「“Who you are”ではなく“Whom you know”」メジャーリーグ青木宣親選手の通訳 稲治さん|トロントのカリスマ美容師 Hiroさん×稲治コウスケさん | 対談【後編】


現ヤクルトの青木宣親選手がメジャーリーグで活躍中に通訳者としてサポートした稲治コウスケさんと、その青木選手からの紹介もあり、コウスケさんと仲良くなったHiroさん。

 最終回では、お二人が考えるプロフェッショナルとしての心得や、海外でのキャリア形成などについて語ってもらった。

“Who you are”ではなく“Whom you know”

Hiro:青木選手が日本球界に戻った今、今後は別のキャリアを目指すのですよね?

稲治:8年間通訳の仕事をやっていますが、元々2、3年程度と考えていました。仕事は面白いですが、支えている選手の所属チームが変われば僕の職場や友達も変わります。そういう生活を少し変えてみたいなという気持ちになってきました。もう少し一か所に留まってできる仕事をしてみたいなという気持ちは以前からありました。一か所に留まって仕事をしている方からすると、色々な所に行く僕の仕事が羨ましいかもしれませんが、僕はその逆ですね。

Hiro:無いものねだりってやつですね(笑)。

稲治:ヒロさんは美容師として1つのことを極めていく中で他のことをやりたいと思うことはないのですか?

Hiro:日本やトロントで、セミナー等を行うことも増えてきているのですが、僕は美容師という仕事が出来て本当に幸せで、何よりも髪を切るのが一番好きなので、本職として全く違う事をしたいということは考えられないですね。

 ところで、今まで間近でメジャーリーガーの選手と接していて、どういった部分が「プロ」だと感じましたか?

稲治:全てですね。斎藤選手の時は彼がプロとして活躍して15年目。既に自分のルーティーンが完璧にできていました。青木選手も日本で8年間プロとして活躍してからメジャーにきました。日本である程度、出来上がった選手たちがこちらに来ているので、準備の仕方一つ一つがきっちりしていますし、試合に向けての心構えもすごかったです。

Hiro:プロにもなると小さな1つ1つのことにも意識がいくのでしょうね。僕もプライベートで、色んな種目のプロ選手と交流を持たせていただいていますが、日頃から飲食には相当、気を使われてると感じてました。

 大会まで減量を必要とする種目の選手はいつもでしたが、そうでない種目の選手でもグルテンフリーを導入されてからは、急に飲食中に避けるものが徹底されたのが、とても印象的でプロ意識を感じました。僕も少し真似したり、とってもいい刺激、勉強になりました。

 あと、楽しむ時は楽しむ!!というスイッチの切り替えも、彼らはすごいですよね。

稲治:オンオフの切り替えは確かにそうですね。真剣にやるときは真剣に、でもリラックスする時間を取ることも大切だということを学びました。

Hiro:そういったプロしかいない世界にいきなり飛び込んだわけですが、すぐに慣れましたか?

稲治:育ちがずっとアメリカだったので、日本語で目上の人への話し方は分かっていても使ったことがなく、慣れるのが大変でした。お客様とのコミュニケーションが仕事をする上で大事になるヒロさんはどんなことに気を付けていますか?

Hiro:僕の場合は、特にカウンセリングを大切にしているので、なるべく分かりやすく言葉を砕きながら説明することで、お客様の目線に立てるように努めています。

 コウスケさんの考えるメジャーリーグのプロの通訳者とは?

稲治:僕はその瞬間、選手が何を思っているのか、その気持ちは何なのかということを考えるようにしています。通訳は直訳では無く、僕自身の言葉で話しているので、選手の気持ちや想いを汲み取り、ちゃんと伝えられることが通訳のプロだと思いますね。

Hiro:メジャーの世界で一番印象に残っていることは?

稲治:2014年のワールドシリーズですね。チーム、そしてスタッフの高揚感はすごかったです。インタビューですと、青木選手が2千本安打を達成した時の記者会見です。あの時は、青木選手の言いたいことをとても自然に通訳できたと自負しています。

Hiro:その逆で、最悪だったことは?

稲治:初めて斎藤選手のテレビインタビューの通訳をしたときは緊張してうまく話せませんでした。その時、斎藤選手が大丈夫だよ、落ち着けって声を掛けてくれたことも印象に残っています。

Hiro:カナダには就活中の日本人学生も多いですし、通訳者になりたい留学生もいます。メッセージをお願いします。

稲治:日本とは違う文化を受け入れ、仕事でもなんでもオープンに考えて欲しいと思います。日本人同士で固まってしまうのではなく、せっかく違う国に来ているので現地の人とも積極的に話をしてみることに挑戦してみてください。これからの時代を見据えて、今のうちに様々な人と関わってほしいです。

Hiro:コウスケさんとの会話全体を通して、北米で就活する際はコネも重要だということが読者の皆さんにも伝わったと思います。海外では履歴書だけでなく推薦状も存在するように、“Who you are”だけではなく、”Whom you know”も就活の大きなポイントになります。実際、僕もワーホリ時代にTONI&GUYに就職した際、履歴書だけでなくヴィダル サスーンから頂いた推薦状も添えました。まだ本当に英語力が低かった当時の僕には、その推薦状に効果はあったと思います。そして、コウスケさんも言っていたようにカナダにいることを活かし、日本では知り合わないような現地の人や、同じ日本人でも異業種や世代の違う方々と積極的に出会うのも、またカナダ生活が刺激的になり、学ぶ事も増えて良いかもしれませんね。

(聞き手・文章構成 TORJA編集部)


稲治(イナジ)コウスケさん

日本で生まれ、3歳で両親と共にカリフォルニアに渡る。大学を2009年に卒業した後はキャンベルスープにて研究員として勤務。2010年からはアトランタ・ブレーブス、斎藤隆選手の通訳として、そして2012年からは6年間に渡り青木宣親選手の通訳として活躍。


Hiroさん

名古屋出身。日本国内のサロン数店舗を経て渡加。若い頃から憧れた、NYの有名サロンやVidal Sassoonからの誘いを断り、世界中に展開するサロンTONI&GUY(トロント店)へ就職。1年目から著名人の担当や撮影等も経験し、一躍トップスタイリストへ。その後、日本帰国や中米滞在を経て、再び、トロントのTONI&GUYへ復帰。クリエイティブディレクターとして活躍し、北米TOP10も受賞。2011年にsalon bespokeをオープン。今現在も、サロンワークを中心に著名人のヘア担当やセミナー講師としても活躍中。

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