STORY.2 吉田武彦(タック)さん インタビュー [JCCC×TORJA]

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カナダ建国150周年そしてトロント新移住者50周年を迎えた2017年。TORJAではトロント日系文化会館と協力し、日系カナダ人の歴史とともに日本の文化・伝統などを継承しながら日系コミュニティを築いてきた方々にフォーカスを当て、過去・現在のストーリーと未来への想いを通して、さらなる日系コミュニティの発展に向けた意見を語ってもらう。



吉田武彦(タック)さん

新移住者のパイオニアとしてトロント日系文化会館にて長年ボランティアを行い、日系コミュニティのために尽力し続けている


戦後、日本人がカナダへの移民を正式に認められた後ほどなくしてカナダに移民することとなったそうですが、それまでの経緯を教えてください。

日本にいた頃は、日立製作所で技術者として働いていました。そんな時、義理の姉がたまたま移民募集の広告を見つけて私に言ったのです。「カナダに行ったらどう?」その一言で、すぐにカナダ移住を決意しました。英語の申請書を出さなければならず、初め自分で辞書で一生懸命調べながら作ったものを提出すると、何が書いてあるかさっぱり分からないからやり直すようにと言われてしまい、今度は神田に行って英文の翻訳士の方に頼んで作ってもらうことにしました。完成した申請書を持って行くと、その見事な出来栄えに大使館の方も目を丸くしていましたね。半年後に漸く許可が下りて、1966年4月26日に日本を発ち、到着したのは6月13日。日本を発ってから、実に48日後のことでした。

カナダに来て吉田さんはどのようにトロント日系文化会館と関わりを持たれていったのでしょうか?

剣道をやらないか?とトロント日系文化会館へ誘われたのが最初でした。そこで日系二世の方々に優しくしていただいて、英語も教えてもらったりしていたのですが、やはりちゃんと英語を勉強しなくてはという思いからハウスボーイとして6人の子供がいる家庭に住み込みで働きながら学校へも通うようになりました。そんな生活を3年ほど続け、英語が話せるようになってきた頃に新しい仕事にも就き、またこちらでのボランティア活動に携わるようになっていきました。趣味の料理を生かし、季節ごとの催し物ではボランティアとしてうどんや焼きそばを作ったり、紅白歌合戦にも毎年出場していますね。そして剣道も今でも続けています。20年ほど前からは日系文化会館の役員会にも参加し、現在は理事としての仕事も行っています。

長きにわたり、トロント日系文化会館でボランティア活動をされてきた吉田さんですが、どのような思いでそれらに携わってきたのでしょうか?

まず一つは私の義理の母親が病院で闘病生活中に多くのボランティアの方々が私達家族を支えてくださったのです。そのことがあって私も妻もボランティア活動の大切さをひしひしと感じるようになりました。そしてなぜこの場所で私がボランティア活動をしているかといえば、一番大きな理由はトロント日系文化会館があったおかげで今の自分があると思うからです。一人でカナダに来て寂しい思いをしていた頃、ここで行われていた剣道を通じて知り合いができたり、二世の方とお話をして英語を習ったりと、本当に支えていただきました。なので、その恩返しのため私はこれからも全力投球で日系文化会館のボランティアを続けるつもりです。

カナダに移民して50年以上経つ吉田さんの想いをお聞かせください。

カナダに来てから、日本に帰りたいと思ったことは一度もありません。本当に移民してよかったと心から思っていますし、こんなに素晴らしい国は他にないと思います。カナダに来たことによって本来の希望であったセールスの道へと進むことができましたし、家族にも恵まれてこれ以上ないほど幸せです。また私がトロント日系文化会館で初めてボランティア活動をした頃、私は一生懸命に黙々と働く日系二世の方々の姿を見て感動したのを覚えています。カナダの日本人移民受け入れ後まもなくの新移住者としては、そういった日系二世、三世と呼ばれる方々と新移住者との絆をより強めていく橋渡し役にならなくてはという使命感もありますね。

今後日系コミュニティをさらに発展・継続させるために、吉田さんが期待されていることは何でしょうか?

やはり日本からもっと多くの若者にカナダに来てもらいたいです。日本にいた頃、私は自分の仕事や生活に対して不満だらけでした。そんな時に義理の姉の助言もあり「度胸を出してとにかくやってみよう!」と思ったことが、人生を好転させることのできたきっかけとなったのです。現代社会を見ていると、今日本にいる若者たちの中にもそういった不満やネガティブな気持ちを抱えた人は多いのではないかと思います。もしそうなのであれば、旅行でもワーキングホリデーでもなんでもいいので、大志を抱いて世界に飛び立ち、一度海外から日本を見つめてみてほしいと感じます。そして、現在既にカナダに住んでいる新移住者の方々には、もっとこのトロント日系文化会館を訪れて、夏祭りやお正月会などの催し物にもぜひ参加してもらいたいですね。

最後に、読者の皆様にメッセージをお願いします。

今まで様々な国の文化会館を訪れましたが、このトロント日系文化会館は世界一だと胸を張って言えます。こんなに大きくて経営も安定している、そして何より日本人だけでなくどの国の人でも気軽に訪れてくださいとワイドオープンになっている文化会館は他にはないでしょう。ワーキングホリデーや学生でこちらへ来た方々、カナダに移住してきた方々、そして生まれた時からカナダに住んでいる方々もみんながここを訪れ、日系カナダ人の歴史、そして日本文化の素晴らしさを知って欲しいと心から願います。


トロント日系文化会館

(JCCC−Japanese Canadian Cultural Centre)
1964年に会館創立以来。お正月会や四季の祭りなどに代表される様々な文化プログラムを通して多くの人々に日本文化を紹介するとともに、日系カナダ人の歴史体験を伝え、学ぶ機会を提供している。

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