トロント日本映画祭 白羽 弥仁監督 インタビュー

心が揺れ動くリアルな映画を追求し続ける

羽弥仁監督

上映前挨拶の様子

トロント国際映画祭にて、北米初、映画『ママ、ごはんまだ?』が上映されるにあたり、上映日当日、日本から白羽弥仁監督が駆け付けた。自身が監督と脚本の両方を務めた今回の作品は、白羽監督にとって4本目の映画であり、今回は初めての台湾での撮影もあったという。海外での製作時のエピソードを含め、映画の舞台裏について語ってもらった。

トロントの印象について教えてください。

トロントに来たのは私にとってこれが初めてでした。今日はトロントで野球観戦をしたのですが、NYで見たことのあるメジャーリーグの試合と比べると、人や雰囲気がアットホームであったかい印象を受けましたね。とても和やかで、幸せな気持ちになりました。

『ママ、ごはんまだ?』は作家一青妙さんのエッセイが原作となっていますが、原作を初めて読まれた時の感想を教えてください。

もともと2010年くらいから古き良き日本の情緒が沢山残っている台湾と、日本を舞台にした映画を作りたいと考えており、原作を探していたのですが、その4年後にこの本に初めて出会った時に「これは自分にしか映画にできないな」と感じ、すぐに一青妙さんに会いに行きました。私は食べることが好きで、前々から料理の映画を撮ってみたいと考えており、この原作はまさにぴったりであったこと、そして時にライバルであり、友達であり、姉妹でありという母と子の関係が多面的に描かれているこの作品に、非常に興味を持ったことがそのように感じた理由でした。

上映後に白羽監督のもとに集まる来場者たち

エッセイである原作から、監督自身がこの映画の脚本を書きあげたとき、何か意識されたことはありましたか?

原作はエッセイで書かれているのですが、脚本に直す際、エッセイからお話にしなければならないという思いと、一方で無理やりエッセイをお話にするのもどうなのかという気持ちもありました。その二つの気持ちの中でまず行ったのは、エッセイの話を全て時系列に並べ変えることです。そして、原作に忠実に、ストーリーの中で登場人物たちの気持ちが常にリアルであることを大事にしました。そうなるとストーリー自体は平坦になりがちなのですが、これまでの私の作品もそうであったように、あえてそのリアルさを狙いにしました。

今回は、台湾での撮影もありましたが、撮影時の印象的なエピソードを教えてください。

今作は台湾と料理をテーマにしていることもあって、台湾の料理が沢山でてきますが、今回は辻調理師専門学校の先生にご協力いただきました。なるべく原作に出てくる母の味を再現できるようにと、筆者である一青妙さんにも試食してもらい、アドバイスをいただきました。また、日本では手に入らない材料や香辛料を手に入れるために、私自身台湾に足を運び、現地の市場へ出向きました。そこで見た中華系の市場の大きさ、専門的な店の数々は、日本や諸外国の市場とは全く異なる雰囲気で、それを実際に目にして学べたことは、映画を作る上でも大事な要素となりました。

以前、アメリカに短期留学していた経験がおありとのことですが、白羽監督が海外経験から得られたものとは何でしたか?

NYの学校に通っていたのですが、そこには映画監督やシナリオライターになりたいなどアートの世界を志す留学生たちと出会いがあり、彼らの多くが自分たちの国では映画を作ることができないという理由で、まずはアメリカに来て映画の作り方を学び、そこでチャンスを掴もうとNYに来ていました。一方で、当時私は既に日本で映画を一本製作しており、彼らにしてみればそれは本当にすごいことなんだよ、と言われ「これだけ頑張っていても、国が違えば、映画を撮ることができない人が沢山いたのだ」と、そこで初めて気付いたのです。その頃は自分も次の映画をなかなか作ることができなくて悩んでいた時期でしたが、その人たちに出会ったおかげで、もう一度頑張ろうと思えました。

ここトロントで夢を追うTORJA読者に向けて、最後にメッセージをお願いします。

トロントという海外の地にいて、映画だけに限らず、何かクリエイティブなことをしたいと考えていらっしゃるのであれば、頭を最大限に回転させ、自分がやりたいと思うことに関してはあらゆる手段を使って、どんなときも諦めずに粘り強くいてほしいと思います。応援しています。

映画のあらすじ


歌手・一青窈の姉である一青妙のエッセイ「私の箱子」「ママ、ごはんまだ?」が原作となっている。台湾人の父と日本人の母、妹と共に、家族4人で暮らした懐かしい家を取り壊す際に見つかった赤い木箱。その中にあったのは、20年前に亡くなった母が残した台湾料理のレシピ帳だった。妙の心に懐かしい音、匂い、声がよみがえってくる…。母がレシピに残した思いとは一体何だったのか。母のレシピを通じて家族の絆を再確認するヒューマンドラマ。


白羽弥仁監督プロフィール

1964年、兵庫県芦屋市生まれ。1993年に公開された『She’s Rain』で劇場映画の監督デビュー。その後は『能登の花ヨメ』(2008)、『劇場版 神戸在住』(2015)の監督を務め、その他TVのCM制作も手掛けている。今回、自身の映画4作目にあたる『ママ、ごはんまだ?』が北米初上映にして、トロント国際映画祭で上映された。