自分のルーツや日系人の歴史を誇れる場所に。ゲーリー・川口さん インタビュー|カナダ日系コミュニティの過去・現在・未来

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カナダ建国150周年そしてトロント新移住者50周年を迎えた2017年。TORJAでは日系文化会館と協力し、日系カナダ人の歴史とともに日本の文化・伝統などを継承しながら日系コミュニティを築いてきた方々にフォーカスを当て、過去・現在のストーリーと未来への想いを通して、さらなる日系コミュニティの発展に向けた意見を語ってもらう。


ゲーリー・川口さん

長年日系文化会館理事会の活動に寄与し、現在は日系文化会館理事長として会館の維持存続に尽力している


日系文化会館の理事長を務めることとなった経緯を教えてください。

私の両親はバンクーバーで生まれた日系カナダ人で、私は日系三世として誕生しました。私が日系文化会館の理事メンバーに参加したのは、今から25年前、1992年のことです。当時、理事会は会館のさらなる規模拡大を考えていました。そこでその計画を手伝える実業家を探していた時に、私の参加が決まったのです。

90年代は経済不況の影響もあり、比較的安く施設購入が可能である時期だったことから、新たに施設を一から建設するよりも、大きな施設を買い取ってリノベーションすることを提案しました。そうして理事会のメンバーとして、その後のプロジェクトマネージメントを支えることとなりました。理事長として着任してからは今年で9年目を迎えます。

桜ガラでのジョージ・タケイ氏の表彰

主な理事会での仕事内容についてお聞かせください。

日系文化会館は非営利団体ですが、実際の施設運営には様々な経費が必要となります。もちろん非営利団体なので、利益や損益がないようにするのは絶対ですが、そういった運営面では多くの困難とぶつかることもしばしばです。だからこそ、我々18人の理事会メンバーは、経営者、弁護士、会計士といった各ビジネス分野のスキルや経験に長けた人々が選ばれ、力を合わせて日系文化会館の運営面を支えています。

他の日系文化会館との違いはどういったところにあるとお考えですか?

トロントは全世界の文化や人がミックスした非常にユニークな都市です。そしてこの日系文化会館は、そのトロントに住む人々がどんな言語を話すのかという点には一切関係なく、皆さんがここへ来て、日系カナダ人の歴史や現代の日本文化を共有する場所にしています。先代の方々がバンクーバーから東へと渡って来た時、彼らはコミュニティセンターではなく、あえてカルチャーセンターの設立を決めました。そうして全てのカナダ人に日本の文化を紹介することで、日系カナダ人が自分たちの文化を人々と共有しながらこのカナダに溶け込めるようにしたのです。

日系文化会館は人種や宗教、性別、年齢問わず、全ての人々に開かれた場所です。日系会館に息づくその理念は、現在までずっと受け継がれており、カナダ政府、州政府からも高く評価されている点です。

オンタリオ州首相キャサリン・ウィン氏、小澤征良氏と

今年は新移住者がカナダに来てから50周年を迎えますが、日系コミュニティのさらなる発展を目指し、日系カナダ人と日本からの移住者との絆をより強めていくためにはどうすれば良いのでしょうか?

私は生まれ育った場所や言語は違っても、私たちの体に流れる精神性、日本人の心は全て同じだと思っています。日本人は災害が起きた時に「起きてしまったことは仕方がない」といつも前を向いてきました。カナダには自然災害こそないものの、困難にぶつかった時には日系カナダ人も同じような考え方をします。

私はカナダ人として生まれたこと、そして私の親や祖先が日本人であることを心から誇りに思います。日系一世、二世、三世…と呼ばれる人々は、カナダに溶け込みたい思いと自分たちの文化を守りたいという思いでここまで来ました。その気持ちは移住者の皆さんも同じであると思いますし、彼らの子供たちで日系二世として生まれる人々は、我々日系カナダ人がこれまで経験したのと全く同じ試練や困難と立ち向かうことになるでしょう。だからこそ、これからもこの日系コミュニティはみんなが一つなんだ、と感じられるように努力し続けることが大切だと感じます。

今後の展望を教えてください。

私は2002年に神奈川県にあるJICA横浜の海外移住資料館に行きました。そこでは1800年代後半、どの都道府県から何名が海外移住したか、何故移住を決めたのか、またどのようにしてそのコミュニティが根付き、彼らがその国々にどう貢献していったかという歴史が展示されていました。この日系文化会館には素晴らしいヘリテージセンターが設けられていますが、1800年代後半から現代の移住者に関する歴史にはそこまでフォーカスされていません。

しかしカナダのみならず、世界の日系人がどのようにして海外に定住するようになったのかという歴史を後世に伝えていくことは、非常に大切なことです。なぜならばこれからの世代の日系人は色々な人種と混ざり合っていく中で、自分のルーツや歴史を知ることができる場所が必要だからです。そうすることで、ここカナダで起こった全ての歴史、自分のルーツに誇りを持つことができると思うのです。今後はこのコンセプトを実現できるようにしていきたいと考えています。

東京のカナダ大使館にて村上春樹氏に桜アワードの表彰を行った

最後に読者の皆様にメッセージをお願いします。

日系文化会館で行われるカルチャープログラムには皆さんが参加していただけるものが沢山ありますし、参加するだけではなく沢山の人々との出会いを経験していただくことができます。若い方もこの日系文化会館を気軽に訪れていただきたいですね。そうやって皆さんがここを訪れていただくことで、日系コミュニティがさらなる強い絆で結ばれていくことを願っています。


トロント日系文化会館

(JCCC−Japanese Canadian Cultural Centre)
1964年に会館創立以来、お正月会や四季の祭りなどに代表される様々な文化プログラムを通して多くの人々に日本文化を紹介するとともに、日系カナダ人の歴史体験を伝え、学ぶ機会を提供している。
www.jccc.on.ca/jp/