日本人の和の心を伝えるー日系文化会館合気会 小幡 宰師範 インタビュー

日本の武道である合気道を極めた 小幡 宰師範 インタビュー

小幡宰師範と明美夫人 ©dnp davidnewmanphoto.com


日系文化会館合気会では10月21日、22日に小幡宰師範指導45周年記念研鑽会が開催された。合気道の指導を行い今年で45周年記念になる小幡師範に、トロントで教えるようになったきっかけや、「和の武道」といわれる合気道の魅力、そして合気会と小幡師範のこれまでとこれからについて語ってもらった。

合気道を始められたきっかけを教えてください。

私が合気道を始めたのは、1967年の専修大学入学時でした。山口県出身なのですが、地元の柳井市はスポーツの町で当時としては珍しいことに合気道の道場があり、合気道のことは大学入学前から知っていました。高校までは陸上をやっていたのですが、武道にも興味があったことと、半ば強引な勧誘もあり合気道のサークルに入って、大学在籍四年間続けました。上下関係が厳しく大変なこともありましたが、今となっては続けてよかったなと思います。

海外に興味があったということですが、どうしてトロントを選んだのですか?

大学を卒業して一年後にトロントに来たのですが、1970年頃は海外といえばアメリカでした。最初はアメリカに行くということで色々と調べていたのですが、当時はベトナム戦争の真っ只中。アメリカに行った移民者が最前線に送られて死亡したという話を聞き、それならアメリカは避けようということになったのです。そんな頃、カナダが移民を募集していることを知り、知人にトロントを紹介してもらい移住することになりました。当時は英語が話せたわけではなく、せっかくなら4年間続けた合気道をしようということで、日系文化会館に合気会があることを調べてそれを頼って来たのです。

大勢の生徒たちに囲まれて
©dnp davidnewmanphoto.com

合気道の指導を始められて45周年ということですが、これまでを振り返ってみて今のお気持ちはいかがですか?

私は人一倍抜きん出た技量があるとは思いませんが、ここまで続けたということに関しては自分に対する誇りと、支えてくださった周りの方への感謝の気持ちが大きいです。皆様の助けがあってここまで来れたのだと思います。

トロントには幾つか合気道の道場がありますが、JCCCの合気会は他とは違って、お金をとって教えているわけではなくボランティアという形で指導を行っています。私にはそういった指導の形が合っていたので、続けられたのだと思います。最初は3、4人しかいなかった生徒も今では約130余名までに増えましたが、それもすべて頑張ってくれた生徒達のおかげです。

指導にも熱が入る

合気道を指導する際に大切にしていることを教えてください。

和の武道と言われる合気道をする上で、「自他一体」という精神を大切にしています。どうやって相手を倒すかという武術の流れを強く汲んだ昔とは違い、現在の合気道は人を倒すためではなく自分の心身を高めるためのスポーツです。仕手は相手が受けやすいように投げる、受けは仕手の投げやすいように受けるという、思いやりの精神が重要です。決して、スピードを落として投げるということではなく、全体の和の流れに乗ってお互いに動くことが「自他一体」ということであり、合気道の精神となっています。思いやってお互いに高めあう心があるから、合気道は和の武道と呼ばれるのです。

また、私が最初に教わった専修大学の田中茂穂師範*からの言葉で、今も大切にしている精神のひとつに「和而不同(和して同ぜず)」というものがあります。和というのは、みんなが仲良く相手のことを思いやりなさいということであり、同ぜずというのは、自分の信念は貫きなさい、ということです。
*明治神宮至誠館道場名誉館長

礎アワード受賞の様子 ©Leon Balaban 2017

2011年には日系文化会館のパイオニアアワードを、今年はありがとうデーで礎アワードを受賞されましたが、これらの賞を受賞された感想を教えてください。

これらの表彰は生徒達のおかげなので、身に余るものですね。ありがたいという言葉に尽きます。パイオニアアワードというのは、長年クラブが続いていることを称えて日系文化会館からクラブに送られる賞です。私がこんなものをもらってもいいのかと思いましたが、結果的についてきたご褒美のようなものだと感じました。生徒らもこのような賞を受賞するクラブに所属しているのだと、自信に繋がったのではないかと思います。

小幡師範が思われる合気道の魅力とは何ですか?

