Hiroの部屋 慶應義塾大学 環境情報学部 専任講師 藤井進也さん[後編]

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現在、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(慶應SFC)にて音楽神経科学・音楽身体科学を専門分野に教鞭を取る藤井進也さん。これまで日本には無かった全く新しい分野を築き上げて来られたのには、アメリカやカナダで過ごした経験が大きく活かされているそうだ。お互いが先駆者であるという共通点を持つ藤井さんとHiroさんのストーリー後編をお楽しみください。

■トロント在住中、ディスカバリーチャンネル出演オファーがあったと聞きました。

藤井:ある日仕事中に、僕宛に「世界最速ドラマーの特集をするので協力してほしい」とカナダのディスカバリーチャンネルのスタッフから電話がかかってきました。その前に一度トロント大学の教授にも電話が入っていたようですが、彼が「ドラムの研究ならDr.藤井に連絡しなさい。」と言って下さったのがきっかけでした。2013年の世界最速ドラマーコンテストの優勝者がトロントを拠点に活躍するTomGrossetという方で、番組内でその方にお会いし、筋電図検査などを通して脳や筋肉、身体の動きについて解説をさせていただきました。

Hiro:僕は以前、英文記事で「ときに、Being rareであることはValueを上げる」との1文を見かけ、とても印象的で好きになりました。要するにオンリーワンであることの大切さを表した言葉なのですが、藤井さんはまさにその言葉通りの人だと思います。これだけ多彩化が進む世の中で、本物のオンリーワンになればいつか自分を求めてくれる人は来ますから、常に先駆者でい続け、準備しておくことが重要ですよね。しかも、自分の好きな事でなら、幸せな事ですよね。

藤井:そうですね。アメリカやカナダでの経験があったからこそ、海外番組で解説できる程の英語力も身につきましたし、先ほど話にでました教授が僕の存在を知ってくれていたのも、以前その方が主催する学会で私の研究発表をしたことがあるからです。“Being rare”であることに加えて、自分を世にアピールするプロモーションも大切だと思いますね。

Hiroさん(左)と藤井さん(右)

Hiroさん(左)と藤井さん(右)

■藤井さんが体感した、海外と日本の違いとはどのようなものでしょうか?

藤井:決定的に違うところはプレゼンテーション能力です。日本には優秀な研究者が大勢いて僕もその方達の功績をリスペクトしていますが、国際学会などに参加すると、それが聴衆にうまく伝わっていないような感覚を覚える時があります。一方で、北米の研究者は研究内容に関わらずプレゼンテーション能力に長けている人が多く、聴衆への響き方が全く違うのです。自分が創り上げた研究の中身とその外見をどう見せるか、何事もバランスが大切だと感じます。

Hiro:僕も同感です。きっと多くの業界に通ずる事だと思うのですが、カナダに来られる方には、日本で培った細やかな技術面をベースに、プレゼンテーション能力をより養っていただき、またそれを日本に持ち帰っていただきたいですね。 これからの時代、日本の教育機関でもプレゼンテーションの授業をもっと取り込んで欲しいですね。

■トロントに来てよかったと心から感じることは何ですか?

藤井:まずアメリカにいた時とは違い、街中で堂々とお祈りをしている方達を見てトロントならではの共存性多民族国家だなと感じられたことです。そして同じ研究室の中にもそのように様々なバックグランドを持つ人がおり、中には内戦の影響で祖国に住めなくなり家族と共にトロントに来たという人もいました。戦争下に置かれた彼らの幼少期の話を聞き、彼らの持つ生きる力、ハングリー精神というものを肌で感じられたことは、日本にいては絶対に経験できなかったと思います。トロントで学んだ多種多様な価値観は現在も自分の糧になっていますし、トロントという街には本当に感謝しています。

Hiro:アメリカは「人種のるつぼ」と呼ばれる中、カナダは「人種のモザイク」と呼ばれる所以がそこにあるのでしょうね。カナダは歴史的に見ても新しい国なので、みんながフレッシュで、日本から来ている僕達でさえも、ある意味でこの街、国の歴史の一部になるという感覚があります。

藤井:僕は現在、日本にはあまり普及していない音楽神経科学・音楽身体科学という分野で研究を続けていますが、カナダにはその分野の優秀な研究者が多いのです。そのように多様な人が新しい分野に挑むことが許される環境というのも、カナダ本来の文化背景から来ているものかもしれませんね。

■カナダに来て自分のやりたいことや進むべき道を探している若者も読者には多いのですが、メッセージをお願いします。

藤井:あるドラマーの方から聞いた例え話なのですが、ショーケースの中にあるみんなが憧れるような宝石も、実は元々は泥や土の中に眠っていた石ころを磨いたものなのです。若い頃というのは、ついショーケースの中のきらびやかな宝石ばかりを見つめてしまいがちなのですが、大切なのは、自分自身が原石であることにまず気付くことだと思います。そして一生懸命に磨いていけば、その原石というのは必ず輝き始める。僕も全く同じ経験をしてきたのでよく分かります。「自分自身とはいったい何者なのか?」と自己を内観してみてください。その答えは、必ず自分の中にあると僕は信じています。

Hiro:そうですね。そして自分を内観するためには〝外に出る〟ということが絶対必要になります。 例えば、飲食店のバイトをするにしても、シェフ、サーバー、お金や書類担当、外から卸問屋、メーカーさん、大工さんなどそこの店に関わる大人達は数え切れないほどいます。もう一歩外に出て、働く多種多様の大人達に話を聞き、自分と照らし合わせ、自分にとってYesかNoかカテゴライズすることで、「自分の好きと嫌い」、「得意と不得意」という答えは自ずと導くことができるのではないでしょうか。思いがけない場所に、いつもチャンスは転がっています。その辺りを意識をして、頑張って欲しいですね。


藤井進也さん

慶應義塾大学環境情報学部専任講師。京都大学総合人間学部卒、京都大学大学院人間・環境学研究科博士課程修了、博士(人間・環境学) 。日本学術振興会特別研究員DC1(京都大学)、PD(東京大学大学院、ハーバード大学メディカルスクール)、海外特別研究員(トロントサニーブルック研究所)、東京大学大学院教育学研究科特任助教を経て、2016年9月より現職。ドラマーとしてアンミュージックスクール京都校を特待生認定修了。専門は音楽神経科学・音楽身体科学。


Hiroさん

名古屋出身。日本国内のサロン数店舗を経て渡加。若い頃から憧れた、NYの有名サロンやVidal Sassoonからの誘いを断り、世界中に展開するサロンTONI&GUY(トロント店)へ就職。1年目から著名人の担当や撮影等も経験し、一躍トップスタイリストへ。その後、日本帰国や中米滞在を経て、再び、トロントのTONI&GUYへ復帰。クリエイティブディレクターとして活躍し、北米TOP10も受賞。2011年にsalon bespokeをオープン。今現在も、サロンワークを中心に著名人のヘア担当やセミナー講師としても活躍中。

salon bespoke Tel: 647-346-8468
130 Cumberland St. 2nd floor / salonbespoke.ca
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