トロント『くるみ割り人形』公演に日本人ダンサー達が出演 | 芸術監督タチアナ・ステパノーヴァさん&日系バレエダンサー ジェマ・シャオさん 特別インタビュー

トロントに舞い降りる美しい冬の幻想的世界…
日本からやってきた日本人ダンサー達が公演に出演!

(左から)ジェマさんとタチアナ先生


Toronto International Ballet Theatre (以下TIBT)の『くるみ割り人形』公演は10周年を迎え、今年はTIBT初の試みとして日本にてオーディションを実施。本公演には日本人ダンサーが12名出演予定だ。今回は芸術監督であるタチアナ・ステパノーヴァさんと日系カナダ人ダンサーのジェマ・シャオさんのお二人に、本公演の魅力や本番に向かう現在の心境を語ってもらった。

バレエの歴史が深いロシアよりカナダへと渡り、TIBTを設立したきっかけを教えてください。

タチアナ:ボリショイバレエアカデミーでバレエを学び、私はプリマ・バレリーナとしてソビエト連邦のウクライナ側に住んでいました。ある時カナダ人の団体が、私の出演していた『白鳥の湖』を見た後「カナダに来る気はないのか?」と尋ねてきたのです。カナダへの移住が頭に浮かんだのはこの時が初めてでした。その時点で私のバレリーナとしてのキャリアはほぼ終わっており、過去に2回ほどカナダで踊ったこともあったので、カナダに対してはウクライナとロシアによく似た国だという認識はありました。プロとしてバレエに身を捧げてきましたので、違う国でバレエをより広めていく良いきっかけだと思い、移民申請をしてから数か月後、私はカナダの地を踏みました。

『くるみ割り人形』はクリスマスのバレエ演目として広く親しまれていますが、記念すべき10周年公演の注目ポイントを教えてください。

タチアナ:我々の公演にはボリショイ・バレエ団のプリンシパルダンサーが出演します。そして、今年は日本からの日本人ダンサーが参加するので、より素晴らしい公演になるのではないかと思います。小さな子供達も多く参加しますよ。TIBTの『くるみ割り人形』には、今年は約150人がオーディションに参加しました。その中からダンサーを選び、全ての観客の皆様に純粋なバレエの美しさと物語を届けよう、という高い目標を掲げて日々練習を頑張っています。

花のワルツ

今回なぜ、初めて日本人ダンサーの大々的な起用を決めたのでしょうか?

タチアナ:日本を訪れて、日本が好きになったことと、日本人の勤勉で一生懸命な性格に惹かれたことですね。日本人ダンサーたちは稽古を怠りません。ジェマもそうですが、一日たりともレッスンを休むことはありませんし、決して弱音を吐くことなく、全てをバレエに捧げようと努力するのです。そうして以前よりこのスタジオに通い公演にも参加していたハルミという日本人ダンサーと協力し、日本でオーディションを行う運びになりました。考えてみれば、TIBTはインターナショナルと名前に入っているくらいなのでとても自然なことだと思います。お互いの経験を共有しつつ視野を広げる機会にもなりますし、ボリショイ・バレエ団のプリンシパルダンサーと踊れる機会なんて、TIBT以外ではまず経験できないことです。

ジェマさんは今年で7年間TIBTで『くるみ割り人形』に出演されているとのことですね。こちらのアカデミー入学までの経緯とレッスンの模様を教えてください。

ジェマ:こちらに入る前はカナダ国立バレエ団のレッスンに通っていたのですが、回を重ねていくごとに自分自身がもっとバレエに打ち込める環境が欲しいと思うようになりました。新しいスタジオを探していて、ステパノーヴァ・バレエアカデミーの『リーズの結婚』を見たとき「ここだ!」と強く感じたのが決め手でした。TIBTのレッスンは一人一人の生徒への指導が細やかに行き届いていて、密度の濃いレッスンを受けられます。もちろんとても厳しいですがやりがいを感じます。特にバレエは、本当にやりたいという気持ちがないと続かないし、楽しめないと思います。だからこそ一度好きになれば、とことん好きになれるのではないでしょうか。私はいつもレッスンが終わった後でも、もっとやりたいという気持ちがずっと残っています。このアカデミーはバレエの技術だけでなく、人としての成長が感じられる場所です。

毎日本番に向かって一生懸命稽古に臨んでいる

今年の公演では一人で4役担当されているそうですが、どのようにして役を切り替え演じられているのでしょうか?

ジェマ:今年はソロでコロンビーヌ人形を、そして中国の踊りを男の子とデュエット、他には『雪のワルツ』と『花のワルツ』に出演しますが、役の切り替え方は音楽の影響が大きいと思います。曲が掛かった瞬間にその曲の役へのスイッチが入るような感覚です。あまり難しく考えず、自分の感覚を信じ、曲に合わせて踊っていますね。

タチアナ先生にお伺いします。この10年の道のりを振り返ってみていかがでしょうか?

タチアナ:一言で言うと、クレイジーでした。でも一瞬の出来事だったように感じますね。私自身がもう10年経っていることに一番驚いています。ですが、毎年違う方々と新しいものを創りあげ、彼らにステージで輝く機会を提供できていることはとてもやりがいがあります。

ボリショイ・バレエ団トップダンサーの踊りを目に焼き付けたい

10周年公演となる今年の『くるみ割り人形』での目標をお教えください。

タチアナ:私たちは毎年少しずつ演出を変えています。それは、ジェマのように出演者全員が去年より強くなり、技術も洗練されてきているからこそできることです。技術がつけば、次は表現力のような部分にも意識が行くようになります。そうやって成長する中で、より完璧なものを目指していく必要があります。一度公演を終えたくらいで自分の出来に満足して努力を怠ってしまうようではいけません。常により完璧なステージを作るために、プロとしての意識を持ち、努力を重ねていく必要があります。ですので、今回の目標は去年よりも完璧なステージを目指すことですね。

日本人バレエダンサーの皆さん

最後に、読者へのメッセージをお願いします。

タチアナ:是非、TIBTの『くるみ割り人形』を観にいらしてください。特にお子様連れであれば物語だけでなく、綺麗な衣装やステージをより楽しめるでしょう。普段ロシアの伝統的なバレエを見ることはなかなかできませんが、日本人ダンサー達もロシア流のバレエで踊るので、カナダ流のバレエとはまた違った楽しみ方ができるかと思います。そして多くの日本人ダンサーが出演することはもちろんの事、ボリショイ・バレエ団のプリンシパルダンサーの姿を観ることができる点も忘れてはいけません。ボリショイ・バレエ団がトップのダンサーを派遣するということは、それだけTIBTの質の高さが認められているということです。トロントに住む日本の皆様が本物のバレエに触れられる、素晴らしい機会となることでしょう。

ジェマ:『くるみ割り人形』をクリスマスの時期に観ることは幼いころから私の楽しみでした。特に今回はTORJA読者の皆様と同じ、日本人のダンサーがたくさん出演します。私自身、同じアジア系のダンサーが憧れでした。人種的に自分に近い人が芸の世界で励んでいる姿は特に心を動かされるものがあります。皆さん是非、その姿を観に来てください。


Toronto International Ballet Theatre
『くるみ割り人形』10周年公演

くるみ割り人形の登場シーン


日時:12月23日(土)14:00~/19:00~
場所:Sony Centre for the Performing Arts(1 Front St East)
チケット購入・最新情報など詳しくはホームページへ torontoballet.ca

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