STORY.3 久保恵一さん インタビュー [JCCC×TORJA]

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カナダ建国150周年そしてトロント新移住者50周年を迎えた2017年。TORJAでは日系文化会館と協力し、日系カナダ人の歴史とともに日本の文化・伝統などを継承しながら日系コミュニティを築いてきた方々にフォーカスを当て、過去・現在のストーリーと未来への想いを通して、さらなる日系コミュニティの発展に向けた意見を語ってもらう。



久保 恵一さん

理事として、より多くの人々と日系文化会館をつなげるべく奮闘している


はじめにカナダに移住された経緯をお聞かせください。

2012年7月に電通の海外駐在員として、日本からトロントに赴任してきました。赴任の目的は、電通が買収したケベック州の広告会社BOS社を電通カナダと合併させ、事業を成長に導くことでした。トロントに駐在して2年半が経った頃に当初目的の目処がついた為、帰任命令が出たのですが、ワークライフバランスを重視したカナダ人の働き方や、子どもの可能性を伸ばす素晴らしい教育環境に感銘を受け、日本には帰任せずに、そのままカナダに住み続けることを決めました。

カナダに来た後、日系文化会館を知ったのはどのようなきっかけがあったのでしょうか?

カナダには家族と共に引っ越してきたのですが、子ども達にはカナダにいても日本文化を経験して欲しい、日本のことを忘れて欲しくない気持ちがありました。そんな中、日系文化会館で行われていた夏祭りやお正月会といった行事を知り、お客さんの一人として子ども達と一緒に参加させてもらうようになったのが、日系文化会館との出会いでした。特に、三男はまだ小さかったこともあり、普段なかなか目にすることのできない日本の伝統的なお祭りにとても喜び、その行事を通して様々なことを学んでいるようでした。

現在、日系文化会館で理事を務めている久保さんですが、どのような経緯で理事として活動されるようになったのでしょうか?

以前、トロント日本商工会で理事を務めさせていただいたのですが、そこで、日系文化会館の理事長であるゲーリー・カワグチ氏と会う機会があり、ゲーリー氏から「日系文化会館のマーケティング強化に、ぜひ協力して欲しい」と声を掛けていただいたのがキッカケです。長年、広告会社に勤めてきたので、私のマーケティングに関する知識や経験が、少しでも日系文化会館の役に立つのであれば協力したい、と考え、引き受けさせていただくことにしました。

これまで久保さんが行われた活動などついてお聞かせください。

トロントにも日系団体が数多くありますが、それらの横の繋がりを、もう少し強化できれば、と以前から考えていました。そこで、第一ステップとして、日系文化会館のことをもっと深く知っていただくために、先日、トロント日本商工会の理事の方々を日系文化会館にお招きし、活動内容をご説明したり、館内・展示ツアー、戦争経験のある移住者の方々の体験談などを聞いていただく機会を設けさせていただきました。トロント日本商工会理事の皆様にも、日系文化会館や日系人について知らなかったことを深く知ることができた、と喜んでいただき、日系文化会館・トロント日本商工会の両方にとって、大変有意義な機会にすることができたと思います。他には、日系文化会館の活動を、ひとりでも多くの方に伝え、日系文化会館に実際に足を運んでいただけるようなマーケティング活動を行っています。

理事会に参加される前と後で、日系文化会館に対する気持ちの変化はありましたか?

まずはこの日系文化会館が、戦後日系カナダ人の方々の憩いの場所、文化伝承の場所を作ろうというという理由で、多くの日系カナダ人の方々が自宅を担保に入れてまでしてお金を集め、その寄付によって設立が叶ったという事実を知り、この会館に込められた想いがどれほどのものだったかということを知りました。

また、夏祭りのような季節性のあるイベントだけでなく、日本の伝統文化やスポーツを学べるカルチャープログラム、展覧会の開催、日系人や日本文化の代表としてのコミュニティ活動など、その活動範囲は多岐に渡ること、それだけでなく、日本文化を発信する日系文化会館としては、世界有数の規模を誇ることを知り、その存在感の大きさに圧倒されました。

そして何よりも、理事会では、経営者や弁護士、会計士など、第一線で活躍されている方や、長年、ボランティア活動に尽力されて来た方々が、熱意を持って真剣な議論をされており、皆さんのコミットメントの高さに刺激を受けました。NPOである日系文化会館は、50年以上前から、これらの方々のコミットメントで成り立っていることを知り、私個人的には、ただ傍観していることの違和感を感じましたし、現在はこのような形で日系文化会館の様々な活動に携わる機会をいただき、心から感謝しています。

久保さんは移住して約5年が経つとのことですが、新移住者としてカナダへやってきた久保さんが同じ新移住者の方々に向けて特に発信したい想いなどはありますか?

カナダに移住して間もない人にとってはまだまだ日系文化会館が〝近くて遠い存在〟と感じられている方も多いと思います。また、移住者というのは、自分とは関係の無い言葉だと感じている方も多いかと思います。しかし、国連では、移住者を移住の理由や法的地位に関係なく、定住国を変更した人々を国際移民とし、3カ月から12カ月間の移動を短期的または一時的移住、1年以上にわたる居住国の変更を長期的または恒久移住者と定義しています。

この定義を知れば何十年前に移住してきた人も、最近移住してきたという人も皆同じ〝移民〟なのだということが分かると思います。まずはその気づきを皆さんに持ってもらい、その上で、移民の特権でもある「日本や日本文化をカナダで暮らす人々に伝える」という活動の中で、この日系文化会館をお役立ていただければ、嬉しいですね。

今後、日系文化会館ならびに日系コミュニティをさらに発展・継続させるために、久保さんが期待されていること、将来の展望をお聞かせください。

将来はこの日系文化会館が2020年の東京オリンピックなども含め、日本に関わる情報や人の〝拠点〟になっていってほしいです。またカナダが多文化国家であるように、日系文化会館は国籍問わずいろんな方にオープンな場所ですので、日系人であるなしに関わらず、これまで日系文化会館と全く接点がなかったという方にはまずは一度ここを訪れていただき、どのような活動が行われ、どんな人々が携わっているのかを知っていただきたいです。

また読者の中には、ワーホリなどでこちらに来たばかりの方もいるかと思いますが、その方達しか知らない〝日本の今〟を日系文化会館を通して伝えていただける、そんな場になれば嬉しいです。人と人が繋がり、話し合い、お互いを理解しあうことで、皆が支え合うコミュニティになるよう、これからも尽力していきます。


トロント日系文化会館

(JCCC−Japanese Canadian Cultural Centre)
1964年に会館創立以来。お正月会や四季の祭りなどに代表される様々な文化プログラムを通して多くの人々に日本文化を紹介するとともに、日系カナダ人の歴史体験を伝え、学ぶ機会を提供している。