりましたね。この8年間を振り返ってもメジャーリーグの通訳者は、ただ単に日本語と英語が話せればいいという仕事ではないように実感しています。

Hiro:そういってもらえると嬉しいです(笑)。メジャーリーグに限らず、プロ選手の通訳をされている方というのは皆さん同じような感じなのでしょうか?

稲治:そうですね。プロ選手と言っても人間ですから、試合をしていない時間の方が多いのが当然です。特に海外で活躍している選手はそういった試合をしていない時間に、文化や食事の面で様々な違いに直面することになります。僕たちの仕事はその部分をできる限りサポートしていくこともとても重要だと考えています。

Hiro:確かに、昨年は青木選手とトロントでお会いする時は、もちろんコウスケさんも一緒でしたが、それ以外の日もよく僕に「今日は何をしてますか?」とか聞いてくれたり、実際にトロントを案内したこともありましたね。

稲治:そうですね。「困ったときやトロントに来た時はヒロさん!」というくらいよく連絡をしていたと思います(笑)。トロントで試合の時はいつも連絡を取って、よく食事に行ったり、遠征に行って帰ってきた週末にも一緒に出かけたりしていましたね。8年間メジャーで働いていますが、今まででトロントで過ごした時が一番楽しかったです。真面目な仕事の話だけではなく、プライベートな話もたくさんできたのが嬉しかったですね。あと、昔はお酒をほとんど飲まなかったのに、ヒロさんと食事に行くようになってから、話も弾むせいか少しずつ飲めるようになりました(笑)。

Hiro:そうなんですね(笑)。僕はスポーツ好きなだけでなく、自分の職業的にも性格的にも相手に会話を合わせれて、盛り上げるのが好きなんでしょうね(笑)。相手が、仕事とかの話をしてストレス発散したそうだなと感じた時は、意図的にその話は伺う事があります。もともと、仕事もしくはプライベートの話をしたがる人と、したがらない人など、色々なタイプがいるかと思います。コウスケさんからは、基本的に仕事の話をしたがらないような空気を感じてました。

稲治:僕は選手の側についている立場上、仕事の話には当然とても気を遣っています。どこまで話をしていいか微妙な時はありますが、やはり変なことを言ったらいけないというブレーキが働きますね。青木選手は非常に何事にも慎重な方ですので、なおさら身を引き締めて毎日を過ごしていました。

青木選手が日本球界に戻ったのをきっかけに、新たな世界へのチャレンジを決意

Hiro:そんな姿に、とてもプロフェッショナリズムを感じますし、やはり通訳者として公私ともに選手のサポートに全力を注ぐからこそできる考え方ですよね。今年から青木選手は日本で、古巣ヤクルトに復帰されましたが、今後コウスケさんはどのような道をあゆむのでしょうか?

稲治:実はメジャーリーグの通訳者としての仕事は終わりにしようと思っています。青木選手と過ごした時間も長かったですし、一人の人間としても尊敬をしていたので、彼がメジャーを去るまで一緒に働いて、その後は、また違った仕事にチャレンジしてみようといつの頃からか思っていました。具体的にどういう風になっていくかはまだ分かりませんが、ヒロさんもおっしゃったように、青木選手がヤクルトに入団が決まったこの機会をきっかけに、新しいことに挑戦してみようかなと今は思っています。

(聞き手・文章構成 TORJA編集部)


稲治(イナジ)コウスケさん

日本で生まれ、3歳で両親と共にカリフォルニアに渡る。大学を2009年に卒業した後はキャンベルスープにて研究員として勤務。2010年からはアトランタ・ブレーブス、斎藤隆選手の通訳として、そして2012年からは6年間に渡り青木宣親選手の通訳として活躍。


Hiroさん

名古屋出身。日本国内のサロン数店舗を経て渡加。若い頃から憧れた、NYの有名サロンやVidal Sassoonからの誘いを断り、世界中に展開するサロンTONI&GUY(トロント店)へ就職。1年目から著名人の担当や撮影等も経験し、一躍トップスタイリストへ。その後、日本帰国や中米滞在を経て、再び、トロントのTONI&GUYへ復帰。クリエイティブディレクターとして活躍し、北米TOP10も受賞。2011年にsalon bespokeをオープン。今現在も、サロンワークを中心に著名人のヘア担当やセミナー講師としても活躍中。

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