「メッセージ性のあるコメディをもっと増やして行きたい」|トロントのカリスマ美容師 Hiroさん×Ayaka Kinugawaさん | 対談【後編】

 前編中編に渡ってお送りしてきた、Second CityでMusical Directorを務めるAyakaさんとHiroさんの対談。中編ではSecond Cityとの出会いや仕事を始めてからの心境の変化について伺った。後編となる今回ではより詳しいお仕事の内容や今後の展望について語っていただいた。

時に真剣な表情で語り合うAyakaさんとHiroさん


Hiro:Second Cityで印象深かったお仕事はありますか?

Aya:一昨年大統領選挙がテーマの舞台ツアーを担当し、アメリカ22州巡りました。日本では考えられない様な際どい政治的コメディでしたが、都会でも田舎でもみんな政治に関心を持って観に来てくれたのは印象的でした。そしてそのツアーのメインイベント、多くの舞台芸術家の憧れの地、ワシントンDCのケネディセンターでの公演が完売し、北米に住んでアーティストとして活動してきたことに対して誇りが持てましたし、達成感もありました。

 またSecond Cityの舞台がクルーズシップのエンターテイメントに取り込まれていた事があり、乗船人数4000人の大型客船で計8ヶ月間生活しました。NYとカリブ海を一週間かけて往復する客船で、ショータイム以外はほぼ自由時間でしたので、いくつもカリブの島へ行き、世界中から集まるクルーメンバーと出会い、仕事以外の面でもとても貴重な経験となりました。

Hiro:日本でお仕事をされたこともあるのでしょうか?

Aya:昨年日本で外資系の日本支社でワークショップをする機会がありました。日本語で教えられる人はSecond Cityの中で私しかいなかったので選ばれたのですが、カナダで頑張っていたご褒美がもらえたような気分でした(笑)。

 ワークショップが始まる前は「なんでこんなことやるんだよ」という空気が漂っていたのですが、終わる頃には皆大笑いしてとても盛り上がりました。保険会社の監査部での研修だったので、普段はとても静かな方々らしいのですが、他の部署の方が「監査部がこんなに笑っているのを初めてみた」と言ってくれたのが嬉しかったです。

 同じ日本出張の際、吉本興業の芸人さんたちにミュージカルインプロを教える機会がありました。Second City流のインプロを取り入れるという企画があり、数年前から芸人さんがシカゴに留学に来たり、こちらから講師が派遣されたりということはあったのですが、MDが派遣されたのは今回が初めてでした。

Hiro:芸人さんに教えるのはなんだか緊張しそうですね。会社員の方々とは違いましたか?

Aya:そうですね。芸人さんはインプロは初心者でも、タイミングや笑いをとるコツについてはやはりプロでした。彼らにとって稽古も仕事ですので、真剣さも伝わってきました。

Hiro:今後のステップアップや展望はどのようにお考えですか?

Aya:私は音楽は自分の仕事だと思ってMDとして働いています。そして授業を取りだしてから、インプロが私の人生を変えた、と思うようになってきました。音楽が私の人生を変えたように、インプロがもう一度私の人生を変えてくれました。そして日本でインプロのワークショップをしてから、日本人にインプロが浸透すればもっと皆楽しく生きられるのでは?という気持ちが芽生えてきました。そのためにも日本人にインプロを教えられるような環境を増やしていけたらなあと思っています。

 Second Cityはコメディーだからこそ多様性をとても大切にしています。トロントのインプロコミュニティーは色々な人種、そして男女平等に役者がステージに上がるという事をとても大切にしています。ハリウッドでMe Too運動があったように、コメディーも笑いをとるだけでなく、問題提起をする必要があります。皆がなかなか話せないことを仕事として私たちが笑いでオブラートに包みながら発信することができます。日本のコメディーはやる側と見る側がはっきり分かれていて、単にエンターテイメントで終わっている傾向にある気がします。もちろんそういったスタイルのコメディも面白いですが、見る側がもっとアクティブに観て考えて、そこから何か生まれる様なメッセージ性のあるコメディをもっと増やして行きたいです。

東京でワークショップを行った際の一枚


Hiro:インプロやAyakaさんの出来ることで日本に還元していきたい、というのは僕とも共通していると思います。僕が冗談っぽく自分自身を表現する時、在住はカナダである意味、まだギリギリ日本人だと言います。職場でもカナダ人の中で一人だけ日本人という外国人、そして僕一人だけ男性という環境でやってきましたので多様性の重要性もわかります。だからこそ、日本に帰国した際は情報を持ち帰り、それを基に変化を起こせる人が美容師でも、他業種でもより多く出てきてくれたら嬉しいですね。これからも、自分自身の内面の51%以上は、ずっと日本人であり続けたいと思っています。

Aya:スパイという表現、共感できます。私もカナダには恩返ししないといけませんが、心はやはり日本に置いています。

Hiro:では最後に、カナダで頑張る方々へのメッセージをお願いします。

Aya:人生楽しんだ者勝ちだよ、と言いたいです。日本では出る杭が打たれる、と言われますが出る杭であればそのまま出まくろうよ、と(笑)。私は高校生のとき、派手な髪色やピアスを開けたりして先生に怒られました。カナダに来てからはそれが悪いことではなく、自分の個性だと思えるようになりました。自分に素直になって、我慢せずにやりたいことはやる。体裁ばかり気にして、我慢して思いとどまる、というブレーキを掛けないで、法に触れない限り何をしても大丈夫だという考え方をしてもいいのでは、と思います。

(聞き手・文章構成 TORJA編集部)


Ayaka Kinugawaさん

 山梨県出身。Vancouver Island University音楽学部 Jazz科卒。2012年トロントへ拠点を移し、コメディ劇場 The Second CityにてMusical Director として舞台製作やパフォーマンスを担当する。またインプロ(即興劇)講師としてSecond City Training Centreでのミュージカルインプロクラスや企業向けのインプロワークショップ、吉本興業所属芸人へのミュージカルインプロ指導を行う。

セカンドシティHP:Secondcity.com
自身作曲HP:hooksonic.com


Hiroさん

名古屋出身。日本国内のサロン数店舗を経て渡加。若い頃から憧れた、NYの有名サロンやVidal Sassoonからの誘いを断り、世界中に展開するサロンTONI&GUY(トロント店)へ就職。1年目から著名人の担当や撮影等も経験し、一躍トップスタイリストへ。その後、日本帰国や中米滞在を経て、再び、トロントのTONI&GUYへ復帰。クリエイティブディレクターとして活躍し、北米TOP10も受賞。2011年にsalon bespokeをオープン。今現在も、サロンワークを中心に著名人のヘア担当やセミナー講師としても活躍中。

salon bespoke

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