無駄に力で争うことをしない、時代にあった武道ということではないでしょうか。自分を成長させるためのスポーツなので、合気道には試合がありません。勝ち負けを争ってはいけないのです。試合があるとどうしても強い弱いを争ってしまいますが、合気道は相手のために投げ、相手のために受けるという純粋にお互いの心身の向上を目指す武道。これは他のスポーツにはない魅力だと思います。

今の生徒は、130余名中日本人は10人程でほとんどはカナディアンなのですが、そもそもカナダでは強いのは力であり、合気道のように力を抜いて強みを出す、という考えがありません。試合で相手を倒すことが強さだという考えを持っているカナディアン達にとって、日本の合気道の精神はとても興味深いものなのだと思います。

和の流れを感じれば力を入れなくても見事に決まる ©dnp davidnewmanphoto.com

今後の展望を教えてください。

実は、来年いっぱいで指導を終えて日本に帰ろうと思っています。家族も日本にいるので、今後は家族と過ごすつもりです。しかし、やはり時間をかけて築いた子弟の関係というのは特別なものがあり、自分が教えて育った生徒というものは愛着があるものです。今後も一年に一〜二回はトロントの道場を訪れるようにしたいと思っています。

ここトロントで、これからも合気道を続ける生徒にメッセージをお願いします。

「自他一体」を忘れず、仲良く練習してもらえれば嬉しいです。私が言いたいのは、継続してほしいというだけです。合気道は素晴らしい武道です。私は今まで継続してきて、やり残したことは無くすがすがしい気持ちなので、生徒にもぜひ何らかの形で続けてもらいたいです。

TORJA編集部レポート

小幡宰師範 指導45周年記念研鑽会

練習に励む生徒たち


小幡宰師範の指導45周年を記念して行われた今回の研鑽会。この日のためにアメリカなど遠方からも生徒が参加し、一人一人が小幡師範の指導を熱心に聞き練習に励んでいた。合気道は自分の力ではなく相手の力を利用して流れに沿って投げるため、体格の全く違う者同士と組んで練習している様子も見られた。研鑽会後にはレセプションが行われ、生徒の代表者らが小幡師範にこれまでの感謝の言葉を贈った。

小幡宰師範と市田嘉彦氏

感謝の意を込めてプレゼントの贈呈が行われた


合気会指導者の一員である市田嘉彦氏は「今回の研鑽会では小幡師範の指導45周年記念とあって有名な師範の方々や総領事からもお手紙をいただくなど、小幡師範の人柄が非常によく表れた、感慨深い研鑽会となりました。私も合気道をして40年余りになりますが、カナダに来て日本人なら何か一つは武道ができるだろうといわれたことが始めたきっかけでした。小幡師範は大学時代から学ばれているため、やはり素質が違うなと感じますね。私も小幡先生も合気道が日本の一つの武道として、日系社会を含めてカナダにいる多くの人々に知ってもらえればと思っています。合気道は力が要らないので特に女性の方にもおすすめです。是非一度体験にお越しください。」と語った。

合気会入会当時から共に鍛錬してきた最古参のポール・スン氏と一緒に


合気会ではビギナークラスはもちろん、女性の方限定のクラスも用意しているとのこと。初めての方は無料で体験レッスンを受けられるので、最近運動不足だと感じている方、気になった方は日系文化会館合気会で合気道の良さを一度体験してみよう。


日系文化会館合気会

TEL: 416-441-2345
MAIL: Info@JCCCAikikai.ca

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