園長先生!気付けば息子も大きくなりました…第40回

「日本の季節と感覚」

21年前に誕生した「池端ナーサリー・スクール」。その園長であり創設者の池端友佳理さんのそばにはいつも日系三世のご主人・マークさんと現在22歳で大学在住中の健人くんがいた。母親であり、教育者であり、また国際結婚移民をした友佳理さんとその家族の笑いあり、涙ありの人生をシリーズで振り返ります。

紅葉も素晴らしいこの季節。日本では「食欲の秋」「芸術の秋」「スポーツの秋」などと言われますよね。それは、涼しい季節になって感受性や繊細さが高まり、物事に熱中するのに適した季節、また秋は旬の食材が多く食欲が大いにそそられるからと言われています。

「食欲の秋」で焼き芋、「芸術の秋」で読書や文化祭、「スポーツの秋」で体育祭など、何も考えなくともふとこのような言葉や情景が頭に浮かんできます。この、秋と言う言葉から連想される言葉や情景は、当然ですが日本人と他の国の人とは随分違って来ます。この感覚は日本で生活して行く中で自然に身に付くものであり、説明したり教えたりしてだけで学ぶのはむずかしいものです。

ナーサリーでも、この日本の感覚を感じてもらえる様なテーマを必ずプログラムの中に入れますが、その内容の理解に苦しむのは日本人ではない保護者に多く見られます。

例えば、この季節に必ず登場するオバケ。もちろん、これはハロウィンにちなんでクラフトにしたり飾り付けしたりするのですが、このオバケ、日本の感覚だとどうしても夏に登場して来るのです。夏になるとテレビなどでも怪談や幽霊特集などがよくやっていますし、お化け屋敷や肝試しなんかも夏が本番です。昔からそう決まっているからなのですが、じゃあなぜ夏にオバケなの?と聞かれると、本当の所私にも何故なのがはっきりとは分かりません。ゾッとして血の気が引く…暑い夏に寒気を感じる様にするためからなのか、夏にはお盆で先祖の霊を供養する習慣があるから、霊にまつわる話が多いのか、私に思いつく所と言えば、それくらいでしょうか。

他にも…6月になぜカエル(しかも傘をさしている)?日本の梅雨を経験したことのない人にあのジメジメ、ジトジトした感覚や毎日毎日降り続くうっとうしい気候にうんざりする気持ちなどを伝えるのは難しいですよね。

夏にセミ?あんなに鳴いているにもかかわらず、カナダではセミのことを皆全く意識していないので、びっくりしたことがあります。日本だとセミの鳴き声を聞くと汗が一気に噴き出して来る程暑いイメージがわいて来ますから。

秋にどうしてサツマイモを掘っているの?日本ではさつまいもは秋に旬ですし、芋掘りの遠足なども学校から行きます。

月にはうさぎ、団子やススキがつきもの?十五夜の時期になると中国でもお祭りがありますが、日本独特なのはやはり月でウサギがお餅つきをしている…と言うこの感覚でしょうか。月の影の模様がウサギに見えると言われますし、仏教の教えから来る伝説もあります。

このように、言い出せばきりがない程たくさん例はありますが、日本の風習や習慣、生活の一部になっている物や事柄を理解出来る様に言葉で説明するのは非常に難しいものです。
しかしながら、健人が子供の頃、
「夏はやっぱりそうめんだよなー。」「夏だから、そろそろ麦茶を作っといてね。」「庭でコオロギが鳴いてるよ、もう秋だから何となく寂しい感じだねぇ。」などと言う表現をして、驚かされたことがよくありました。私が普段何気なく使う言葉や表現を単に覚えてそれをまねて使ってみたのでしょうが、日本人らしい感覚として身に付いているからこそ、使う場面を間違えていなかったんだなぁ…と、嬉しく思ったものです。

子供達には季節ごとに関連のある内容を繰り返し話して行くことで季節と物事の関係などを感じ取ってもらえるはずです。子供に与えてあげる言葉のシャワーの中に感覚がこもっていれば、子供はその感覚も一緒にどんどん吸収していってくれるはずです。

でもその前に、大人である私たちもカナダに住んでいると忘れがちな日本の季節ごとの感覚、私たちがまず思い出さないといけないかも知れませんね。


池端友佳理 ー 京都出身。大阪の大学看護科を経て同大学病院の産婦人科で看護師として経験後、1990年に渡加。伴侶は日系カナダ人三世。一人息子(大学生)の母。1993年に自宅で池端ナーサリー託児所を開設。1999年日系文化会館内に池端ナーサリースクールを設立。園長を勤める傍ら、カナダ唯一の産後乳房マッサージ師として活躍中。