園長先生!気付けば息子も大きくなりまし…第49回

「当たり前な時間の大切さ」

22年前に誕生した「池端ナーサリー・スクール」。その園長であり創設者の池端友佳理さんのそばにはいつも日系三世のご主人・マークさんと現在23歳で大学在住中の健人くんがいた。母親であり、教育者であり、また国際結婚移民をした友佳理さんとその家族の笑いあり、涙ありの人生をシリーズで振り返ります。

今まで何度も書いた事がありますが、我が家には家族同様の動物達がたくさん同居しており、その中に可愛い2匹の犬が居ます。6月中旬の事、そのうちの1匹、ヨークシャテリアのマフィンが腎不全に陥り、この世を去りそうになってしまいました。何だか調子が悪いな〜、と思って獣医さんに連れて行った後、あれよあれよという間に状態は悪くなり、立つ事すら出来なくなってしまったのです。吐くは、下痢だはでいつ逝ってしまってもおかしくない状態でした。インターネットで調べたところ、自宅で水分補給の点滴が自分たちで出来る事を知り、獣医さんとも相談し、早速電解質の点滴を開始してみました。動物の体のほとんどは水分ですから、確かに水分というのは大切なものなんですね!自宅で点滴を初めてすぐに、信じられない程の改善が見られたのです!!水も飲めず、ご飯も臭いすら嗅ごうとしなかったマフィンは自分の脚で立ち、水を飲み、ご飯も食べる様になったのです。そして、今では外にお散歩に行きたがったり、日向ぼっこをしたり、遊びたくてマフィンの大好きなおもちゃを私たちの所に持って来たりする様にまでなりました。「ひょっとして、このまま治るんじゃない!?」と言う錯覚に陥ってしまった私たちは再度血液検査をしてもらいました。結果は…獣医さんも信じられない程ひどい状態。

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でも、本当に感謝すべきは、マフィンを見ている限り、痛みが全くなく、一緒にいる事が本当に幸せそうにしていると言う事なのです。まるで神様が下さった特別な追加時間の様な…今、こうして一緒にいる事が本当に幸せ。いつもだと、私は家でじっとしているのが大っ嫌いな性分ですから、特に短い夏は満喫しないと損をしてしまう様な気分になってしまい、楽しい事を見つけては、仕事の後であろうといつも出歩いて何かしているのですが、今年は違います。良い天気で時間があっても、裏庭でただ犬と、家族と一緒に座って過ごす事が最高の幸せ。感謝に止みません。

慌ただしい毎日を過ごしていると見失ってしまう、ごく当たり前の穏やかな時間の大切さ、有り難さ。そう言えば、父の癌が見つかった時も同じ様に感じていたのを今更ながらに思い出していました。悲しいながらも、事故等とは違って、父と共に過ごす時間や心の準備をする時間が与えられた事に感謝していました。あの時も、ただ座って一緒にご飯を食べるだけでも幸せだと感じていました。なのに、父が亡くなった後、そんな気持ちも忘れてしまっている私が居ました。その瞬間、瞬間を大切にしなければいけないのだという事を。この平和な時間を過ごせる、こうして生きていてそばにいる大切な人の笑顔を見る事が出来る、これを当たり前だと思ってはいけないのだと言う事を、これほど有り難い事はないのだという事を。

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朝起きてキッチンに行くと、息子の夜食の後がそのまま。脱いだ靴下は脱ぎっぱなし。朝起きて来た息子に怒鳴りたい気持ちをひとまず抑える私。自分で朝食を作るのは良いけれど、目玉焼きを焼いた後のフライパンや食器もそのままで慌てて出て行こうとする息子にやはりプチンと切れて怒鳴ってしまう…そんな毎日の繰り返し。でも、そんな息子が朝出て行ったきり、万が一帰らぬ人になってしまったら…最期の言葉が息子に対する文句のセリフだなんて、後悔して止まない事になるに違いありません。そう考えると、朝は出来るだけ穏やかに見送ってあげなければ…と、思うのです(が、かなりの努力が必要なんです、これが…笑)。

マフィンは小さな体で今日も一生懸命生きてくれています。そして、彼女は私たち家族にたくさん色々な事を教えてくれているのです。後、どのくらいの時間が残されているのか分かりません。けれど、最期の最後までマフィンが一番良い形で過ごせる様、家族みんなで見守ってあげたいと思っています。


池端友佳理ー 京都出身。大阪の大学看護科を経て同大学病院の産婦人科で看護師として経験後、1990年に渡加。伴侶は日系カナダ人三世。一人息子(大学生)の母。1993年に自宅で池端ナーサリー託児所を開設。1999年日系文化会館内に池端ナーサリースクールを設立。園長を勤める傍ら、カナダ唯一の産後乳房マッサージ師として活躍中。