Interview of the month June 2015

ドキュメンタリー映画「Doglegs」監督Heath Cozens氏インタビュー

interview-of-the-month-jun-2015-01ジャーナリスト、シネマフォトグラファー、映画監督であるHeath氏はニュージーランド出身。日本には18年間滞在し、現在はニューヨークで活動を続けている。今回日本の障害者プロレス団体Doglegsを取り上げたドキュメンタリー作品「Doglegs」がToronto Hot Docsにて上映された。そこで日本滞在経験もある監督に映画や日本滞在中の経験などの話を伺った。


Heath Cozens
ニュージーランド出身。報道、ドキュメンタリー、コマーシャル映像など多岐に渡り取り組んできた。ディスカバリーチャンネル、ヒストリー、トラベルチャンネル、そしてMTVのローカルプロデューサーを務めた。


日本には18年間住まわれていたそうですが、どういった経緯で日本に住むことになったのですか?

23歳のときに日本へ渡りましたがその時は明確な目的はありませんでした。ただ日本に興味があり、違うところで暮らしてみたいと思ったのがきっかけでした。ワーキングホリデービザで日本へ行き、最初の6年間は神戸、その後東京に移りました。

日本に着いたばかりの頃はどのようにして日本語や文化に慣れていったのですか?

初めに日本に着いた時は、やはり日本語を学ぶということが最重要だと思っていました。私はワーキングホリデーでニュージーランドに来ていた日本人の友人と神戸で暮らしていました。ちょうど阪神淡路大震災の1年後だったので、私たちのアパートはダメージのせいでほとんど空き部屋でしたし、壁にも穴が開いたりしていました。そのおかげで家賃は1万円くらいで安く暮らすことができました。英語教師や彼との生活を通して日本語を勉強し、日本語を理解できるようになる頃にはだんだんと日本の文化に慣れていきましたね。

どのようにしてドキュメンタリーを撮るようになりましたか?
4月27日のワールドプレミア上映後の質疑応答に答えるHeath監督(中央)。出演者の1人中嶋有木さん(右)も応援に駆けつけた

4月27日のワールドプレミア上映後の質疑応答に答えるHeath監督(中央)。
出演者の1人中嶋有木さん(右)も応援に駆けつけた

ニュージーランドにいる時からはショートフィルムは撮っていました。大学で映画を学び、その時はフィクションに興味がありました。ですが私の得意分野はドキュメンタリーだったのです。特に特別なきっかけはなかったと思うのですが、27歳の時に私はドキュメンタリーを撮りたい、撮るべきだと気がつきました。それまで私は日本で英語を教えていました。それは私が日本の文化を理解し人々に伝えるにはとても若すぎたし知識不足だったからです。日本で映画を撮るためには日本語を習得し日本人を理解する必要がありました。それには6年間の年月を要しました。その頃には英語を教えることにとてもうんざりして、これ以上は続けたくない、続けられないところまできていました。それでラジオ局で働きはじめ、様々な人にインタビューをする機会を得ました。それが私を英語教師から元の映画作りをしていた私に戻してくれた気がします。

重度な障害を抱えていても果敢に試合に挑む選手達

重度な障害を抱えていても果敢に試合に挑む選手達

Doglegsとの出会い、またそれをドキュメンタリーとして作品化するきっかけは何かありましたか?

きっかけはとても単純なものでした。私は友人といっしょにビデオレポートのためのトピックを探していました。その時私の友人が提案してくれたのがDoglegsだったのです。彼はこのトピックを既に他のジャーナリストに持ち込んだことがあったようですが、他の人たちからは、興味深いが世界に向けては取り上げられない、と断られていたようです。ですが私はDoglegsがどのような団体か聞いてすぐにドキュメンタリーにしようと決めました。ドキュメンタリーではトピックに長く興味を持ち続ける必要があるのですが、様々なことを考えさせられるこのトピックならいけると感じました。このプロレスは安全なのか?彼らは見世物にされているのか?なぜこんなことをしているのか?見ていて笑ってもいいのか?笑ってはいけないのか?本当にたくさんの思いが混ざり合っていましたね。すぐに行動に移し、約2年間の密着取材を通して映画を製作しました。

現在の日本の障害者への支援、接し方、環境などはどう思われますか?

簡単な話ではありませんよね。日本でもまだまだ不便なところもありますが、日本に比べてニューヨークはもっとひどいです。そう考えると私は日本では多くのところで配慮されていると思います。盲目の方への点字ブロック然り、交通機関の設備もとても充実していると思います。しかし問題は接し方だと思います。頑張ればできる、と応援することは良いかもしれませんが、期待を押し付けてしまってはダメだと思います。ディズニーストーリーのように全ての人が大きな困難に打ち勝ち成功を収められるわけではありません。それは私たちでも同じです。できること、できないことは人それぞれなので私たちがどう感じようと関係ありません。障害者の人ができると信じ、努力しているのなら応援する、ただそれだけだと思います。

日本ではドキュメンタリー映画はフィクション映画に比べると見る機会が少ないように感じます。それについてはどう思われますか?

私はドキュメンタリー映画はエンターテインメント映画になることも可能だと思います。問題はドキュメンタリーとエンターテインメントとの間に境界線を作ることです。ドキュメンタリーだから真面目なトピックであったり、何かを教えたりする必要はありません。他の映画作品と同じです。またドキュメンタリーの価値は、その題材を通して世界中と共感できることだと思います。ですからあまり考えすぎずに楽しんでドキュメンタリー映画にも触れていただきたいです。

トロントで映画を楽しむ日本人にコメントをお願いします。

Doglegsはドキュメンタリー映画ですがとてもエンターテインメント要素も多い楽しい映画だと思います。ドキュメンタリーだからといって子供に「野菜を食べなさい」と説得するような映画ではありません。ユーモアもあり、とても個性的な登場人物がでてくるストーリー性に富んだ映画です。実際多くのメッセージを映画の中に込めましたが、深く考えすぎずに映画そのものを楽しんでもらいたいです。


interview-of-the-month-jun-2015-04Translator: Shiori Kitamura
佐賀県出身。日本の大学で英文学を専攻。英語が大好きで、カナダ文化に興味を持ちワーキングホリデーにて渡加。CanPacific Collegeで勉学に励む。日本への帰国は決まっているが、いつかトロントに戻ってくることが将来の夢。

CanPacific College: www.canpacificcollege.com