CHALLENGE – 佐伯 徹郎さん

challenge-tetsuro-saeki-01充実した日々を送る日本のビジネスマンがカナダに移住し新たな環境でチャレンジしてきた日々とは・・・。佐伯 徹郎さん

今年から新企会の理事にも就任された佐伯さん。また会計士として一線で活躍されたあと、現在は顧問として後進の指導をする。異国の地に移住し、当時は努力に努力を重ねたという佐伯さんに、カナダに来てからのチャレンジを伺った。


■ 若くして海外に興味をもっていたとはいえ、日本のビジネスマンとして活躍する日々から、どうしてカナダに移住しようと思ったのでしょうか?

幼少の頃、父の仕事の関係でアフリカのケニヤに2年間住んでいました。その時の記憶はほとんどありませんが、大きくなって親からその時の話を聞いて海外に少なからず興味を持つようになりました。大学の時に夏休みを利用してバンクーバーに1ヶ月滞在しましたが、日本とは全く違った広々とした環境や、過ごしやすい気候、異文化を受け入れてくれる寛容さを感じて、その後3度バンクーバーを訪れる事になりました。

バンクーバーは非常に良い街だなと思いましたが、当時(1980年代後半)日本はバブル景気で、卒業後は当然のことのように日本で就職しました。ところが、就職して2年ほど経ったところで、以前になんとなく申請していたカナダの移民ビザが受理されたとの連絡がありました。書類を見ると翌年の春までに入国してくださいとの事だったので、突然カナダに移民するかどうかの決断を迫られる形となってしまいました。

仕事は面白く、充実した生活だったので非常に悩みました。しかしせっかく手に入った永住権を失うのは惜しいと思い、とりあえずカナダに行って英語やビジネスを学んで来ようと会社を辞めてバンクーバーへと移りました。ですからその時はこんなに長くカナダにいるとは想定していませんでした。

■ 銀行員として仕事も充実されていて、日本の景気も良い時期に仕事を辞め海外に渡る決意をしたとのことですが、環境もライフスタイルも変わりいかがでしたか?

中学から大学まで英語を勉強したにも関わらず、カナダに来た当初は英語もあまり話せませんでした。しばらくして簡単なニュースなら聞き取れるようになりましたが、カナダ人との雑談になかなか入っていけません。カナダではスーパーのレジとか、エレベーターで同乗した人など、知らない人が気軽に話しかけてきます。当時はいきなり知らない人に話しかけられて戸惑うことも多かったです。テレビドラマを見ながら英語のカジュアルな会話に親しむようにしたものです。また、日本で少林寺拳法をやっていたので、カナダでも少林寺を通じてカナダ人の友人を増やせたのも幸運でした。

10年前にバンクーバーからトロントに移りましたが、その時も環境の大きな変化を感じました。カナダは大きな国なので東西でも大きく違うのですね。バンクーバーは比較的のんびりしていて大らかな感じがしましたが、トロントは大都会でもっとビジネス重視な印象です。おかげで私の労働時間も日本並みの長さになりました。

銀行入行時

銀行入行時

バンクーバー時代は少林寺拳法で汗を流した

バンクーバー時代は少林寺拳法で汗を流した

UBC卒業時

UBC卒業時


■ 銀行員だった佐伯さんが、会計士に変わるキッカケやチャレンジはどのような状況だったのですか?

最初は数年間勉強して日本に帰ろうと思っていたのですが、運良く奨学金で大学に入る事ができ、ビジネスを専攻しました。その時に学んだ会計学に興味を持ったので公認会計士になりました。銀行時代に企業の決算書を読む機会もあったので、会計にはもともと興味を持っていました。

日本時代に銀行員になったのは、色々な業種の会社に関与する事が出来ることが魅力だったからです。公認会計士も様々な業種のクライアントに関わりますので共通点はあったと思います。

また、大学で勉強している時に、カナダ人と比べてやはり語学力に差があると感じていました。数字なら英語も日本語も関係ないので私でもやっていけるだろうと考えた事も会計士を選んだ理由の一つです。しかし実際に仕事をしてみると、数字を見ているよりもクライアントと話している時間の方が長く、やはり最低限のコミュニケーションができないとやっていけないと実感しました。

■ 先日宴席でご一緒した際に、「カナダに来てからも色々あったよ……」とつぶやかれたのが印象的でしたが、昔を振り返ってみていかがですか?

日本で会社員をやっていては得られない色々な経験ができたと思います。移民がカナダ人の中で同じように働くのは大変な事で、他の人の数倍の努力が必要でした。30代、40代前半の頃は毎日夜中まで仕事をして、週末も仕事ばかりでした。よく事務所の同僚や上司からは日本人の働き方は無茶苦茶だと言われたものです。しかし、そのお陰で今までやってこられたと思っています。今から考えると、もう少し人生を楽しむカナダ人を見習っても良かったなと思っています。今さらですが、これまでの分を少しずつ取り戻していくつもりです。

■ 今年は新企会の理事にも就任されたそうですね。2016年および今後5年間くらいのチャレンジを教えてください。

私が今までカナダでやってこられたのは、カナダで日系社会の発展に頑張ってこられた先輩方の支えがあったからだと思っています。新企会の理事を引き受けたのは、その先輩方への恩返しに、これからの日系社会を担っていく若い人たちのサポートができればと思ったからです。今後は新しい移住者の方々のカナダでの起業支援などで日系社会に貢献できればと思っています。日本から来た若者がカナダで自分の夢を実現する助けができればいいですね。


佐伯徹郎(さえき てつろう)
大阪で生まれ、ケニヤに2年間滞在。上智大学卒業後、住友銀行勤務を経て、カナダへ移住。UBCで会計学を学び、PwCで会計士となる。バンクーバー事務所、トロント事務所で監査パートナーとして日系企業、カナダ企業の監査やコンサルティングを手がけた。現在は監査業務から退き、顧問として後進の指導をしている。

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