「日本文化はカナダの多文化社会の1ピース」STORY.9 クリス・ホープさん インタビュー

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クリス・ホープさん

クリス・ホープさん

日系四世として生まれ、ドキュメンタリー映画製作や理事会活動などを通して、日系カナディアンの歴史継承やコミュニティ存続に力を注いでいる


はじめに、ホープさんのバックグランドを教えてください。

私は日本人の母とアイルランド人の父のもと、日系四世としてカナダに生まれました。日系三世である母の家族は1920年代にカナダに移住し、アイルランド系の父方の家族も同じく移民としてカナダにやってきました。

幼い頃の日系文化会館との思い出はありますか?

私と日系文化会館との歴史を辿れば、なんと1964年に私の両親は結婚披露宴を先代の日系文化会館で行ったというエピソードがあります。子供の頃の日系文化会館との思い出といえば、空手の大会ですね。観客の一人として試合を見て、子供ながらにとても楽しみました。そして、日系文化会館で日本食を食べた記憶も色濃く残っています。また私の祖母は、昔から日系文化会館との繋がりが深く、生花や踊りなどを習っていました。

両親の結婚披露宴は先代の日系文化会館で行われた

では、理事会に参加されるようになったのはいつ頃のことでしたか?

私は1990年台後半より、日系カナディアンである祖母の戦時体験にまつわるドキュメンタリー映画『Hatsumi』の製作を始めるにあたり、リサーチを行うため、日系文化会館にいらっしゃる方々とコンタクトを取り、お話を聞くようになったことがきっかけでした。その後、2010年にシド池田さんより声がかかり、正式に理事会メンバーに選ばれることとなります。弁護士であるバックグランドを活かし、会計担当を務めています。

シド池田さんらと共に

私の祖母の口から語られたストーリーは、多くの人々の胸を打つことになった

日系の歴史にまつわるドキュメンタリー映画を自主制作したとのことですが、撮影に至った理由など詳しく教えてください。

日系カナディアンの歴史を高校の授業で学んだ時、私の記憶ではその情報は教科書の半ページくらいしか載っていませんでした。そこには淡々と歴史が綴られているだけでしたが、それは実際に私の家族が経験した出来事なのだと気付いたのです。当時、日系コミュニティの中でさえ、ほとんど語られることのなかった第二次世界大戦時の日系カナディアンの歴史。私の祖母を含む昔の実体験者の方々は「起こってしまったことは仕方がない」と重く口を閉ざしていました。それでも、今、私のような若い世代が彼らに話を聞かない限り、彼らの歴史は消えてしまうのではないかと、そんなふうに思ったのです。当時、私は大学でラジオテレビ芸術専攻だったこともあり、撮影に挑むことを決めました。最初はカメラの前で祖母のストーリーを語ってもらうだけの予定でしたが、最終的には映画という大きな形になり、2000年に始めて全てを終えるのに12年かかりました。

のちに完成した映画『Hatsumi』は、日系文化会館で何度も上映され、多くの方に見ていただくことができました。実際の一人の人間の戦時経験を映画で辿ったこの映画に、観客はとても大きな衝撃を受けたように見えました。統計的で他人事のように語られる教科書とは違う、私の祖母の口から語られたストーリーは、結果として多くの人々の胸を打つこととなったのです。

日本文化はカナダの多文化社会の1ピース。それを尊敬し、大切にしていく限り、子供達の中に流れる日本人のDNAは在り続ける

現在、カナダでは異人種間の結婚率が増えており、日系の子供達は日本との繋がりを失いやすい傾向にあるのではとの心配の声もあげられています。ホープさんはハーフとして生まれた日系四世でいらっしゃいますが、この声をどのように捉えられていますか?

この現状を私はポジティブに捉えるようにしています。カナダはいろんな国の文化が集まっている多文化社会と言えるでしょう。そしてここで生活していれば、きっと自分がそのパズルの一つのピースであることに気付けるはずです。私自身の場合も、カナダ人として生まれましたが、家庭環境などの影響もあり、「私は日本人なんだ」と感じていました。異人種間の結婚によって、これから私の家族が目に見える形での日本人の繋がりを失ってしまうだろうと考えるのは悲しいですが、カナダに息づくそれぞれの文化を尊敬し、皆で大切にしていく限り、将来の子供たちの中に流れる日本人のDNAはそこに在り続けるのではと思います。

映画『Hatsumi』の主人公である祖母と

これからの日系文化会館に期待することはありますか?

時代はいつでも移りゆくものです。現在日系文化会館は多くの三世の方々によって運営され、中には私と同じ四世たちも仲間に入ってきています。代々、日系コミュニティは日本とカナダの相互理解のための努力を続けてきています。そうして今後は、日系カナディアンのみならず、新しく日本から来た新移民の方々の「ホーム」と呼べる場所になってほしいです。学生や働いている人など問わず、です。

読者の皆様へメッセージをお願いします。

日系文化会館では、様々な日本文化を発信しており、中でも七年前より開催しているトロント日本映画祭は、日本国外で一番大きい日本映画祭として知られるほどにまで成長しました。これからも日系文化会館は文化交流を通して、人種や性別、年齢を超えた人々を繋いでいきます。家族やお友達を連れて、是非一度訪れてみてください。


トロント日系文化会館

(JCCC−Japanese Canadian Cultural Centre)
1964年に会館創立以来、お正月会や四季の祭りなどに代表される様々な文化プログラムを通して多くの人々に日本文化を紹介するとともに、日系カナダ人の歴史体験を伝え、学ぶ機会を提供している。
www.jccc.on.ca/jp/