「精いっぱい、生きていますか?− 最終編」 | トロントの日系幼稚園の園長先生コラム【第81回】

ある日突然、限られた時間しか生きられない病気に侵されていると宣告されたら…?

わずか27歳の若さで亡くなったオーストラリアのホーリー・ブッチャーさんがネット上のSNSに掲載した「私が死ぬ前に書く手紙」(投稿した次の日他界)を読み、心に残ることが沢山あったので3回に渡ってこの場で紹介して来ました。今回は『精一杯今を生きるための◯か条〜』かのようで、ホーリーさんからの心の叫びとも言える内容です。

「他人の時間を大切にしてください。待ち合わせに遅れて相手の時間を無駄にするのはやめましょう。
大切なお金を「体験する事」に使ってください。
自然を楽しんでください。
音楽を聴くのも大事です。音楽はセラピーの一種です。
愛犬を撫でてあげてください。あぁ、もっと撫でてあげたかったなぁ。
友達の顔を見て話してください。携帯ばかりいじってないで。
もし旅行が好きなら遠出をしてみるのも良いでしょう。
生きるために働いてください。働くために生きるのではなく。
とにかくなんでも良いから、自分が幸せになることをしてください。
後ろめたい気持ちを捨てて好きなだけケーキを食べてください。
もしやりたくないことがあったら、「ノー」と言って良いんです。
完璧じゃなくて普通の人生を送って良いんです。
愛する人に、どれだけ愛しているかできるだけ多く伝え、そして心からその人を愛してください。
もし今自分が不幸だなと感じたら、仕事だろうと、恋愛だろうと、結局現状を変えられるのはあなただけです。この地球で過ごせる時間は限られています。決して無駄にしないでください。」

私の父は悪性リンパ腫という血液細胞に由来する癌が見つかってから半年ほどで亡くなりました。当時は患者本人に癌の告知をする習慣はまだなく、家族皆必死で隠しながら日々の生活を支援して来ましたが、今思うとはっきり伝えてあげて、父の生きたいようにさせてあげたかったな…とつくづく思います。父を思っているからこそと信じて、あれはしちゃいけない、これはこうしないといけない…などと口やかましく言い過ぎたように思います。ホーリーさんが提言した上記の事を父にも自由にしてもらっていたら…。後悔後に立たず。せめて、自分の時には後悔しないように、今から日々心掛けていたい事ばかりです。

ただ、やはり自分の仕事があると、働くために生きている…まさにその通りで、もっと生活を見直さないといけないと反省させられます。仕事も大事だけれど、子供が巣立って行った今、今度は日本の母の事も考え直さないといけない岐路に立たされているとも思いますし、体の元気なうちに多くのボランティアもしたいと常々考えています。

さて、最後にホーリーさんが締めくくっている内容がとても意外で、私の中でとても印象深く残りました。それは…次のような文章でした。
「最後に一つだけ。もしできるなら、人類(と私)のために献血に行くようにしてください。あまり気にかけていない人が多いですが、献血の後は気分も良いだけでなく、一人の献血で3人もの命が救えるのです。」

カナダに来る前私は、看護学生になった時点からほぼ定期的にしていた献血。カナダに来てからは忙しさにかまけて、数回行っただけで随分と滞っていました。

ここで、新年の私の記事に戻りますが…。私達家族は今年の新年の抱負として、感謝の気持ちも込めて、小さなことでも良いから継続して何か世の中に役に立つ事をしよう!と決めた目標が『献血』でした。自宅に献血依頼の電話が掛かって来たことがきっかけで、何のためらいもなく時間の合う時に家族で予約を入れ、献血に行ったのです。

そしてそこで待っている間、何気無く携帯で色々な記事を読んでいた私が目にしたのが、26歳の若さで死を宣告されたと言うホーリーさんの「手紙」だったのです。

ホーリーさんが最後の締めくくりの文で書いている事からも、献血をとても大切に考えていたんだろうと汲み取れました。思い起こせば私の父も輸血(特に血漿)は欠かせませんでした。それに…実は、今現在癌のため闘病生活をしている私の大切な友人も献血の大切さを訴えていたところだったので、どうも献血が頭から離れなかったのです。

そして、最後に私からもお願いです。ぜひぜひ、時間を作って献血に出向いてみてください。必要としている人と、世の中と、こんな形で繋がってみるのも、精一杯生きている素敵なご縁なのかも知れませんから。
 


池端友佳理

京都出身。大阪の大学看護科を経て同大学病院の産婦人科で看護師として経験後、1990年に渡加。伴侶は日系カナダ人三世。一人息子(大学生)の母。1993年に自宅で池端ナーサリー託児所を開設。1999年日系文化会館内に池端ナーサリースクールを設立。園長を勤める傍ら、カナダ唯一の産後乳房マッサージ師として活躍中。