「本当に何もなかったからとりあえずやるしか無い」|トロントのカリスマ美容師 Hiroさん×相場 義之さん 対談【中編】

カナダのベスト100レストランに選ばれたAncaster Millでイベントシェフを務める相場義之さん


 中編となる今月号では手に職を持つ二人が仕事について語り合う。なんと本連載中にヨシさんがスーシェフからイベントシェフへ昇格したとの一報も入るというおめでたい対談になった今回。ヒロさんのことを、カナダで心から信頼を寄せることができる兄貴分と呼ぶヨシさんが料理の世界に入り寝る間も惜しんで学校と仕事をこなす。そんな様子を隣で見守っていたヒロさんとともに当時を振り返ってもらう。

ともにワーキングホリデーから永住権を取得。手に職を持ちローカルにチャレンジした二人

Hiro:今となっては有名フレンチレストランのシェフとして活躍しているけど、料理の世界に入ったのはカナダに来てからだよね?

Yoshi:ワーホリが終わる2009年の冬に知り合いに紹介されて日本食居酒屋で働き始めた。最初はサーバーだったけれどシェフに「お前の性格なら料理に向いているからやってみないか。」と請われてキッチンに入ったのがスタートだね。その時は帰国前ということもあって2カ月間だけ働いて帰国したけど、それから日本でお金を貯めて2011年の秋頃に学生ビザで再びトロントに戻って来た。

Hiro:カナダに長く残りたいから一旦帰国してお金を貯めて戻ってくる人はよくいるけど、ヨシ君はビザと一緒に自分のキャリアも計画的に遂行して来たよね。トロントに戻って来てからは、学校に仕事にと本当に一生懸命だったよね。

Yoshi:だって当時の俺は何もなくて、勉強するしかトロントに生き残る道がなかったから…。必死でIELTSを勉強してGeorge Brown Collegeに入学して、再びワーホリの時にお世話になった居酒屋のキッチンで働きはじめて、本格的に料理を始めた。そしてカナダでスキルを身につけ生きていくためにも本格的に経験を積める場所を探し始めたという流れだね。

2号店の立ち上げのシェフを任され1年くらいが経過した時に結婚、永住権取得の道筋が見えてきたヨシさんは有名フレンチレストラン「Auberge du Pommier」の門をたたく

Hiro:昔、俺もとりあえずトロントの有名店で欧米スタイルの技術はもちろん、こちらの常識等も学んでから、もっと世界に出ようって考えてたから、当時のヨシ君の考えや、自分を売り込む力に共感が持てたのをよく覚えてるよ。

Yoshi:「Auberge du Pommier」はトロントの超一流フレンチレストランとしてとても有名で、ご飯を食べに行った時にシェフに挨拶をして、当時は週6で居酒屋で働いてたから休みの1日を働かせて欲しいとお願いしてシェフの元に通うようになった。初日にヘッドシェフと面談があり、これからどうしていきたいか尋ねられたので〝もっとフレンチを勉強したい。だからトロントで1番と言われるこのレストランで働きたい〟と直訴したら快諾してもらえて、半年後に新しいキャリアのスタートになった。

Hiro:自分でレストランに行ってコネクションを作ったり、売り込むというのが海外らしいよね。俺も積極的に売り込みまくったもん(笑)。トロント来た1ヶ月後には、自分でローカルの美容室でのインターンの機会を作って、その後、ヴィダルサスーンのスタッフ達と友達になって結局、就職時も「TONI&GUY」という有名な場所に飛び込みで、コネクションもなく仕事をゲットしたもんね(笑)。

Yoshi:本当に何もなかったからとりあえずやるしか無いよね。外国人だし英語も100パーセントじゃない。待っていても何も来ないから自分でアクションするしかないよね。

Hiro:本当そうだよね。俺もサロン就職後も、ずっと英語等の勉強を続けてたもん。

自分が行きたいと思った土地で仕事が貰えるような技術がほしい

Yoshi:俺はさぁ、いつか海辺で太陽が沈むのを見ながら仕事をしていたい。トップになりたいとかいう気持ちはあまりなくて、自分が行きたいと思った土地で仕事が貰えるようなスキルがほしいと思っている。

Hiro:わかるよ。俺もいつかスペイン語圏の海辺で髪の毛をバーって切って終わったら「じゃあ、1杯奢ってよ」みたいな気楽な引退生活を送りたいって思うもん(笑)。なぜ料理の世界で一生やって行こうと決めたの?

