Hiroの部屋 慶應義塾大学 環境情報学部 専任講師 藤井進也さん[前編]

Hiroさん(左)と藤井さん(右)

Hiroさん(左)と藤井さん(右)


音楽神経科学」という全く新しい研究分野を築き上げ、京都大学、東京大学をはじめ、ハーバード大学、そしてトロントではトロントサニーブルック研究所にて研究を重ねた経歴をお持ちの藤井進也さん。現在は慶應義塾大学で教鞭を取る藤井さんとHiroさんの二人の間に生まれた化学反応は一体どのようなものだったのか。

■お二人の出会いについて教えてください。

Hiro:ちょうど2年前、当時トロントに赴任されている知り合いのお医者さんや研究者の方々の集まりに僕も呼んで頂いた時、そこに進也さんも参加されてました。

藤井:しかも偶然にも僕の隣の席がHiroさんだったのです。最初の印象としては、ちょっと変わった人が一人いるな~(笑)と。でも個人的に変わっている人って自分に無いものを持っていたりして、僕は好きなんです。Hiroさんの場合もまさにそうで、話し始めたらやはり面白かったですね。

Hiro:進也さんと喋り始めると、お互い世代が近く、トロントの自宅も近いということが分かって、音楽と脳と身体にまつわる研究をしているというということで話がすごく面白かったです。何より進也さんの研究にかける情熱が伝わってきたのが印象的でした。

■藤井さんは大学で音楽と脳・身体に関する研究をされている傍ら、ドラマーでいらっしゃるとのことですが、この2つはどのようにして研究に結びついたのでしょうか?

藤井:京都大学に入った当初、僕は毎日のようにドラムの練習に明け暮れていました。というのも、大学って中学・高校とは違ってものすごく自由な場所なので、自分で問題を見つけて解決に導く方法を考えなければならず、それが俗に皆さんが言う〝研究〟というものですが、僕にはそれが何なのか全く分かりませんでした。大学とは何なのか悶々と悩む日々が続きました。大学の先生に話を聞く中、自分にとって研究とは何か?を考えた時、「自分が1日を過ごす中で、誰に強制されるでもなくこの身を捧げるほど興味を持っているものとはなんだろう?」という問いかけが生まれました。その答えが僕にとって〝ドラム〟であり、〝音楽〟でした。京大でドラムの研究をするなんて前代未聞ではありましたが、僕らしくて面白いかなと。その時に自分の存在意義が少し見えたような気がしましたね。後に1分間に約1200回もドラムを叩くという世界最速ドラマーの筋活動の研究も手掛けました。

Hiro:ドラムの研究をしようという考えそのものが、オンリーワンで素敵ですよね。

藤井:実はまさにそうだったのです。当時、PubMedという世界中の研究者の論文を検索するデータベースで「Drummers」とキーワードを入れて論文を検索してみたら、ヒットしたのはたったの6件で、僕が研究しようとしていた筋肉や身体の動きに関するものはなんと0件。その結果に愕然としたのと同時に自分の中にふつふつと燃え上がってくるものを感じましたね。自分がこの研究をすることで何か世界を変えられるのではないかと思いました。

■ハーバード大学で音楽と脳や身体の研究をするに至った経緯や、その研究内容について教えて下さい。

藤井:ハーバード大学には“The Brain of Musicians(Ann NY Acad Sci, 2001)”という音楽家の脳について論文を発表したゴットフリードシュラウグ博士という研究者がいたことと、“Music and Neuroimaging Laboratory”という音楽と神経画像の研究室があったことが大きな理由です。日本にはそのような研究ができる受け皿のような場所が当時全くありませんでした。ハーバード大学では、バークリー音楽院の超一流ミュージシャン達の脳を調べたり、“ハーバードビート評価テスト”というリズム感を調べるためのテスト(Fujii & Schlaug, 2013)を開発したりしていました。

Hiro:ちなみに音楽と人の〝健康〟はいずれ大きく関係してきたりしますか?

藤井:さすがHiroさん!実際に医療と音楽には深い繋がりがあり、例えば身体がなかなか動かない患者さんでも、音楽を流すだけで不思議と身体が動くようになったりするなど、医療現場で音楽が使われることもあります。しかし、なぜそんなことが起こるのか、我々の脳で音楽がどう処理されているのか、まだそのメカニズムが十分に解明されていないのです。北米、特にカナダには音楽と医療を結びつけて研究をしている人々が沢山おり、国も彼らを応援しています。それがハーバード大での研究後、トロントのサニーブルック研究所に向かった最大の理由でした。トロントでは主に脳卒中の患者さんのリハビリテーション方法を音楽神経科学や運動制御の観点から研究していました。

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■海外での研究生活を経て、その後日本に戻ろうと思われた理由は何ですか?

藤井:費用面などもありますが、やはり海外に出て初めて日本人の良さに気付いたことでしょうか。日本の研究者は丁寧できめ細やかな仕事をし、かつ気配りが出来る強みがあります。そしてもう一つ、未来の日本を良くしたいと思ったのです。日本には若くて優秀な学生が大勢いますから、僕が海外で得た経験をもとに、音楽と脳と身体の研究を堂々と出来る場所を作りたかったのです。そして慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(慶應SFC)にて、「分野を問わず、今後25年の未来を切り拓く教員募集」という画期的な試みがあり、現在はその試みで採用された教員第一号として音楽神経科学を教えています。

Hiro:若い子たちが輝ける環境、〝受け皿〟を作るという話がありましたが、そこは僕もとても共感する部分です。日本の優秀な美容師や若者達が海外でも活躍出来る場所を作りたいという想いの下、僕はトロントで活動していて、職種は全く違いますが、進也さんと同じ想いを持てていることがとても嬉しいですし、さらに頑張ろうという気持ちになります。

次回は、藤井さんがトロントにいらした時のエピソードや読者への熱いメッセージも含めてお送りします。お楽しみに!


藤井進也さん

慶應義塾大学環境情報学部専任講師。京都大学総合人間学部卒、京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了、博士(人間・環境学) 。日本学術振興会特別研究員DC1(京都大学)、PD(東京大学大学院、ハーバード大学メディカルスクール)、海外特別研究員(トロントサニーブルック研究所)、東京大学大学院教育学研究科特任助教を経て、2016年9月より現職。ドラマーとしてアンミュージックスクール京都校を特待生認定修了。専門は音楽神経科学・音楽身体科学。


Hiroさん

名古屋出身。日本国内のサロン数店舗を経て渡加。若い頃から憧れた、NYの有名サロンやVidal Sassoonからの誘いを断り、世界中に展開するサロンTONI&GUY(トロント店)へ就職。1年目から著名人の担当や撮影等も経験し、一躍トップスタイリストへ。その後、日本帰国や中米滞在を経て、再び、トロントのTONI&GUYへ復帰。クリエイティブディレクターとして活躍し、北米TOP10も受賞。2011年にsalon bespokeをオープン。今現在も、サロンワークを中心に著名人のヘア担当やセミナー講師としても活躍中。

salon bespoke Tel: 647-346-8468
130 Cumberland St. 2nd floor / salonbespoke.ca
PV: “Hiro salon bespoke”と動画検索

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