【After 3.11 Interview】『日本をつなぐフリーマガジン 志縁』代表 猪上篤志さん

「志」の「縁」を繋ぎ、
支援されたい人と支援したい人を繋ぐフリーマガジン

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志縁代表 猪上篤志さん

東日本大震災を契機として創刊された『日本をつなぐフリーマガジン 志縁(以下:『志縁』)』。震災1年後の2012年3月11日に京都で創刊した同誌は、編集部自ら被災地に赴き、現地のありのままの声を伝えることで震災の風化を防止し、支援されたい人と支援したい人とを繋ぐことで復興支援の促進を図る。そして同誌は本誌でもお馴染みの池端ナーサリースクールを通し、トロントにも被災地の現状を伝えている。同誌代表の猪上篤志さんに、池端ナーサリースクールとの交流の始まりや創刊の経緯、活動を続ける思いなどを伺った。


情報のギャップを埋めたい、その思いから『志縁』創刊

震災から1週間ほどが経った頃、現地に物資の支援で訪れました。現地で実際に感じたことは、関西に住む自分たちが思っていたものとは大きくかけ離れていたということです。たとえば「物資が足りている」と報道されていても、小規模な避難所では物資が十分に届いていなかったり、孤立している方がいたりと、情報のギャップを感じていました。夏頃には物資も大方足りてきて、何か引き続きできる支援活動はないかと思い、現地で感じていた情報のギャップを埋めていきたい、現地の情報を集めて発信していこうと、フリーマガジンを創刊する運びとなりました。

池端ナーサリースクールとの交流の始まりはSNS震災後まもなく現地での復興支援活動のボランティアを通して、SNS上で池端ナーサリースクール園長の池端友佳理さんのお母様と交流させていただくようになり、お母様を通して友佳理さんと知り合いました。「一緒に東北の復興支援活動をしていきましょう」と震災復興活動への意思を共有し、『志縁』を作るようになって、日本だけでなく海外に住んでいらっしゃる日本人の方にも東北や被災地の現状をお伝えしたいと、トロントの友佳理さんに毎号冊子をお送りさせていただき、周囲への配布などカナダでも情報の輪を広げていく活動をお願いしています。また「カナダからのメッセージをいただきたい」という思いから、池端ナーサリースクールの写真とメッセージを第4号に掲載させていただきました。現在、ナーサリーに通う子供たちの被災地への思いなども誌面で紹介したいという企画も上がってきていますので、ぜひ今後実現させていきたいと思っています。

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宮城県気仙沼市でのアートディレクターの佐野竜太さん(左)と学生ボランティア(右)による取材風景

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福島県南相馬市での取材風景

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イベントでのトークの模様


東北を訪れることが一つの支援のかたちとなる

現在は瓦礫の撤去もほぼ終了し、一時の混沌とした状況からは改善されてきていますが、やはり傷跡もたくさん残っており、復興が進んでいる地域とそうでない地域の差、そして現在でも約27万人の方々が仮設住宅に住んでいるという現実があります。ですが、これからは「復旧」から「復興」のステージへと進んでいかなければなりません。現地の方々からも「新しいまち、新しい産業を作っていこう」という声が多く上がっています。
震災後、海外からも多くの方が救援スタッフとして復興のために尽力してくださり、現地の方々も非常に感謝されています。そして現在、だんだんと観光も兼ねて東北に来られる方が増えてきました。それに対し、「海外の方は津波や地震にあまりなじみがなく、せっかく来ていただいたのだから、何かしらの防災意識を持って帰ってほしい」と、英語で語り部の活動をされている現地の方もいます。
僕たちが取材を通して感じることは、日本の他地域からも含め、いろいろな方に東北に来ていただきたいという思いを現地の方々が持っているということです。東北には水産資源や観光資源なども多くありますから、少しずつ回復してきているこの時期だからこそ、海外の方にも一度は足を運んでいただけたらと思いますね。

広がる『志縁』の輪

また、僕たちは『志縁』の発行だけでなく、関西でのチャリティイベントや、他団体と協力しての被災地でのイベント・ボランティア活動なども行っています。さらに「グローカル人材開発センター」という、京都の学生と京都の企業・団体をマッチアップさせる活動を行っているNPO法人とコラボレーションし、現在『志縁』には多くの学生も参加しています。『志縁』に参加して初めて被災地を訪れた、支援活動をしたという学生も多く、周囲の人たちを巻き込んでの活動が出来始めています。

メンバーすべてがボランティア、励みとなるのは現地の方々からの励ましの声

メンバーは僕を含め、全員がボランティアです。会社員や映像作家、NPO法人職員や学生とメンバーの職業も様々で、編集作業や取材は土日を中心としながら、分担作業で行っています。校了前や発行前は忙しくなりますが、活動を通して「メディアの報道が少なくなってきているなかで、関西の若者たちが定期的にこのような活動を行ってくれているというのは非常にありがたい。とても励みになる」と現地の方々から励ましのお言葉をいただき、それが活動を続ける励みとなっています。
自分たちのできる範囲で活動を続けていきたいという創刊当初からの思いは変わりません。自分たちが必要とされていると感じられる間は、この活動を続けて行きたいなと思います。


『日本をつなぐフリーマガジン 志縁』

京都発の震災復興支援フリーマガジン。雑誌名は「支援」に、「志」の「縁」を繋ぐという意味を掛けたもの。「被災地の情報を伝えることで震災の風化を防ぎ、支援したい方とされたい方を繋げること」「災害国である日本において、防災の意識を促すこと」「震災からの復興を通じ、日本の将来を考えること」という3つを基本理念とし、2012年3月11日の創刊から現在までに第6号を発行。2014年3月11日に発行予定の第7号は日本全国で20,000部が発行される予定。
※『日本をつなぐフリーマガジン 志縁』では活動継続のための協力や協賛、媒体設置や配布などの協力を募っている。詳しくはホームページを参照のこと。
『日本をつなぐフリーマガジン 志縁』HP: shien-web.com


猪上 篤志(いのうえ あつし)
『日本をつなぐフリーマガジン 志縁』代表。1983年京都府生まれ。立命館大学を卒業後、素材メーカーに努める。東日本大震災で行った東北での支援活動を機にフリーマガジン発行に至る。日本国に誇りを持ち、日本文化と景観をこよなく愛す。趣味は茶道で、座右の銘は「一期一会」。