Yoshi:俺は作ることが好きなの。もしかしたらヘアスタイリストだったかもしれないし大工さんだったかもしれない。たまたま始めたのが料理だっただけ。それが上手くハマったから、あとはそうと決めたらブレない覚悟を持つことだったかな。スキルもないし余裕なかったから、カレッジに行くと決めた時に料理でやって行こうと覚悟を決めた。

 ヒロさんはいつなんで美容師になろうって決めたの?

Hiro:俺は幼少時から図画工作とか好きだったから、低学年の時には服飾系や美容師とか何か作る仕事に憧れはあったはずだと思う。だから、俺も料理をやってたかもね。それもあって昔から俺はよく言うのだけど、美容師はハサミという刃物を使い、お客様の髪の毛という素材を調理させていただく。冬は寒いから〝重め〟で身体が冷えないようにとか、夏は暑いから〝さっぱり〟風に仕上げるとか、 髪質という素材も欧米とアジアなど、世界中で違う。そして同じ日本人の髪質でも日本生まれ育ちの方が求めるテイストと、欧米生まれ育ちの方が求めるテイストはまるで、食の好みのように違うかもしれない。その点では、季節、素材の産地国、好みの種類など、シェフと似ているなっていつも思っている。

ミスをする事よりもチャンスを逃すことの方が怖かった。次にいつチャンスが来るかも分からないから、分からない事は全力で勉強する

Hiro:経験のないフレンチの世界でどうやってチャレンジして生き残って来たの?

Yoshi:最初は何もできないからサラダの盛り付けからスタートして、仕事で勉強しながら、家に帰って本を読んで勉強して…という繰り返しだった。でも、とても厳しい職場環境だったから人の入れ替わりが激しくて、俺は残っているからどんどん仕事を任せてもらえて気付いたら1年も経たないうちに全セクションを担当するようになっていた。だから勉強をしているスピードと技術が追いついていかなくて大変だった。知識もついてこない中で仕事はこなさないといけないから必死になりながら覚えていった。その時の俺はミスをする事よりもチャンスを逃すことの方が怖かった。次にいつチャンスが来るかも分からないから、分からない事は全力で勉強する。当時も今もいつもそういう気持ちでいるよ。

(聞き手・文章構成 TORJA編集部)


相場義之さん

 学生時代にブラジルにサッカー留学。その際に海外での生活に憧れ、2008年にワーホリでカナダへ。2009年にFin Izakayaで料理を始める。その後高級フランス料理店Auberge du Pommierで働き、1年弱でマネージャーポジションに昇進。2015年に現在のAncaster Millで働き始める。2016・2017年、【15 of the best restaurants outside the GTA】【100 best restaurants in Canada】に選ばれる。
ANCASTER MILL 548 Old Dundas Rd, Ancaster, ON L9G 3J4
HP:ancastermill.ca


Hiroさん

名古屋出身。日本国内のサロン数店舗を経て渡加。若い頃から憧れた、NYの有名サロンやVidal Sassoonからの誘いを断り、世界中に展開するサロンTONI&GUY(トロント店)へ就職。1年目から著名人の担当や撮影等も経験し、一躍トップスタイリストへ。その後、日本帰国や中米滞在を経て、再び、トロントのTONI&GUYへ復帰。クリエイティブディレクターとして活躍し、北米TOP10も受賞。2011年にsalon bespokeをオープン。今現在も、サロンワークを中心に著名人のヘア担当やセミナー講師としても活躍中。

salon bespoke

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