STORY.1 柴谷ケオさん インタビュー [新連載 JCCC×TORJA]

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カナダ建国150周年そしてトロント新移住者50周年を迎えた2017年。TORJAではトロント日系文化会館と協力し、日系カナダ人の歴史とともに日本の文化・伝統などを継承しながら日系コミュニティを築いてきた方々にフォーカスを当て、過去・現在のストーリーと未来への想いを通して、さらなる日系コミュニティの発展に向けた意見を語ってもらう。



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柴谷ケオさん

トロント日系文化会館を長年見守り続け、現在に至るまで日系カナダ人が戦時・戦後に体験して来た歴史を伝え続けている


日系二世としてバンクーバーで生まれた後、戦時中に日系カナダ人収容所に送られたそうですが、戦争が終わりトロントに来られた経緯を教えてください。

私は1930年にバンクーバーで生まれました。そして1942年12月7日、第二次世界大戦下に置かれた私達日系カナディアンは敵性外国人とみなされ、私はタシメ(Tashme)にある収容所へと送られました。アルバータ州の砂糖大根農場で契約労働者として働くことを選んだ人たちも中には沢山いましたが、その生活は想像を絶するほど酷いもので人々は「地獄のような生活」と言い表したそうです。

収容所の中でも日系カナディアン達によるコンサートなどが催されていた

収容所の中でも日系カナディアン達によるコンサートなどが催されていた


やがて戦争が終わりを告げ、私たち家族は日本へ帰国することになりました。私は東京で仕事を始め、結婚そして子供が生まれた時にこう考えたのです。「このまま日本で生活をし、子供を育てていくのだろうか…?」と。私の答えはNOでした。そうしてまたカナダに戻ってみようと決め、バンクーバーへと旅立ち、その後トロントで無事に仕事を見つけて、1956年より家族一緒に住み始めることになったのです。

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トロント日系文化会館の創設にも大きく関わられたと思いますが、元来どのような目的で会館は建てられたのでしょうか?

戦後、カナダに残った日系カナダ人は、バンクーバーで築かれていた日系コミュニティを排除しようと考えた政府の命令により、カナダ国内で分散させられてしまいました。その頃は主にモントリオールやオンタリオのハミルトンに移った人が多かったです。一時はそうして途絶えてしまった日系コミュニティですが、やはり我々には日系カナダ人同士で集まる憩いの場やカナダ人にも日本文化などを知ってもらうための〝場所〟が必要だと思いました。人々のそのような想いが形となり、1964年に日系文化会館が創立されました。

日系文化会館で行われている様々な活動に加え、そして柴谷さんご自身が特に携わってきた活動についてお聞かせください。

今や多くの人がご存知のように日本のお祭りや映画鑑賞会など様々なイベントが開催されています。特に5月6日開催のJCCCアニュアル・バザーは非常に人気があり、毎年多くの人で賑わいます。また、茶道や生け花、書道などのカルチャークラス、そして剣道や柔道などの武道を学べるクラスも開催されています。

私が主に携わっているのは、戦時中、私達日系カナダ人が捕虜収容所で体験したエピソードをカナダの人々に伝え、あの時代に何が起こっていたのかを知ってもらうという活動です。我々が何か悪いことをしたというわけではなく、ただ「日本人であるから」という理由で収容所へと連れて行かれ、自由を奪われてしまった日系カナダ人の歴史を知っている人は現在そんなに多くありません。しかしながら、この事実は決して忘れ去られてはいけないことだと思っています。

最初のJCCCの建物

最初のJCCCの建物

日系カナダ人の歴史を伝えていく活動はどのようなことをされてきたのでしょうか?

これまでは大学などで行われる数々のセミナーやシンポジウムに参加し、戦時中に収容所で起こった出来事などについて日系カナダ人の歴史を多くのカナダの人々に伝えてきました。また、現在オンタリオの学校で使われている歴史の教科書には、残念ながら日系カナダ人についてはほとんど記載されていないという事実があります。そんな現状もどうにか変えようと、この三年間で収容所での体験などをまとめることができたので、今後はそれらを公立高等学校などに配布し、もっと多くの子どもたちに日系カナダ人の歴史に興味を持ってもらいたいと考えています。

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今後、日系コミュニティをさらに発展・継続させていくにあたって、柴谷さんが期待されていることは何でしょうか?

私個人としましては、日系二世、三世と言われるような、こちらで生まれ育った日系カナダ人と新移住者の方々の間には、まだ少し見えないバリアのようなものがあるのではないだろうかと感じています。カナダで日系カナダ人二世として生まれ育ちましたが、一度は日本に渡り生活をした経験がある私は、新しい国に移り住み、その国の習慣や社会に溶け込んでいくことの大変さを少なからず理解しています。そこにはきっと言語の壁も生じているのでしょう。

しかし、私達は同じ「日本人」というルーツを持つ仲間なのですから、お互いにもう一歩ずつ歩み寄り、助け合い、今よりもさらに強い絆で結ばれた一つの輪になっていけたら良いのではないでしょうか。 また、もっと多くの日本人の方にこの素晴らしいカナダという国へ移住してきてもらえたらいいなと願っています。

最後に、読者の皆様にメッセージをお願いします。

まずは自分から何か行動を起こしてみるということが、何事においても大切です。読者の方の中にはカナダに来て間もない方もいるかと思いますが、自分からポジティブな働きかけをすれば、カナダに住む現地の人たちもきっとあなたがしたのと同じような反応を返してきてくれることでしょう。もしかすると中にはそうでない反応が返ってくるケースもあるかもしれませんが、落ち込む必要はありません。

そんな時は、たまたま相手の機嫌がその時に悪かっただけなのかもしれないと考えましょう。そして日本人の「がんばる」文化は本当に素晴らしいものです。そんな素晴らしい文化を持つ日本人が祖先である私たち は、今以上により良いコミュニティを築いていけると信じています。なぜなら、私たちは皆ひとつなのですから。


トロント日系文化会館

(JCCC−Japanese Canadian Cultural Centre)
1964年に会館創立以来。お正月会や四季の祭りなどに代表される様々な文化プログラムを通して多くの人々に日本文化を紹介するとともに、日系カナダ人の歴史体験を伝え、学ぶ機会を提供している。